サブリナちゃん(中)万事屋と公務員
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さぶちゃんとメル友契約をしてからの毎日は大変だった。
バイト中に応答しなくていい取り決めだけど、それはすなわちメールがゼロってことではない。
返信しない数時間のうちには、本当にたわいもない、とてもエリートの男性が書いたと思えない顔文字つきのメールが何通も入っていた。
しばらくすると「ノブたす」というドーナツ好きの部下がいることがわかってきた。
ひっきりなしにメールしてくるので、はじめはエリートニートかなと思ったけど、彼は会議に出たり、組織で陣頭指揮を取ったりしているようだ。
おそらく、親の会社で好き放題やってるお坊ちゃんなんだろう。
ある夜、ドラマの最終回に集中したい私は、数分おきに着信する【緊急連絡】にイライラさせられていた。
ずっと無視を決め込んでいたけど、バイブがうるさいので、とうとう主電源を落としてクライマックスを楽しんだ。
新ドラマの番宣が終わってから、携帯電話を再起動する。
最新メールは、
「P.S ウサギってさびしいと死んじゃうんだよ」
のメッセージに、首つり画像が添付されたショッキングなものだった。
返信を遅らせると査定が下がる警告に違いない。
そう解釈した私は、携帯電話をジップロックに入れて、お風呂場に持ち込むようになった。
「名前さん、最近一日中メールしてますよね。もはや携帯依存症と言ってもいいくらいですよ。たまには休憩したらどうですか?」
新八くんに悪いと思ってテーブルのお茶に口をつけるとすっかり冷めている。
団らんを無視してメールに没頭してから、相当時間が経っていたようだ。
「そうアル。近頃の名前ちゃん変アル。ご家庭でのコミュニケーションが足りない子供は非行に走るって朝のテレビでやってたヨ。姉御も様子がおかしいって心配してるネ。」
神楽ちゃんはソファーに体育座りして酢昆布をかじっている。
「どんな娘さんか知っときたいから、一度サブリナちゃん連れてこいよ。しっかし、一日中ケータイいじりっぱなしで親は注意しないのかね~。俺ソイツの親の顔が見たいわ。」
銀さんは依然「彼女」の存在を疑っているようだ。しきりに家に呼べと言ってくる。
「エリート階級のお付き合いで毎日忙しくて、あれから全然会えてないんだ。だからメールが唯一の連絡手段になっちゃって。」
「さては、べっぴんさんだから、銀さんを取られたくなくてウチに呼ばねーんだろ~。」
「そんな事ないよ。外見は男っぽいっていうか、性格あんまりよくないし。」
「男っぽいサブリナちゃん?アゴ美の同僚アルか?ヒゲ生えてるアルか?」
神楽ちゃんはさぶちゃんがオカマだと期待しているようだ。
「それともハーフか?モデルさんみたいに背が高くてスタイルいい娘なのか?」
二人の推察は、どっちも間違ってるけど真実をばらすわけにはいかない。
新八くんが新しいお茶をいれてくれる。
「名前さんは、サブリナさんが苦手みたいですよね。メールが多くてうんざりって感じなんですか?」
「第一印象はよかったんだけどね。そのうち向こうも飽きるよ。運転手付きのクルマ乗ってる人だから、私がもの珍しいだけだと思う。」
お金をもらってメールしてるなんて、みんなの前では絶対言えないよ!
