デフォルト名:四条院 千紗季
第3帖
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澄み切った青空を黒雲が覆い尽くし、雷門中全域に影を落とした。ざわりと不安を煽るような轟音が迫り、それが客人の来訪を知らせる。
「来たみたいですね」
共に理事長室から外の様子を伺っていた火来の声に、千紗季の視線は校門前に停車した黒塗りの重機を捉える。
遠征用のバスなんてものではない。移動要塞と呼ぶに相応しい代物だ。
軍服を彷彿とさせる帝国学園の制服を着用した生徒達が、サッカーボールを抱えてぞろぞろと姿を現す。二つの列を成し、構えのポーズをとるその様は、さながら軍隊のようだ。
列の中央にワインレッドの赤絨毯が敷かれてゆく。
次に姿を見せたのは、ゴーグルを着装し、ドレッドヘアを後頭部で一つに束ねた選手──帝国学園サッカー部キャプテンの鬼道有人である。
(あの人、鬼道財閥の……)
彼は、鬼道財閥の御曹司だ。家柄の関係上、パーティで何度か顔を合わせたことがある。
しかし、それも挨拶を交わす程度の関係で、深い交流はない。
帝国学園は、サッカーのみならず学力においても名門だ。彼が首席で入学したという噂は有名な話である。社交界で嫌でも耳に入ってくるような情報だったために、鬼道が帝国の生徒であることは知っていた。
(──けど、サッカー部のキャプテンまでやってたなんてねぇ)
鬼道を筆頭に、帝国学園の選手たちが次々と姿を表す。彼らから漂う圧倒的な強者の風格、それは雷門イレブン達へ大きなプレッシャーを与えた。
フィールドへ降り立った帝国イレブンの元へ、キャプテンである円堂が駆け寄る。挨拶を交わしているのだろう。
しかし、握手を求める円堂の手を、鬼道がとることはなかった。
円堂から背を向け、鬼道は部員達になにやら指示を出している。そうして帝国イレブン達は、フィールドへ広がり、各々ボールを手にしてアップを始めた。
「流石、全国大会四十年無敗の帝国ねー。個々のテクニックが並外れてる」
「ええ」
理事長室からでは雷門イレブン達の表情は伺えないが、誰もが帝国のテクニックに圧倒されていることだろう。この試合に向け特訓を重ねた円堂達だが、とても太刀打ちできるような相手ではないことは明白だった。
(それでも、守は逆に熱くなってるんでしょうねぇ)
円堂の前向きさには誰も敵わないのだろう。
窓辺から雷門イレブンを見守っていると、鬼道の蹴ったボールが円堂へと向かっていく。その威力は遠目でもわかるほどのものだ。
鍛え抜かれた帝国のボールを受け、その実力差を痛感したことだろう。果たしてどう戦うつもりなのだろうか。それも人数すら揃っていない状態で……────
「それはそうと、まだ十一人揃っていないじゃない。まさか、帝国学園相手に十人で試合をするつもりなのかしら」
「しかも、その内二人は入部届け出したの昨日だしねぇ」
昨日の放課後、完全下校時刻の直前に生徒会へと回ってきた入部届が頭を過ぎる。
雷門中の生徒会では、全校生徒が所属する部活動のデータ管理も担っている。顧問に提出された入部届の写しは、情報共有のため生徒会へと流れてくるのだ。
昨日は二件分の入部届が千紗季の元へと渡り、どちらも部活動名の項目には”サッカー部”と記入されていた。
入部希望者は、二人とも千紗季のクラスメイトである松野空介と影野仁だ。
(ようやく十人まで集まったか、と思ったものの……)
入部理由に目を通してみれば、それぞれ”退屈しなさそうだから”、”存在感を出せそうだから”と書かれており、逆に先行きが不安に思えてきたのは言うまでもない。
「ただでさえ実力不足だというのに、昨日入部したばかりの方々が、本当に戦えるのかしらね」
「まあまあ。意外とサッカーできる人達なのかもしれないんだし……────あら、秋が誰か連れてきた」
秋が眼鏡をかけた生徒を連れてベンチに合流している。
彼の名前はなんだったか。クラスメイトでもなければ、夏未のように全校生徒の顔と名前を記憶しているわけでもない。存じ上げず申し訳ないが、同級生であることだけは把握している。
「これで十一人揃ったっぽいわね」
「彼、確か運動はあまり得意ではなかったような気がするのだけれど……」
「わお、個々の能力まで把握しているとは。さすが夏未」
「貴女はせめて同級生の顔と名前くらい覚えたらどうなの?」
「やーよ、めんどくさい。うちの学校、一学年の生徒数多いし」
雷門中は三学年合わせて千人以上の生徒が在籍する、いわゆるマンモス校の部類に入る。単純計算で一学年に三百人以上ということになる。
夏未は一年の頃から当然のように全校生徒の顔と名前を一致させていた。いつの間にやら新入生の情報も把握している。
反対に、千紗季はわざわざ記憶する必要性を感じてはいなかった。時間と労力と脳の容量の無駄遣いだと思っているので、よくもまあこれだけの生徒の情報を把握できたものだと素直に感心する。
とにもかくにも試合の直前ではあるが無事に十一人まで揃い、廃部回避の条件の内、一つを満たすことができた。数名がひっくり返っているところを見ると、眼鏡の彼が即戦力となるか怪しいが。
眼鏡の彼に十番のユニフォームが手渡され、着替えも完了。ようやく試合開始と思いきや……──
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