サブリナちゃん(上) エリートと凡人
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「そうですか。少し時間があるので、暇つぶしにコーヒーでも付き合ってもらえますか?」
専門書を本棚に戻すと、彼は私を書店の最上階のカフェに案内した。
「どうして助けたのが私だってわかったんですか?だってロクに顔も見てないでしょう。」
コーヒーカップ片手に、怪訝(けげん)な顔をしている。
「つけてる腕時計が滅多にお目にかかれないレアものだったので、最終的な手掛かりになりました。仕事柄、多少詳しいんです。」
彼は時計に目を落としてから品定めをするように私に視線を向け、口を開いた。
「あなた高級ブランド品を扱う職業でもエリートでもありませんね。キャバ嬢、といったところでしょうか。」
キャバ嬢の時とメイクの仕方は変えてるはずなのに、自称エリートさんの洞察力は半端ない。
「あらかじめ言っておきますが、泥臭い営業ならお断りです充分間に合ってますから。いやしい下心でエリートを逆ナンしてきたんですか?おカネの匂いをかぎ取るのが得意なようですね。」
「私は純粋にお礼がしたくて声をかけたんですけど。」
「あなたが覚えていたのは黒塗りの車と腕時計でしょ。私が凡人なら、とうの昔に忘れているんじゃないですか?」
そんな、ひどいよ…。
「お世話になった方を忘れるほどバカじゃありません。」
私はむきになって言い返した。
「そこまで言うなら信じてあげましょう。あの日は制服で今日と格好が違いますし。」
「…。」
正義の味方って、こんなに上から目線だっけ?
「ところで、キャバ嬢をやっているそうですが。」
「はい、ヘルプですけど。」
「昼の仕事だけではお金が足りませんか?よろしければ事情を話してください。」
それから私は初対面の彼に、収入の不安定な「兄」と食べ盛りの「妹」と大型犬と同居してるので、自分が頑張らないといけないし、ミニ丈の着物がほしいので貯金をしている事などをペラペラしゃべっていた。
どこにお勤めだか知らないけど、エリートさんは聞き上手だ。
「エリートの私には到底想像できませんが、暮らしぶりが大変そうですね。さっき、お礼がしたいと言いましたっけ?」
「はい、ド庶民のできる範囲ですけど。」
「実は仕事の口利きもやってましてね。お礼ができておカネも稼げる、うってつけのバイトがあります。なぁに、ちょっと付き合ってもらうだけですよ。」
付き合う??
もしかして、これって…。
「どうかしましたか?どうせ援助交際とかいやらしい事でも考えているのでしょう。エリートはそんなことしません。」
よかった、違ったらしい。
でも、付き合うって何??
「メル友になってください。以前、仕事をあっせんした浪人にケータイを持たせたのですが、ロクに返事をよこさない怠け者だったので、即クビにしました。」
「実は、ケータイ持ってないんです。」
すると、テーブルの上に最新モデルの機種が置かれた。
「これを使ってください。」
それから、バイトの条件を聞かされたけど業務内容は至極簡単なものだった。
彼が「おやすみ」メールを送ってくるまで返信すること。お給料は二週間に一回、このカフェで手渡し。原則、代理人がやってくるらしい。
そして、結構な額の前金と携帯電話を渡された。
帰りの電車の中で、アドレス帳を確認してみる。
すると、「さぶちゃん」の電話番号とメルアドが一件だけ登録してあった。
あの人、「さぶちゃん」って言うんだ。
そういえば、本名も知らない人とメル友の契約しちゃったんだ。
向こうも私が何者か聞いてこなかったけど、これって援助交際??
