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「……」
「おはよ」
「……、おはよう」
私の顔を見るなり棒立ちになった奴に、普通に挨拶する。
そのまま席に座るが、彼は突っ立って私を凝視したままだ。
「何よ。私の顔、何か付いてる?」
「あ、いや、」
アンタの顔よりは面白くないでしょ、私。
ぼそりと言うと、シノは分かりやすく狼狽えた。
そして、むんずと腕を掴まれる。
教室を飛び出した奴に引かれるまま、私は朝から廊下を駆ける羽目になった。
人の少ない場所に来た所でシノは漸く立ち止まった。
正面に向き直ると、焦った様子で言葉を投げられる。
「昨日の、事だが。……頼む、誰にも言わないでくれ」
「いや言わないけど」
即座に返せば、ぽかんと呆ける。
何だ、その反応。
付き合いが長いから分かっていると思っていたのに、心外だ。
「なに、私が人の秘密を好き好んで言いふらすように見える訳」
「あ、」
「ほー、私はそんな軽い素振りを今までしていたのか。すまなかったね」
若干すねてみせると、シノは慌てて口どもる。
普段饒舌に語る奴が顔一つで何故ここまで狼狽えるか知らないが。
少し溜飲も下がったので、これで勘弁してやろう。
「ね、シノ」
「っ、何だ」
「あんたの目が黒だろうが琥珀だろうがグラサンだろうが、どうでもいいけどさ」
「どうでも、いい……」
「だってシノはシノでしょ。私にとっては、ダベり友達を失う方が一大事なのよ」
だから、今回の事はお互い口を封じておこう。
話して楽しくないなら私も訊かないからさ。
そう言うと、シノは少し俯いてしまった。
どんな悩みかは知らないけれど、彼には深刻な問題なのだろう。
触れて欲しくないのなら、今はそっとしておきたい。
「あ、まあ勿論、話したくなったら聞くよ」
「……ああ。助かる」
前を向いたシノが少し笑った。
良かった。
これで友人との気まずい日常は体験せずにすむ。
こいつ根暗だからな。
浮かばせないと、どこまでも沈むし。
1人頷いた所で、予鈴が鳴る。
泡くって教室まで駆け戻り、キバやナルトにからかわれる。
今日は、そんな慌ただしい朝から始まった。
に.