サブリナちゃん(上) エリートと凡人
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副長室で書類の整理をしていたら、見廻組という団体の組織図が目に飛び込んできた。
ピラミッド型の組織図の頂点に、変わったメガネをかけた男性の写真が配置されている。
「さぶちゃん…?」
「どうした名字。」
タバコをくわえた副長が書類をのぞいてきたので、彼の写真を指さす。
「あー、コイツの事を天パヤローから聞いてンのか。」
「見廻組のトップってことはエリート中のエリートなんですね。」
「いかにも名門佐々木家のエリート様ってツラしてるだろ?」
副長はこの人が大嫌いなようだ。
「確かに、嫌味な感じが伝わってくるというか。」
私は相づちを打った。
佐々木異三郎という人物の、エリートを鼻にかけた高慢な態度は写真からも伝わってくる。
「コイツに出くわしても目合わせるんじゃねーぞ。ケータイ押し付けられたら俺が真っ二つに斬ってやる。っーか名字に指一本触れさせやしねェ。」
完全に瞳孔が開ききってるってことは、この人とは過去に本気でやり合っているのだろう。
「ありがとうございます。」
「ところで、進み具合はどうだ?」
私は、ジャケットをはおり襟元を整えている副長に、進捗状況を報告した。
最近、段取り悪いなどと叱られる回数は減ってきている。
「この作業が終わったら今日は帰れ。終わってなくても30分したら帰れ。」
「了解しました。」
「名字。」
「はい、副長。」
「近藤さんに『たまにはかわいい部下をほめてやれ』って注意されたからには、ほめてやらねーとな。」
「?」
「名字の働きぶりがいいから俺の睡眠時間が増えた。」
普段クールで厳しい副長に温かい言葉をかけられると、どう反応していいのかわからない。
「わかんねー事あったら明日聞け。」
「あ、ありがとうございます!いってらっしゃいませ。」
不意打ちにぼーっとしてた私は、はっと立ち上がり、しょうちゃんのお供で「すまいる」へ向かう副長を、廊下の角を曲がるまでお辞儀をして見送ってから、自分の席に座りなおして作業を再開した。
さぶちゃんか…。懐かしいな。
私が彼の顔を見るのは、四度目だ。
再びこの世界に来て江戸全体の地理が大体把握できた頃に、銀さんに交渉した結果、臨時のバイトができるようになった。
私は、毎月のバイトで稼いだお金の一部を万事屋に入れている。
残りで身のまわりの物を買いそろえているので、自由になるお金はほとんどない。
時々様子を見に来るお妙ちゃんは、着古しだって謙遜(けんそん)して新品同様の着物や帯をくれる。
遊びに行くといつもおごってくれる。
でも、彼女のやさしさと強さに触れるうちに、面倒をみてもらうだけでなく対等な友人になりたくなったのだ。
お妙ちゃんに呼ばれて「すまいる」で接客をするけど、全くの不定期なので、安定した収入とはいいがたい。
その上、バイトが休みでみんなが仕事に行く日は、ものすごく暇で退屈だ。
晴れの日はお弁当を作って、長谷川さんと公園でお昼を食べたりするけど、基本、掃除や買い物を済ませたらやることがない。
そんな訳で、私はアキバNEOに新装開店したパチンコ店で、ティッシュ配りの短期バイトをしていた。
最初の頃はタイミングがつかめなかったけど、次第に、渡す時の手の位置や、もらってくれそうな人がわかってくる。
日焼けのリスク以外は街の活気を感じることができる楽しい仕事だった。
そう、あれはバイトの最終日のことだ。
私は、おせっかいでとんでもない事態を発生させて、騒動を起こしていた。
そしてさぶちゃんに出会ったんだ。
バイトの初日、休憩を終えて従業員出入り口から出ると、集積ゴミ置き場の隅で、侍にド突かれた少年が泣きながらお金を渡しているのを目撃した。
カツアゲ?
