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「今日は家に寄っていくか?」
なんて言葉。
シノから言うのは珍しい。
いつも私がねだって入れてもらう事が多いのに。
何にせよ有難い。
彼の気が変わらない内に連れていってもらう事にしよう。
この暑い時期、エアコンのある空間は実に快適なのだ。
「うは、涼っしーい!!」
鞄を置いて、冷たい空気にダイブする。
何と幸せな。
シャングリ・ラはここにあった。
冷たい机に抱き付き言うと、シノは呆れた溜め息を溢す。
何だよぉ、つれない奴。
シノは飲み物を取ってくると告げ、ぱたりとドアに姿を消した。
有難や、有難や。
気の利く友は貴重だね。
帰りを待つ間、何か遊び道具は無いかと部屋を物色する。
シノの親父さんは虫の学者さんで、業界では有名な人らしい。
だから、実はちょっとしたお金持ちだ。
故に、新しいゲームなんかがたまに転がっていたりする。
「FPSはな~、対戦したら絶対負けるしな。あのスナイプ野郎め」
お、マリオ発見。
これなら私でもまずまずの結果が出せるだろう。
勝手にゲームを準備していると、ちょうどシノが戻って来た。
「おっ。待ってました、待ってました~。マリパしよマリパ!」
ヨッシーちゃんは譲らないぜ、何て言いながら振り向いた時。
コントローラーが鈍い音を立てて床に落ちた。
「やはり、変か……?」
気まずそうに視線を反らす奴に、半笑いの顔で固まってしまう。
そう、視線。
シノの見ている先がはっきり分かる。
要するに、戻って来たシノは素顔だった。
「や、全く変じゃないけど。ちょっと突然でびっくりした」
「家でもサングラスをするのは窮屈でな。もう、隠す必要も無いだろう」
机に茶と菓子を置き、隣に腰を下ろす。
自然と吐き出された息に、シノの安堵が見えて。
それ以上は何も言わなかった。
「やったー! 3連勝!!」
小躍りすれば、シノはむっつりと空気を淀ませる。
あまり勝つ事のない相手に3連勝だ。
調子にも乗りたくなる。
「今回のは正当な勝ちとは言わない。何故なら、3回とも運が良かったからだ」
「運も実力の内って言葉知らないのー? つー事で、私の圧勝ね!」
悔しげに睨み上げるシノに、言い掛かりはよせと手を振る。
すると、琥珀の瞳が一瞬光り、私の横を見た。
そこにあるのは、さっき私が却下した――
「何チラっと見てんの、駄目ーッ!」
一瞬早く、彼の手がゲームを取り上げる。
数分後、蜂の巣にされて無惨に白旗を掲げる私がいた。
さん。