デフォルト名:四条院 千紗季
第4帖
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「守」
「なんだ?」
「夏未はいっつもあんな感じだけどさ、ちゃんと約束は守る人だから」
お嬢様というだけでなく、理事長の娘という立場から夏未に反感を持つ生徒だって存在している。
オマケに絵に描いたような優等生かつ堂々とした物言いや立ち居振る舞いから、お高くとまってると評されることもあった。
しかし、夏未は決して高慢ではない。
だが、学園を預かる身として威厳を示す必要があるのだ。立場上、時には情け容赦ない判断を下すことも求められる。
廃部の件もその一例と言えよう。
それでも、結果を残せば大会出場の権利を与えるなど、夏未の対応は実に公平なものなのだ。
「私が保証する」
夏未が中学生でありながら長としての責務を全うできるのは、きっと資質だけではない。彼女自身が、理事長代理という立場を心得ているからこそである。
夏未の言葉は、理事長の言葉。
気分でそれを取り下げ、責任を放棄することなど絶対にありえない。
夏未の使命感に対して、千紗季は絶対的な信頼を彼女に寄せていた。
「……そっか。わかった!」
千紗季の言葉に円堂は納得したようだが、他の面々は「何を根拠に……」と言いたげに、複雑な表情を見せる。
「……本当に、出場させてくれんのかなあ」
渋い顔でそうぼやいたのは半田だった。
これまでの待遇を考えれば、疑ってしまうのも無理はないだろう。
けれども、その不安を薙ぎ払うように円堂はニカッと笑って見せる。
「千紗季が言うなら大丈夫さ!」
「はあ?」
「
「まあ、そりゃあそうだろうけど……」
風丸だけでなく、円堂と千紗季が幼馴染であることは半田も知っている。もちろん、それは染岡も同じだ。
千紗季個人との深い交流はないが、なんとなしに彼女の人となりは理解している。円堂の話題にも度々登場しているし、円堂を介して千紗季と言葉を交わしたこともあった。
それでも疑いを持ってしまう理由は、夏未と仲が良いうえに生徒会の一員だからだろう。
入学した頃から、学校で千紗季を見かけるときは高頻度で夏未の姿が隣にあった。そして、今では生徒会長、副会長のコンビで雷門中を牛耳っている。
本当にこちらの味方なのかと、どうしても警戒心が強くなってしまうのだ。
「……何度も言うけど、これでも私はちゃんと守たちのこと応援してるつもりなんだからね〜」
「…………」
そんな半田を見かねた千紗季が、うんざりするほど繰り返した言葉を投げる。
それでも半田の表情には、まだ不安の色が滲んでいた。
生徒会とサッカー部の溝が埋まるまで、まだまだ時間がかかりそうだ。
「次の試合も頑張りなよ」
「おう! 任せとけ!」
「でも特訓で飛ばしすぎちゃダメよー?」
「わ、わかってるって」
「ホントかなあ。一郎太、守のことちゃんと見ててよね?」
「ああ」
千紗季と円堂のいつものやり取りに、風丸は苦笑しながらも頷いて見せる。
満足した千紗季は、「じゃあね〜」とひらりと手を振り、部室を出て夏未の後を追った。
「何を話していたのかしら?」
部室から少し離れた位置で、夏未はムッとした表情で相棒を待っていた。遅れて出てきた理由を問うてはいるが、この様子だと千紗季がどんな話をしていたのか察しているだろう。
「んー? 何って、フォロー入れてたのよ。だーれかさんが素直じゃないから」
「貴女はいつも一言余計なの。もう、行くわよ!」
夏未はほんのり頬を染めてふいっと顔を背けると、少し早歩きで校舎へと向かっていく。ツンケンしているが、なんだかんだ千紗季の心遣いに感謝している夏未であった。
