デフォルト名:四条院 千紗季
第11帖
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曇りひとつ無い、晴れ渡る青空。朝の日差しが降り注ぐ中、あちこちで「おはよう」の挨拶が飛び交う。
同級生たちの爽やかな交流を尻目に登校した風丸は、教室の入口で突っ立っていた。
そんな彼の心境を例えるならば、この晴天とは真反対の、今にも雨が降り出しそうな曇り空と表現すべきだろう。
自分の存在に気づかれぬよう、入口から自席のお隣さんの様子を伺う。
既に着席している幼馴染の周りには、予想通りぶよぶよと不機嫌オーラが漂っていた。
(やっぱり、まだ機嫌悪いよな……)
事が起きたのは本日の登校中のこと。
千紗季がご機嫌斜めな原因は自分と円堂にあるので、自席に近づくことすら憚れる。
とはいえ、ここでずっと突っ立っているわけにもいかない。風丸は覚悟を決めて、自席へと向かった。
「よっ、よお……千紗季」
遠慮がちに声をかけると、千紗季は無言でじろりと風丸を睨みつける。そして、すぐにプイッとそっぽを向いてしまった。
「えっと、さっきのはさ、理由があって……」
「……理由って?」
「それは……その……」
理由すらも言い淀む風丸に対して、更に不満を募らせた千紗季は、むぅっと両頬を膨らませる。
千紗季はブチ切れると無表情になるタイプなので、今の様子を見るに大激怒にまでは至っていない。そのことに安堵するも、拗ねていることに変わりはない。
風丸は、どうしたものかと頭を悩ませ、静かに着席する。そんな彼の記憶は、昨日に遡っていた。
伝説のイナズマイレブンの秘伝書がある。
それは、昨日の放課後、円堂や豪炎寺と共に立ち寄ったラーメン屋──雷雷軒の店主から告げられた情報だった。
野生中との試合を控える中、必殺技のヒントが見つからない雷門イレブンにとって、喉から手が出るほど欲しい代物である。
なんとしても手に入れたいところではあるが、その在処は、なんと理事長室の金庫だという。入手難易度の高さに、三人は再び頭を悩ませた。
『そうだ! 千紗季に頼めばいいのか!』
雷雷軒からの帰り道、円堂は思い出したように声を上げる。
生徒会副会長で、夏未と友人である千紗季が理事長室を出入りしている話は有名だった。
けれども、風丸は円堂の提案に反対の意を示す。
『いや、それはまずいんじゃないか……?』
『なんでだ? 千紗季に言えば、理事長室調べてくれるだろ』
『いやだって、雷門に伝わるだろ……』
『あっ』
理事長室の金庫を探るとなれば、必ず夏未の許可が必要となる。
千紗季のことは信頼しているが、果たして夏未が素直に秘伝書を渡してくれるのだろうか。相棒の頼みとあらば聞いてくれる可能性はあるが、拒否されてしまえば秘伝書を入手する道が完全に絶たれてしまう。
『あいつに伝わるといけない理由でもあるのか?』
転校生の豪炎寺は、夏未とサッカー部の軋轢を知らない。
風丸がこれまでの出来事について説明をすれば、豪炎寺は途端に顔を顰める。
『──ってことでさ』
『染岡がやけに突っかかっていたのは、それが理由か……』
豪炎寺の脳裏に浮かんだエピソードは、尾刈斗中との試合が始まる直前のこと。ベンチへと訪れた千紗季に対する、染岡の態度であった。
同時に入部届けを提出した日のことも思い出す。たまたま遭遇した千紗季から、「夏未はサッカー部を邪険にしていた」なんて話をされたのだ。
『千紗季に内緒で取ってきて欲しいってお願いしてみるとか……?』
『それはもっとダメだろ』
遠慮がちに提案する円堂だが、風丸は即二度目の却下を出した。
『あいつ副会長なんだぞ? そんなことしたら、千紗季の信用問題に関わる』
『そ、そうだよなあ……』
風丸の最もすぎる指摘に、円堂はしょぼくれる。
自分たちの都合で、千紗季の信用が失われるようなことなどあってはならない。
そうして、秘伝書の存在は、千紗季には内緒ということで話が落ち着いたのだ。
その後も入手方法について議論したが、これといって良い案が浮かぶことはなく、話がまとまらないまま昨日は解散となった。
そのまま夜が明け、円堂と風丸は登校しながら再び秘伝書入手の手立てを考えていた。その道中で、千紗季と遭遇してしまったのだ。
『守、一郎太、おはよー!』
いつの間に背後にいたのやら。千紗季から声をかけられた二人は、秘伝書の話を聞かれていたのではと慌てふためく。
『千紗季!? いつの間に……』
『お、オハヨウ』
挙動不審な反応に、ぎこちない笑顔。何かバレてはマズい隠し事をしていると瞬時に見抜いた千紗季は、怪しいと言わんばかりにすぅっと目を細める。
『なによう、二人してコソコソしちゃって』
『え、あ、いや……』
『な、何でもないって!』
『そうそう! 別にひでん』
『円堂! それは言うな!』
『むぐっ』
動揺のあまりNGワードをぶちまけようとする円堂の口を、風丸は咄嗟に塞いだ。
その瞬間、風丸は千紗季から溢れ出す不機嫌オーラを察知する。ダラダラと汗を流しながら、彼女へそろりと視線を流した。
『……ふんだ。別にいいわよ。女の子の私はどうせ仲間外れですよーだ』
千紗季はじとっと目を細めたまま文句を投げると、頬を膨らませて歩き出す。そのままプイっとそっぽを向いて、円堂と風丸を追い越し行ってしまった。
────そうして、今に至るというわけだ。
風丸は、今もむくれている千紗季の横顔を盗み見る。
(そりゃあ、怒るよな……)
あれほどあからさまにコソコソされたのだから、気を悪くするのは当然だろう。
しかし、秘伝書を手に入れるためには、千紗季に知られるわけにはいかないのだ。
(すまん、千紗季……)
心の中で謝罪し、さて詫びの品はどんな抹茶の菓子にしようかと考え込む風丸であった。
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