サブリナちゃん(中)万事屋と公務員
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「さぶちゃんさん、本日のご用件は何でしょうか。メールの内容がつまらないとか、返事が遅いとか、やっぱクビ?ですかね?」
彼は何も答えずに、白い封筒をテーブルの上にすっと滑らせた。
「これに興味はありますか?甲斐性ナシのお兄さんかお友だちとでも行ってください。」
封筒を開くと、お給料の他に、「マツケンサンバ」で有名な歌手のコンサートチケットが四枚入っていた。
もしかして、このために来てくれたのかな?
「入手が難しいチケット頂いてしまっていいんですか?ありがとうございます。」
「名門の当家にお近づきになりたい凡人が世の中に沢山いるんですよ。こんなのは多忙な私にとって紙切れも同然です。ああそうだ。昨日のメールの○○って熟語ですが、正しくは△△と書きます。予測変換に頼り過ぎないようにしてください。」
「すみませんでした。以後、気をつけます。」
「今の所、あなたは期待通りにやってくれてると思いますよ。まあ、ロクに期待はしていませんが。」
「はぁ…。」
お金をもらっているとはいえ、時間を割いて一生懸命考えたメールを期待してないって小ばかにされると、正直不愉快だ。
「あの…。」
「何ですか?もう時間がないので手短にしてください。」
「お給料を頂く立場の自分が言うのも変ですけど、簡単な熟語を間違えるような凡人の私じゃなくて、もっとエリートな女の人とメル友になったらいいじゃないですか。さぶちゃんさんは由緒正しいおうちの方ですし、ケータイチェックされたらヤバくないですか?婚約者や奥さんにバレたらまずいと思うんですけど。」
さぶちゃんはため息をついた。
「のぞき見する人なんていやしませんよ。」
「…。」
「妻は亡くなりました。子どもを産んですぐ、母子共にね。」
まずい、一番触れてはいけないことを聞いてしまった。
席から立ち上がって謝ろうとしたらさぶちゃんは首を振った。
「いいんです、もう過ぎたことですから。それにしても、どうしてバイトのあなたに私はプライベートな話をしたんでしょう。おかしいですね。」
窓の外を眺める彼の目は、とても悲しそうで私はこれ以上口を開くことが出来なかった。
そして気まずいまま別れた。
その晩、さぶちゃんから一通もメールは来なかった。
翌日「すまいる」の控室で、私は仲良くなった同僚に「友だちの話」と前置きして相談してみたけど、すぐバレて問い詰められた。
「マジヤバいよ。やめとけやめとけ。絶対奥さんがいるパターンだよ。」
「この人とは単なるメル友で付き合ってないよ。でも子どもも一緒に死んじゃったって言ってたし、奥さんいないのは本当だと思う。何でこういう事話しちゃったんですかねって、遠い目してた。」
「それ同情引くフリして口説いてるんだって。」
「そんな感じしないけどなー。やらしいメール送ってきたり、会いたいなんて言ってこないし。」
「その手の男はもっとヤバいよ、女に幻想抱いてるタイプじゃね?後でストーカーになったらどうするよ、名前警戒心なさすぎ!」
「エリート階級の人って体面とか名誉とか気にするでしょ、だから大丈夫だよ。」
「そーゆーのエリートとかうちら庶民とか全然関係ないから!っーかお金もらってメル友してる関係自体がおかしいの気づきなって。お金より大切なものを失う前に切らなきゃだめだよ。ところで、お妙ちゃんや銀さんには怪しいバイトのこと言ってるの?」
「言える訳ないよ…。」
「いい?二週間後も止めてなかったら、銀さんに言いつけるからね。さっさと関係切りなよ。」
うちは万事屋=何でも屋だけど。
メル友って依頼も、有りっていっちゃ有りだけど。
やっぱおかしいよな…。
銀さんに知られる前に止めなきゃ。
さぶちゃんから厄介なメールが来たのは、その次の日の夜のことだった。
~つづく~
2015年8月2日UP
彼は何も答えずに、白い封筒をテーブルの上にすっと滑らせた。
「これに興味はありますか?甲斐性ナシのお兄さんかお友だちとでも行ってください。」
封筒を開くと、お給料の他に、「マツケンサンバ」で有名な歌手のコンサートチケットが四枚入っていた。
もしかして、このために来てくれたのかな?