そんなことない。あくまでもメールをやり取りするだけだし、嫌になったら携帯電話を捨ててしまえばいいだけのことだ。と自分に言い聞かせた。
とりあえず明日送られてくる文面で判断しよう。
ひわいな文章を送りつけてきたり、下着姿の写真を撮って送れって脅されたらどうしよう、と心配になって、その晩私はぐっすり眠る事ができなかった。
~つづく~
2015年7月22日UP
専門書を本棚に戻すと、彼は私を書店の最上階のカフェに案内した。
「どうして助けたのが私だってわかったんですか?だってロクに顔も見てないでしょう。」
コーヒーカップ片手に、怪訝(けげん)な顔をしている。
「つけてる腕時計が滅多にお目にかかれないレアものだったので、最終的な手掛かりになりました。仕事柄、多少詳しいんです。」
彼は時計に目を落としてから品定めをするように私に視線を向け、口を開いた。
「あなた高級ブランド品を扱う職業でもエリートでもありませんね。キャバ嬢、といったところでしょうか。」
キャバ嬢の時とメイクの仕方は変えてるはずなのに、自称エリートさんの洞察力は半端ない。
「あらかじめ言っておきますが、泥臭い営業ならお断りです充分間に合ってますから。いやしい下心でエリートを逆ナンしてきたんですか?おカネの匂いをかぎ取るのが得意なようですね。」
「私は純粋にお礼がしたくて声をかけたんですけど。」
「あなたが覚えていたのは黒塗りの車と腕時計でしょ。私が凡人なら、とうの昔に忘れているんじゃないですか?」
そんな、ひどいよ…。
「お世話になった方を忘れるほどバカじゃありません。」
私はむきになって言い返した。
「そこまで言うなら信じてあげましょう。あの日は制服で今日と格好が違いますし。」
「…。」
正義の味方って、こんなに上から目線だっけ?
「ところで、キャバ嬢をやっているそうですが。」
「はい、ヘルプですけど。」
「昼の仕事だけではお金が足りませんか?よろしければ事情を話してください。」
それから私は初対面の彼に、収入の不安定な「兄」と食べ盛りの「妹」と大型犬と同居してるので、自分が頑張らないといけないし、ミニ丈の着物がほしいので貯金をしている事などをペラペラしゃべっていた。
どこにお勤めだか知らないけど、エリートさんは聞き上手だ。
「エリートの私には到底想像できませんが、暮らしぶりが大変そうですね。さっき、お礼がしたいと言いましたっけ?」
「はい、ド庶民のできる範囲ですけど。」
「実は仕事の口利きもやってましてね。お礼ができておカネも稼げる、うってつけのバイトがあります。なぁに、ちょっと付き合ってもらうだけですよ。」
付き合う??
もしかして、これって…。
「どうかしましたか?どうせ援助交際とかいやらしい事でも考えているのでしょう。エリートはそんなことしません。」
よかった、違ったらしい。
でも、付き合うって何??
「メル友になってください。以前、仕事をあっせんした浪人にケータイを持たせたのですが、ロクに返事をよこさない怠け者だったので、即クビにしました。」
「実は、ケータイ持ってないんです。」
すると、テーブルの上に最新モデルの機種が置かれた。
「これを使ってください。」
それから、バイトの条件を聞かされたけど業務内容は至極簡単なものだった。
彼が「おやすみ」メールを送ってくるまで返信すること。お給料は二週間に一回、このカフェで手渡し。原則、代理人がやってくるらしい。
そして、結構な額の前金と携帯電話を渡された。
帰りの電車の中で、アドレス帳を確認してみる。
すると、「さぶちゃん」の電話番号とメルアドが一件だけ登録してあった。
あの人、「さぶちゃん」って言うんだ。
そういえば、本名も知らない人とメル友の契約しちゃったんだ。
向こうも私が何者か聞いてこなかったけど、これって援助交際??
そんなことない。あくまでもメールをやり取りするだけだし、嫌になったら携帯電話を捨ててしまえばいいだけのことだ。と自分に言い聞かせた。
とりあえず明日送られてくる文面で判断しよう。
ひわいな文章を送りつけてきたり、下着姿の写真を撮って送れって脅されたらどうしよう、と心配になって、その晩私はぐっすり眠る事ができなかった。
~つづく~
2015年7月22日UP