デフォルト名:四条院 千紗季
第10帖
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「フットボールフロンティアーーーっっ!!」
登校中のことであった。
後ろから押し寄せてくる騒がしい声に、千紗季と風丸は足を止める。
たまたま互いの家の近くでばったりと会った二人は、肩を並べて我らの学び舎へと向かっていた。
今日の授業のこと、千紗季のペットのつきみのこと、毎日顔を合わせているというのに尽きない
「……はあ」
「この声、円堂だな」
心当たりしかない声とワード。呆れ顔で一度立ち止まった二人は、同時に後方へ振り返る。
瞬間、猪────否、円堂が突っ込む勢いで迫ってくるではないか。
「え、円堂……おはよう」
「おはよー……」
「おう! 二人ともおはよう!!」
二人の目の前で急停止した円堂は、ニカッと歯を見せて、太陽に負けないほどの眩しい笑顔を浮かべる。
尾刈斗中との練習試合に勝利した雷門サッカー部は、フットボールフロンティアへの出場権を獲得した。
ずっと夢見ていた舞台にようやく立てるのだから、円堂が落ち着かないのも無理は無いだろう。いつもなら「近所迷惑でしょ!」と千紗季も叱るところなのだが、今回ばかりは見逃してあげた。
「ちょっと守、口元にパンくずついてるじゃない。ほら、ちゃんと拭きなさい」
「うぐっ」
うさぎの刺繍が散りばめられたケースからティッシュを取りだし、千紗季は円堂の口元にペーパーを押し付ける。
大方、このテンションを抑えられず、朝食のパンをくわえたまま家を飛び出してきたのだろう。
「はい、これで良いわよ」
「へへっ、ありがとな! 千紗季!」
持ち運び用のゴミ袋を取り出しペーパーを放り込んでいると、円堂はガッツポーズで再び声を上げる。
「くぅ〜〜〜フットボールフロンティアーーーっっ!!」
そうして、千紗季と風丸の間を縫って駆け出して行った。溌剌とした声は、山彦のような余韻となってそこらに漂っている。
「……一郎太、暫く他人のフリするわよ」
「もう手遅れだと思うぞ」
苦笑を浮かべた風丸から告げられた残念な知らせに、千紗季は肩を落とす。
通行人からの視線が痛い。それから逃れるように、二人は少し早歩きで通学路を進んでいく。
「なーんか前にもこんなことあった気がするわね」
「前……あっ、入学式の時じゃないか?」
風丸の言葉で二人の記憶は一年と少し前──入学式の日へと遡る。
あの日の円堂は、式典が控えているにも関わらず、新しい通学路をそれはもうとてつもない勢いで爆走していたのだ。
雷門中へ向かう途中で、そんな円堂を見かけた千紗季は、”一緒に行かないか”と声をかけようとして、やめたのを思い出す。
円堂を眺める同じ新入生達の怪訝な表情を目にして、確かその時も隣にいた風丸へ他人のフリをしようと話したのだ。
「そういえばあったわねえ、そんなこと。守ってば、サッカーのことになるとすーぐバカ騒ぎするんだから」
「ははは……」
どんどん遠ざかっていく幼馴染の声を耳に入れながら、千紗季はテンションを暴走させて怪我をしないでくれよと心の中で手を合わせるのだった。
そんな円堂のドタバタ劇場は、これで終わりではなかった。
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