August Part3 8月中旬 とある部屋
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高杉は何度も私の名を呼んだ。
倒れて意識を失ったとでも思い込んでいるのだろう。扉を叩き大声で呼びかけてくる。
私は当分出てくる意思はないと告げ、カギの箇所を指が痛くなるくらい押さえつけた。
しばらくして高杉と連れの男は商談と告げて消え、入れ違いに男女の声が響いてきた。
「簡単な話、蝶番を銃で撃ち抜けばいいっスね。」
― 銃?
耳をそばだてていた私は扉から離れた。
「待ってくださいまた子さん!あっちには人がいるんです、話を最後まで…
「オイそこの人~開けるっスよ~!十数えるうちに…
男性は若い女性をなだめているけど、扉への体当たりは止まらない。
「だから手荒な真似はやめなさいって。客人にケガさせたら大問題ですよ。」
「客人?クセ者じゃないってコトすか?なら早く言ってくださいよ先輩~。」
「聞く耳持たないのはまた子さんの方じゃないですか。あなたにお願いしたいのは、あちらにいらっしゃるご婦人のお世話です。くれぐれも頼みましたよ。」
男性の足音は遠ざかり扉の開閉音がした。
すぐさま女性がノックしてくる。
「聞こえるっスか?武市先輩はもういないっス。女同士遠慮はいらないっスよ。」
やさしく呼びかけてくる彼女に、私はどう反応していいのかわからず黙っていた。
「アンタ、体がとても弱いって先輩から聞いたっス。さては宇宙酔いっスね~。初めて船に乗る人でたまにいるっスよ。恥ずかしがるコトないっス。」
彼女は高杉から何も知らされていないようだ。
「大丈夫っスか?聞こえるっスか?」
「…はい。大丈夫です。」
人の良さそうなこの人を困らせたくなくて、私は話を合わせることにした。
「一人で立ちあがれるっスか?肩貸すっスよ。」
「もう少ししたら出られると思います。ご心配おかけしました。」
私の言葉を聞くと彼女は一旦部屋を後にし、数分後戻って来た。
薬や毛布などを用意したと説明をしてくれる。
「ありがとう、ございました。」
「当分は安静にするっスよ。晋助様には伝えておくっス。部屋は自由に使っていいっスからね。」
そう言ったきり、声は聞こえなくなった。
カギを開けると、私は扉から首を出してあたりを見渡した。
彼女は部屋から出て行ったようだ。
ソファーには着替えと毛布、身の回りの日用品が一揃え、机の上に食べ物とポットに入った飲み物、薬、手紙が置いてあった。
封を開けると、すみやかに医師の診察を受けてほしい、との走り書きに内線番号が添えてある。これは高杉が書いたのだろう。
今夜は寝室に来ないと約束する、これからの事はゆっくり話したい、とも書いてあった。
手紙を置いてから私はあちこち歩き回った。
冷蔵庫にはヤクルコとポカリが隙間なく詰め込まれている。
私はポカリを手に取り一気飲みしてからフーッと息をついた。
そういえば、朝から何も食べてない…。
胃が刺激され急激におなかが空いた私は、用意された食事をあっという間に平らげ、ヤクルコを冷蔵庫から出してふたを開けた。
― さて、どうするか。
ほくろまで同じだったなんて…。
それでは高杉が彼女さんと思い込むのも仕方ない。
でも私はアイツの恋人じゃない。
証拠さえみつかれば、絶対船から降ろしてもらえる。
高杉の口ぶりでは、彼女さんは深刻な病にかかり体が弱っていたらしい。
働けるのか?とびっくりしていたぐらいだ。
となると、健康診断を受ければ他人の空似が証明できるだろう。
私は一縷の望みをかけて受話器を上げると、メモに書いてある内線番号をプッシュした。
2016年12月4日UP
倒れて意識を失ったとでも思い込んでいるのだろう。扉を叩き大声で呼びかけてくる。
私は当分出てくる意思はないと告げ、カギの箇所を指が痛くなるくらい押さえつけた。
しばらくして高杉と連れの男は商談と告げて消え、入れ違いに男女の声が響いてきた。
「簡単な話、蝶番を銃で撃ち抜けばいいっスね。」
― 銃?
耳をそばだてていた私は扉から離れた。
「待ってくださいまた子さん!あっちには人がいるんです、話を最後まで…
「オイそこの人~開けるっスよ~!十数えるうちに…
男性は若い女性をなだめているけど、扉への体当たりは止まらない。
「だから手荒な真似はやめなさいって。客人にケガさせたら大問題ですよ。」
「客人?クセ者じゃないってコトすか?なら早く言ってくださいよ先輩~。」
「聞く耳持たないのはまた子さんの方じゃないですか。あなたにお願いしたいのは、あちらにいらっしゃるご婦人のお世話です。くれぐれも頼みましたよ。」
男性の足音は遠ざかり扉の開閉音がした。
すぐさま女性がノックしてくる。
「聞こえるっスか?武市先輩はもういないっス。女同士遠慮はいらないっスよ。」
やさしく呼びかけてくる彼女に、私はどう反応していいのかわからず黙っていた。
「アンタ、体がとても弱いって先輩から聞いたっス。さては宇宙酔いっスね~。初めて船に乗る人でたまにいるっスよ。恥ずかしがるコトないっス。」
彼女は高杉から何も知らされていないようだ。
「大丈夫っスか?聞こえるっスか?」
「…はい。大丈夫です。」
人の良さそうなこの人を困らせたくなくて、私は話を合わせることにした。
「一人で立ちあがれるっスか?肩貸すっスよ。」
「もう少ししたら出られると思います。ご心配おかけしました。」
私の言葉を聞くと彼女は一旦部屋を後にし、数分後戻って来た。
薬や毛布などを用意したと説明をしてくれる。
「ありがとう、ございました。」
「当分は安静にするっスよ。晋助様には伝えておくっス。部屋は自由に使っていいっスからね。」
そう言ったきり、声は聞こえなくなった。
カギを開けると、私は扉から首を出してあたりを見渡した。
彼女は部屋から出て行ったようだ。
ソファーには着替えと毛布、身の回りの日用品が一揃え、机の上に食べ物とポットに入った飲み物、薬、手紙が置いてあった。
封を開けると、すみやかに医師の診察を受けてほしい、との走り書きに内線番号が添えてある。これは高杉が書いたのだろう。
今夜は寝室に来ないと約束する、これからの事はゆっくり話したい、とも書いてあった。
手紙を置いてから私はあちこち歩き回った。
冷蔵庫にはヤクルコとポカリが隙間なく詰め込まれている。
私はポカリを手に取り一気飲みしてからフーッと息をついた。
そういえば、朝から何も食べてない…。
胃が刺激され急激におなかが空いた私は、用意された食事をあっという間に平らげ、ヤクルコを冷蔵庫から出してふたを開けた。
― さて、どうするか。
ほくろまで同じだったなんて…。
それでは高杉が彼女さんと思い込むのも仕方ない。
でも私はアイツの恋人じゃない。
証拠さえみつかれば、絶対船から降ろしてもらえる。
高杉の口ぶりでは、彼女さんは深刻な病にかかり体が弱っていたらしい。
働けるのか?とびっくりしていたぐらいだ。
となると、健康診断を受ければ他人の空似が証明できるだろう。
私は一縷の望みをかけて受話器を上げると、メモに書いてある内線番号をプッシュした。
2016年12月4日UP