サブリナちゃん(中)万事屋と公務員
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翌朝、着信のバイブ音で目が覚めた。
「\(^o^)/今日からメル友だお 仲良くしてネ。」
誰??間違いメール??
でも、From さぶちゃんって…
メールには、ポンデが山盛りになった画像が添付されていた。
どう返事をしたらいいんだろう?
「こちらこそよろしくネ\(^o^)/ From 名前」
― 何か違う。この人メル友だけど、正式には雇い主だし。
「おはようございます。本日からよろしくお願いします。From 名前」
― 目上の方への挨拶にふさわしいけど、堅すぎるなぁ、でも初めてのメールだからこれぐらいでいいか。でも…、
下書きを何度も繰り返していたら、手の中で携帯電話が震えはじめた。
「こんな時間にまだ寝てるんですか?メールください。From さぶちゃん」
たった一行か二行の入力に迷っていると、数分後、また着信があった。
「安否が気になります メールしてね From さぶちゃん」
うわーめんどくさいな、この人。
私は書き直しをやめてさっさと送信ボタンを押した。
昼下がり、家事の合間にメールをしてると、玄関付近からゴトゴト音がする。
目をやると、酔っぱらって玄関に寝そべってた銀さんが、ようやく起きて洗面所に行ったようだ。
新八くんと神楽ちゃんは、定春の散歩と買い物に出かけていて万事屋にいない。
顔を洗って身だしなみを整えた銀さんは、ソファーに腰掛け返信文を入力中の私に話しかけてきたので、とっさに画面を閉じた。
「アレ?ケータイ買ったの?」
「あー、これ?友だちからもらった。」
「ケータイもらう友人関係って聞いたことねーぞ。オイ、俺に隠れて怪しげなバイトを始めたんじゃねーだろーな?白い粉とか運べって言われてねーか?」
怪しげなバイト…銀さんの直感は当たっている。
「違う違う。この前、ティッシュ配りのバイトしたでしょ?あの時知り合った子が、持ってないって言ったらくれたの。」
さぶちゃんとバイトで知り合ったのは事実だ、なので言ってることは間違っていない。
「名前ちゃ~ん。」
銀さんは問いただすときに、語尾を伸ばす。
「ウソや隠し事はしねーって約束したろ?っーか、メールの相手ってまさか『男』じゃねーよな??」
銀さんはうちのお父さん以上に、私の男関係に目を光らせている。
元の世界で私は男友達が多くいる方だったのに、門限や約束事が厳しいので、江戸で親しく話をする男の人は長谷川さんだけになってしまった。
最初の頃、銀さんは嫉妬深いし、やけに身体的距離が近いし、泥酔すると口説いてくるので、もしかして…?と思ったけど、飲み屋や路上で気まぐれにナンパしてるらしい。
だから、度が過ぎた束縛は保護者の愛情だと思う事にして、今は適当にあしらっている。
「えっ??何で?何でそう思うの??ティシュ配りは女子だけだよ。」
「だったらソイツの名前言ってみろ。」
「さぶ…、りな…、サブリナちゃんって言うんだ。お父さんの仕事の都合で長く地球を離れてて、最近帰国したばかりだから友だちがいないんだって。お金持ちの子らしいよ。」
「へェ~、そんなお嬢さんが、どーしてバイトなんかするの?お小遣いで十分遊びまわれるだろ?」
「庶民の暮らしを見学するのもエリートには必要なんだって。」
「俺の目見て言えるか?」
なかなか疑いは晴れない。
「だから、私は男の人とメールとかしてないって!なんならチェックしてもいいよ。今朝一番に来たメール、見る?」
\(^o^)/の顔文字つきの文面なら絶対バレないと思ったので、私はロックを解除して画面をみせる素振りをした。
「疑って悪ィ。ただ、俺は一応こっちの保護者だから監督する義務があるっーか、そうでなくても名前ちゃんは悪い虫が寄ってくる体質だからすげー心配だし。いいな、何でも相談するように。」
「うん。心配してくれてありがとう。」
銀さんはそれ以上何も言わなかった。
条件のいいバイトをやめたくない一心で、私は銀さんを裏切ってしまったのだった。