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デート、だろう。
端から見れば。
男女が手を繋いで、街中を歩いているのだから。
カフェに入ったり、人気の店で遊んだりと、街をあちこち練り歩く。
とにかく人目につく場所で過ごす事3回目。
そろそろ効果も出るだろう。
ふと視線を上げればかち合う琥珀。
すまなそうに下がる眉に、僅かに苦笑して見せた。
「ねーっ、清香聞いてよぉ!」
教室に入るなり友達が飛び付いてきた。
窒息させる気か。
べりっと引き剥がして見ると、彼女は、それはもうショックだという顔をしていた。
潤んだ目が、如実に出来事を物語る。
私は、罪悪感と共に、計画の成功を悟った。
あの日シノは、安心して素顔で出掛けたい、と言った。
周囲を熱視線に取り巻かれるのは非常に煩わしいと。
だから、シノは考えた。
『例の琥珀の人に恋人が出来た』
そんな噂を流せば、少しは自分への興味が消えるのでは、と。
そこで、件の頼み事だ。
勿論、私だって槍玉に上がるのは嫌なので、普段と違う化粧と服装で化けている。
日朝アニメの変身曲が流れて来そうな勢いには、苦笑しか出ないけれど。
「で、シノ。今日は行くの、デート」
床でごろりと寝返りをして、シノを見る。
彼は手元のページを捲り、いや、と低い声で言った。
「今日はやめておく。何故なら、休息も必要だからだ」
確かに、この連休は派手に動いたから、正直疲れた。
休息、大いに賛成だ。
喜び顕にクッションに擦りつく。
その様子に思う所あったのか、シノがぽつりと謝ってきた。
「すまない。面倒な事で疲れさせている」
「まぁた。だーいじょうぶだっての。私だって結構楽しんでるからさ」
「本当か?」
「だって、行き先は殆ど私に決めさせてくれるし」
私からすれば、シノに行きたい所巡りを付き合わせている様なものだ。
「それに、友達と遊んでて楽しいのは当たり前でしょ」
非日常も、慣れればスパイス程度。
笑ってみせれば、シノはひとつ息をついた。
そして今度は礼を述べ、再び本に視線を落とす。
彼が落ち着いたのを認めてから、私もこっそり息を吐く。
まあ、そうは言っても少し疲れるのはホントだ。
周りの視線に晒されるというのは、存外気力を削ぐ。
きっと、シノもこんな日常に気疲れしたのだろう。
私に役立てる事があるなら、力になりたい。
シノが平穏に過ごせるようになるまで。
――平穏、か。
その時には、私は。
ごろんと転がり、シノを見る。
どうした、とまたこちらを向く琥珀色。
つきんと痛んだ胸には気付かない振りをして、へらりとお茶の御代わりを要求した。
ご。