「入手が難しいチケット頂いてしまっていいんですか?ありがとうございます。」
「名門の当家にお近づきになりたい凡人が世の中に沢山いるんですよ。こんなのは多忙な私にとって紙切れも同然です。ああそうだ。昨日のメールの○○って熟語ですが、正しくは△△と書きます。予測変換に頼り過ぎないようにしてください。」
「すみませんでした。以後、気をつけます。」
「今の所、あなたは期待通りにやってくれてると思いますよ。まあ、ロクに期待はしていませんが。」
「はぁ…。」
お金をもらっているとはいえ、時間を割いて一生懸命考えたメールを期待してないって小ばかにされると、正直不愉快だ。
「あの…。」
「何ですか?もう時間がないので手短にしてください。」
「お給料を頂く立場の自分が言うのも変ですけど、簡単な熟語を間違えるような凡人の私じゃなくて、もっとエリートな女の人とメル友になったらいいじゃないですか。さぶちゃんさんは由緒正しいおうちの方ですし、ケータイチェックされたらヤバくないですか?婚約者や奥さんにバレたらまずいと思うんですけど。」
さぶちゃんはため息をついた。
「のぞき見する人なんていやしませんよ。」
「…。」
「妻は亡くなりました。子どもを産んですぐ、母子共にね。」
まずい、一番触れてはいけないことを聞いてしまった。
席から立ち上がって謝ろうとしたらさぶちゃんは首を振った。
「いいんです、もう過ぎたことですから。それにしても、どうしてバイトのあなたに私はプライベートな話をしたんでしょう。おかしいですね。」
窓の外を眺める彼の目は、とても悲しそうで私はこれ以上口を開くことが出来なかった。
そして気まずいまま別れた。
その晩、さぶちゃんから一通もメールは来なかった。
翌日「すまいる」の控室で、私は仲良くなった同僚に「友だちの話」と前置きして相談してみたけど、すぐバレて問い詰められた。
「マジヤバいよ。やめとけやめとけ。絶対奥さんがいるパターンだよ。」
「この人とは単なるメル友で付き合ってないよ。でも子どもも一緒に死んじゃったって言ってたし、奥さんいないのは本当だと思う。何でこういう事話しちゃったんですかねって、遠い目してた。」
「それ同情引くフリして口説いてるんだって。」
「そんな感じしないけどなー。やらしいメール送ってきたり、会いたいなんて言ってこないし。」
「その手の男はもっとヤバいよ、女に幻想抱いてるタイプじゃね?後でストーカーになったらどうするよ、名前警戒心なさすぎ!」
「エリート階級の人って体面とか名誉とか気にするでしょ、だから大丈夫だよ。」
「そーゆーのエリートとかうちら庶民とか全然関係ないから!っーかお金もらってメル友してる関係自体がおかしいの気づきなって。お金より大切なものを失う前に切らなきゃだめだよ。ところで、お妙ちゃんや銀さんには怪しいバイトのこと言ってるの?」
「言える訳ないよ…。」
「いい?二週間後も止めてなかったら、銀さんに言いつけるからね。さっさと関係切りなよ。」
うちは万事屋=何でも屋だけど。
メル友って依頼も、有りっていっちゃ有りだけど。
やっぱおかしいよな…。
銀さんに知られる前に止めなきゃ。
さぶちゃんから厄介なメールが来たのは、その次の日の夜のことだった。
~つづく~
2015年8月2日UP