サブリナちゃん(上) エリートと凡人
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「小娘、土下座しろ!ならこの場をすませてやる。」
「悪いのはそっちでしょーが。」
「そこまで言うなら覚悟があるという事だな。」
とうとうニセ侍は抜刀した。
「嬢ちゃんもういいって。おカネで済むことなら穏便に済ませたいし。俺が払えば済むんだから。」
気の弱そうな男性は私の影に隠れたままオロオロしている。
私はいつの間にか、腕に覚えがないのに強気に出る「虎の威を借る狐」と化していたようだ。
カツアゲ犯は銀さんより断然弱い。でも、守ってくれる銀さん達はここにいない。
周囲は、姉ちゃん頑張れ~などとはやし立てるけど、相手が抜刀してるので介入してくれない。
誰かが与力を呼びにいった以外は、遠巻きにするだけだ。
野次馬が野次馬を呼び、「渡る世間は~」のロケだと勘違いする人も集まってくる。
いつしか、商店街の通りは車道まで群集があふれていた。
私と男がにらみ合いを続けているとクラクションが鳴った。でも、誰も道を空けようとしない。
長いクラクションが数回鳴った後、黒塗りの高級車から白い制服を着た上品な男の人が降りてきた。
「何ですかこの騒ぎは。人が路上にはみだしているせいで通行出来やしませんよ。そこどいてください。」
私は片側レンズのメガネをかけている男の人に訴えた。
「この侍、ワザとぶつかってカツアゲする悪い人なんです!」
ニセ侍も自分の無実をがなり立てる。
「何を申すか!某(それがし)は、徳川家にお仕えする由緒正し…
平等に話を聞いていた男の人は、ニセ侍に向けて質問した。
「失礼ですが、どちらの家の方です?」
「通りがかりの貴様に名乗るいわれはない!」
「繁華街で抜刀するような見苦しい方に殿中でお会いした覚えはありませんが。」
「貴様のような者こそ知らんわ!」
「エリートなら、女子供相手に矛(ほこ)を収めるべきでしょう。」
「公衆の面前でメンツをつぶされてタダでは済むまい!」
「聞き分けのない人ですね。」
彼は足早に進むと、手品のように刀を奪い、相手をガクンとひさまづかせた。
急所を打たれたのかニセ侍は全く動けずに、低い声でうめいている。
そして誰かから縄を渡されると、犯人を後ろ手に縛って路上に倒した。
周りから歓声と拍手が沸き起こる。
「お嬢さん、無茶をするもんじゃありませんよ。お怪我はありませんか?」
片側メガネの男の人は、張りつめていた緊張の糸が切れてその場にへたりこんでしまった私に、手を差し伸べて起き上がらせてくれた。
白い制服の袖から、高級腕時計がチラリと見える。
与力に犯人が連行されていくのを合図に人々は解散を始め、街は平穏を取り戻した。
商店街の人たちにとってニセ侍は有名な存在だったらしく、口々に姉ちゃんよくやった、などと声をかけてくれる。
「あれ、私を助けてくれた人は?」
「例のお方なら、クルマに乗り込んでどっか行っちゃったよ。」
お礼を言う間もなく、正義の味方は立ち去っていた。
後日…。
大規模書店の上の方の階で、私は高級腕時計の図鑑を立ち読みして、彼のつけていた機種を特定しようとしていた。
「すまいる」で接客していると、ブランド品に自然と詳しくなってくる。あれは独特な針の形で有名な、老舗メーカーの製品だ。
でも、彼の時計は図鑑に載ってない。
ということは特注品だ。
よほどのお金持ちか時計業界の関係者に違いない。
鍛錬された身のこなし、運転手付きの高級車、片側レンズのメガネ。
彼は、一体どこの誰だったんだろう。
書店を出るために、エスカレーターで下の階へ降りていくと、背が高くて同じタイプのメガネをかけた男性が、本棚の上の方から分厚い専門書を取ろうとしているのが視界に入ってきた。
羽織の袖から腕時計が見える。
あの人だ!