私に気づくと少年は走り去り、侍はガンを飛ばしてきたので、何もできずに仕事に戻った。
帰りにネット茶屋に寄って手あたり次第検索してみると、「攘夷ちゃんねる」というサイトで、カツアゲするニセ侍に注意、という書き込みと隠し撮りされた犯人の写真を発見した。
画像は少しぼやけてるけど、私の見た男と同一人物だった。
そして今、その男と私は言い争っている。
「お侍さん、昨日もここら辺うろついていましたよね?カツアゲしてるってネットでも評判になってますよ。」
ニセ侍に体当たりされた気の弱そうな男性が路地裏に拉致られそうになったので、私は止めに入った。
「貴様、何を申すか!」
ニセ侍は逆ギレした。
「私は、お侍さんがワザとぶつかった瞬間を見たんです。この前だって裏通りでカツアゲしてたじゃないですか。もう見過ごせません。」
「某(それがし)を犯人よばわりして武士を愚弄(ぐろう)する気か!当家は代々将軍様にお仕えする名門である。ティッシュ配り風情が口をきける身分ではないのだぞ。」
ニセ侍は私が騒いだので、商店街の人たちに取り囲まれてしまった。逃走のタイミングを完全に失ってしまい、顔を真っ赤にして激怒している。
ピラミッド型の組織図の頂点に、変わったメガネをかけた男性の写真が配置されている。
「さぶちゃん…?」
「どうした名字。」
タバコをくわえた副長が書類をのぞいてきたので、彼の写真を指さす。
「あー、コイツの事を天パヤローから聞いてンのか。」
「見廻組のトップってことはエリート中のエリートなんですね。」
「いかにも名門佐々木家のエリート様ってツラしてるだろ?」
副長はこの人が大嫌いなようだ。
「確かに、嫌味な感じが伝わってくるというか。」
私は相づちを打った。
佐々木異三郎という人物の、エリートを鼻にかけた高慢な態度は写真からも伝わってくる。
「コイツに出くわしても目合わせるんじゃねーぞ。ケータイ押し付けられたら俺が真っ二つに斬ってやる。っーか名字に指一本触れさせやしねェ。」
完全に瞳孔が開ききってるってことは、この人とは過去に本気でやり合っているのだろう。
「ありがとうございます。」
「ところで、進み具合はどうだ?」
私は、ジャケットをはおり襟元を整えている副長に、進捗状況を報告した。
最近、段取り悪いなどと叱られる回数は減ってきている。
「この作業が終わったら今日は帰れ。終わってなくても30分したら帰れ。」
「了解しました。」
「名字。」
「はい、副長。」
「近藤さんに『たまにはかわいい部下をほめてやれ』って注意されたからには、ほめてやらねーとな。」
「?」
「名字の働きぶりがいいから俺の睡眠時間が増えた。」
普段クールで厳しい副長に温かい言葉をかけられると、どう反応していいのかわからない。
「わかんねー事あったら明日聞け。」
「あ、ありがとうございます!いってらっしゃいませ。」
不意打ちにぼーっとしてた私は、はっと立ち上がり、しょうちゃんのお供で「すまいる」へ向かう副長を、廊下の角を曲がるまでお辞儀をして見送ってから、自分の席に座りなおして作業を再開した。
さぶちゃんか…。懐かしいな。
私が彼の顔を見るのは、四度目だ。
再びこの世界に来て江戸全体の地理が大体把握できた頃に、銀さんに交渉した結果、臨時のバイトができるようになった。
私は、毎月のバイトで稼いだお金の一部を万事屋に入れている。
残りで身のまわりの物を買いそろえているので、自由になるお金はほとんどない。
時々様子を見に来るお妙ちゃんは、着古しだって謙遜(けんそん)して新品同様の着物や帯をくれる。
遊びに行くといつもおごってくれる。
でも、彼女のやさしさと強さに触れるうちに、面倒をみてもらうだけでなく対等な友人になりたくなったのだ。
お妙ちゃんに呼ばれて「すまいる」で接客をするけど、全くの不定期なので、安定した収入とはいいがたい。
その上、バイトが休みでみんなが仕事に行く日は、ものすごく暇で退屈だ。
晴れの日はお弁当を作って、長谷川さんと公園でお昼を食べたりするけど、基本、掃除や買い物を済ませたらやることがない。
そんな訳で、私はアキバNEOに新装開店したパチンコ店で、ティッシュ配りの短期バイトをしていた。
最初の頃はタイミングがつかめなかったけど、次第に、渡す時の手の位置や、もらってくれそうな人がわかってくる。
日焼けのリスク以外は街の活気を感じることができる楽しい仕事だった。
そう、あれはバイトの最終日のことだ。
私は、おせっかいでとんでもない事態を発生させて、騒動を起こしていた。
そしてさぶちゃんに出会ったんだ。
バイトの初日、休憩を終えて従業員出入り口から出ると、集積ゴミ置き場の隅で、侍にド突かれた少年が泣きながらお金を渡しているのを目撃した。
カツアゲ?
私に気づくと少年は走り去り、侍はガンを飛ばしてきたので、何もできずに仕事に戻った。
帰りにネット茶屋に寄って手あたり次第検索してみると、「攘夷ちゃんねる」というサイトで、カツアゲするニセ侍に注意、という書き込みと隠し撮りされた犯人の写真を発見した。
画像は少しぼやけてるけど、私の見た男と同一人物だった。
そして今、その男と私は言い争っている。
「お侍さん、昨日もここら辺うろついていましたよね?カツアゲしてるってネットでも評判になってますよ。」
ニセ侍に体当たりされた気の弱そうな男性が路地裏に拉致られそうになったので、私は止めに入った。
「貴様、何を申すか!」
ニセ侍は逆ギレした。
「私は、お侍さんがワザとぶつかった瞬間を見たんです。この前だって裏通りでカツアゲしてたじゃないですか。もう見過ごせません。」
「某(それがし)を犯人よばわりして武士を愚弄(ぐろう)する気か!当家は代々将軍様にお仕えする名門である。ティッシュ配り風情が口をきける身分ではないのだぞ。」
ニセ侍は私が騒いだので、商店街の人たちに取り囲まれてしまった。逃走のタイミングを完全に失ってしまい、顔を真っ赤にして激怒している。
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