さぶちゃんのメールは面倒だったけど、お給料はよかったので、やみくもに短期バイトを入れる必要はなくなった。
目標だったミニ丈の着物やほしい小物は余裕で買えるようになったけど、急に羽振りを良くしたら銀さんに資金源を追及される恐れがある。
そこで、ほぼ全額を貯金することにしたら、通帳の残額はうなぎのぼりに増えていった。
あれから何回か彼の代理人と本屋のカフェで会ってお給料をもらった。
あれこれケチをつけられて額を減らされることはなかったし、なによりも彼がやらしい画像を送り付けたり変態めいた文章をくれることもなかったので次第に警戒心は薄れていった。
いつしか私は、「さぶちゃん」でなく、「サブリナちゃん」という架空の女子と親しいメル友になっているような錯覚を覚えていた。
夜遅くまでメールして、「早く寝ろ」と銀さんに叱られることもあったけど、さぶちゃんとの奇妙な関係は平和に続いていた。
「今日はお仕事大丈夫なんですか?」
「あなたに心配されるいわれはありません。エリートの自己管理は完璧ですから。」
先に書店のカフェに入ってドリンクを飲んでると、あの日以来、初めて彼が給料の受取場所に現れた。
バイト中に応答しなくていい取り決めだけど、それはすなわちメールがゼロってことではない。
返信しない数時間のうちには、本当にたわいもない、とてもエリートの男性が書いたと思えない顔文字つきのメールが何通も入っていた。
しばらくすると「ノブたす」というドーナツ好きの部下がいることがわかってきた。
ひっきりなしにメールしてくるので、はじめはエリートニートかなと思ったけど、彼は会議に出たり、組織で陣頭指揮を取ったりしているようだ。
おそらく、親の会社で好き放題やってるお坊ちゃんなんだろう。
ある夜、ドラマの最終回に集中したい私は、数分おきに着信する【緊急連絡】にイライラさせられていた。
ずっと無視を決め込んでいたけど、バイブがうるさいので、とうとう主電源を落としてクライマックスを楽しんだ。
新ドラマの番宣が終わってから、携帯電話を再起動する。
最新メールは、
「P.S ウサギってさびしいと死んじゃうんだよ」
のメッセージに、首つり画像が添付されたショッキングなものだった。
返信を遅らせると査定が下がる警告に違いない。
そう解釈した私は、携帯電話をジップロックに入れて、お風呂場に持ち込むようになった。
「名前さん、最近一日中メールしてますよね。もはや携帯依存症と言ってもいいくらいですよ。たまには休憩したらどうですか?」
新八くんに悪いと思ってテーブルのお茶に口をつけるとすっかり冷めている。
団らんを無視してメールに没頭してから、相当時間が経っていたようだ。
「そうアル。近頃の名前ちゃん変アル。ご家庭でのコミュニケーションが足りない子供は非行に走るって朝のテレビでやってたヨ。姉御も様子がおかしいって心配してるネ。」
神楽ちゃんはソファーに体育座りして酢昆布をかじっている。
「どんな娘さんか知っときたいから、一度サブリナちゃん連れてこいよ。しっかし、一日中ケータイいじりっぱなしで親は注意しないのかね~。俺ソイツの親の顔が見たいわ。」
銀さんは依然「彼女」の存在を疑っているようだ。しきりに家に呼べと言ってくる。
「エリート階級のお付き合いで毎日忙しくて、あれから全然会えてないんだ。だからメールが唯一の連絡手段になっちゃって。」
「さては、べっぴんさんだから、銀さんを取られたくなくてウチに呼ばねーんだろ~。」
「そんな事ないよ。外見は男っぽいっていうか、性格あんまりよくないし。」
「男っぽいサブリナちゃん?アゴ美の同僚アルか?ヒゲ生えてるアルか?」
神楽ちゃんはさぶちゃんがオカマだと期待しているようだ。
「それともハーフか?モデルさんみたいに背が高くてスタイルいい娘なのか?」
二人の推察は、どっちも間違ってるけど真実をばらすわけにはいかない。
新八くんが新しいお茶をいれてくれる。
「名前さんは、サブリナさんが苦手みたいですよね。メールが多くてうんざりって感じなんですか?」
「第一印象はよかったんだけどね。そのうち向こうも飽きるよ。運転手付きのクルマ乗ってる人だから、私がもの珍しいだけだと思う。」
お金をもらってメールしてるなんて、みんなの前では絶対言えないよ!
さぶちゃんのメールは面倒だったけど、お給料はよかったので、やみくもに短期バイトを入れる必要はなくなった。
目標だったミニ丈の着物やほしい小物は余裕で買えるようになったけど、急に羽振りを良くしたら銀さんに資金源を追及される恐れがある。
そこで、ほぼ全額を貯金することにしたら、通帳の残額はうなぎのぼりに増えていった。
あれから何回か彼の代理人と本屋のカフェで会ってお給料をもらった。
あれこれケチをつけられて額を減らされることはなかったし、なによりも彼がやらしい画像を送り付けたり変態めいた文章をくれることもなかったので次第に警戒心は薄れていった。
いつしか私は、「さぶちゃん」でなく、「サブリナちゃん」という架空の女子と親しいメル友になっているような錯覚を覚えていた。
夜遅くまでメールして、「早く寝ろ」と銀さんに叱られることもあったけど、さぶちゃんとの奇妙な関係は平和に続いていた。
「今日はお仕事大丈夫なんですか?」
「あなたに心配されるいわれはありません。エリートの自己管理は完璧ですから。」
先に書店のカフェに入ってドリンクを飲んでると、あの日以来、初めて彼が給料の受取場所に現れた。