「あの…。すみません。」
「失礼ですが、どちら様ですか?」
「アキバNEOで助けていただいた者です。危ない所を本当にありがとうございました。」
「ああ、あの庶民の方ですか。関わりたくなかったのですが、クルマが通れなかったのでどかしただけです。礼には及びません。で、エリートの私に用でもあるんですか?」
彼は他人事のような冷たい対応をしてくる。
「ええとですね…、本来ならお菓子折りなど持ってご挨拶に伺うべきだったんですが、住所とかわからないので失礼しました。でも、ようやくお会いできたので、ささやかな御礼をさせてもらえませんか。」
とか言いつつ、私は素っ気なさすぎな恩人に声をかけたことを後悔し始めていた。
「悪いのはそっちでしょーが。」
「そこまで言うなら覚悟があるという事だな。」
とうとうニセ侍は抜刀した。
「嬢ちゃんもういいって。おカネで済むことなら穏便に済ませたいし。俺が払えば済むんだから。」
気の弱そうな男性は私の影に隠れたままオロオロしている。
私はいつの間にか、腕に覚えがないのに強気に出る「虎の威を借る狐」と化していたようだ。
カツアゲ犯は銀さんより断然弱い。でも、守ってくれる銀さん達はここにいない。
周囲は、姉ちゃん頑張れ~などとはやし立てるけど、相手が抜刀してるので介入してくれない。
誰かが与力を呼びにいった以外は、遠巻きにするだけだ。
野次馬が野次馬を呼び、「渡る世間は~」のロケだと勘違いする人も集まってくる。
いつしか、商店街の通りは車道まで群集があふれていた。
私と男がにらみ合いを続けているとクラクションが鳴った。でも、誰も道を空けようとしない。
長いクラクションが数回鳴った後、黒塗りの高級車から白い制服を着た上品な男の人が降りてきた。
「何ですかこの騒ぎは。人が路上にはみだしているせいで通行出来やしませんよ。そこどいてください。」
私は片側レンズのメガネをかけている男の人に訴えた。
「この侍、ワザとぶつかってカツアゲする悪い人なんです!」
ニセ侍も自分の無実をがなり立てる。
「何を申すか!某(それがし)は、徳川家にお仕えする由緒正し…
平等に話を聞いていた男の人は、ニセ侍に向けて質問した。
「失礼ですが、どちらの家の方です?」
「通りがかりの貴様に名乗るいわれはない!」
「繁華街で抜刀するような見苦しい方に殿中でお会いした覚えはありませんが。」
「貴様のような者こそ知らんわ!」
「エリートなら、女子供相手に矛(ほこ)を収めるべきでしょう。」
「公衆の面前でメンツをつぶされてタダでは済むまい!」
「聞き分けのない人ですね。」
彼は足早に進むと、手品のように刀を奪い、相手をガクンとひさまづかせた。
急所を打たれたのかニセ侍は全く動けずに、低い声でうめいている。
そして誰かから縄を渡されると、犯人を後ろ手に縛って路上に倒した。
周りから歓声と拍手が沸き起こる。
「お嬢さん、無茶をするもんじゃありませんよ。お怪我はありませんか?」
片側メガネの男の人は、張りつめていた緊張の糸が切れてその場にへたりこんでしまった私に、手を差し伸べて起き上がらせてくれた。
白い制服の袖から、高級腕時計がチラリと見える。
与力に犯人が連行されていくのを合図に人々は解散を始め、街は平穏を取り戻した。
商店街の人たちにとってニセ侍は有名な存在だったらしく、口々に姉ちゃんよくやった、などと声をかけてくれる。
「あれ、私を助けてくれた人は?」
「例のお方なら、クルマに乗り込んでどっか行っちゃったよ。」
お礼を言う間もなく、正義の味方は立ち去っていた。
後日…。
大規模書店の上の方の階で、私は高級腕時計の図鑑を立ち読みして、彼のつけていた機種を特定しようとしていた。
「すまいる」で接客していると、ブランド品に自然と詳しくなってくる。あれは独特な針の形で有名な、老舗メーカーの製品だ。
でも、彼の時計は図鑑に載ってない。
ということは特注品だ。
よほどのお金持ちか時計業界の関係者に違いない。
鍛錬された身のこなし、運転手付きの高級車、片側レンズのメガネ。
彼は、一体どこの誰だったんだろう。
書店を出るために、エスカレーターで下の階へ降りていくと、背が高くて同じタイプのメガネをかけた男性が、本棚の上の方から分厚い専門書を取ろうとしているのが視界に入ってきた。
羽織の袖から腕時計が見える。
あの人だ!
「あの…。すみません。」
「失礼ですが、どちら様ですか?」
「アキバNEOで助けていただいた者です。危ない所を本当にありがとうございました。」
「ああ、あの庶民の方ですか。関わりたくなかったのですが、クルマが通れなかったのでどかしただけです。礼には及びません。で、エリートの私に用でもあるんですか?」
彼は他人事のような冷たい対応をしてくる。
「ええとですね…、本来ならお菓子折りなど持ってご挨拶に伺うべきだったんですが、住所とかわからないので失礼しました。でも、ようやくお会いできたので、ささやかな御礼をさせてもらえませんか。」
とか言いつつ、私は素っ気なさすぎな恩人に声をかけたことを後悔し始めていた。