Day30+1 11月9日 夕方 源外庵
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翌日の夕方、私は銀さんたちに連れられて平賀源外さんを訪ねた。
幕府に逆らった罪で指名手配されている、その人の工房は、路地を抜けた広場の先にあった。
出入り口には用途のわからないスクラップが、微妙なバランスで積まれている。
呼びに行った神楽ちゃんと一緒に、ガコンガコン音がする建物の奥から出てきた源外さんは、思ったより背が低くて年取ったおじいさんだった。
「初めまして、名字名前と申します。」
「銀の字から話は聞いてる。」
あいさつを終えた源外さんは、私と銀さんを交互に見比べている。
「じーさん、俺の顔に何かついてんの?」
「そうか、あん時の見立てが間違ってたのか…。オイ銀の字、もしかして、『どこでもドア』の嬢ちゃんか?」
「オィィィ!」
「やっぱりな。」
そう言うと、源外さんはニヤッと笑った。
私は「どこでもドア」の人とあだ名をつけられていたらしい。
この世界に瞬間移動してきたからだと思うけど、なぜか銀さんは半ギレしている。
場の雰囲気が落ち着いたところで、源外さんは声をかけてきた。
「まずは『スマホ』とやらを見せてくれ。」
バッグからスマホを取り出して渡すと、分厚いメガネをかけた源外さんは使い方がわからず、上下にしたり裏表にしたりしている。
土方さんが貸してくれた携帯電話は「ケータイ」だったし、ここはスマホが普及してない世界のようだ。
電源ボタンや充電アダプターの接続部、操作はタッチパネルという事を説明すると、源外さんはうなずきながらメモ用紙に筆で書きつけていく。
一通り話を聞いた源外さんは、
「コイツを起動させねーことには話が始まんねェ。中身を調べるには大体三十分くらいかかる。しばらくそこで待ってろ。」
と言って、大きな機械の電源を入れると奥の方に部品を取りに行った。
銀さんたちの住む「江戸」は、黒船の代わりに天人が乗った宇宙船が襲来して開国に至ったそうだ。
まだ将軍様はいらっしゃるし、真選組もいる。おおまかな感覚では「幕末」だ。
私は、「JIN」の仁先生のように博識じゃないけど、うなぎ=土用の丑の日やエレキテルで名をとどろかした平賀源内は、幕末より全然前の生まれじゃなかったっけ。
こっちの「平賀」さんは何を作ってる人なんだろう。
「銀さん、源外さんとはどういう付き合いなの?」
「主にスクーターの修理だな。」
そういえば初めて「お登勢」に来た時、銀さんはスクーターを修理に出していた。
「まだありますよ、たまさんの定期メンテナンスです。」
新八くんはさらっと答えたけど、メンテナンス?
「たまさんは事故や障害で、義手とか義足をつけてるの?」
「たまは『からくり』アル。」
「からくり?嘘でしょ!」
「本当ですよ。たまさんはオイルで動く『からくり』です。」
からかってるんだよね?!人間だよね??
でも、三人は真顔だ。
マジで?!
「あと、じーさんは卵かけ醤油機の発明家アル。」
「卵かけ醤油機?」
最先端のロボットとアイデア商品?何だか頭が混乱してくる。
ともあれ、一文字違いの平賀さんも天才発明家みたいだ。
「からくり」を修理しているなら、源外さんの技術は十分期待できるかもしれない。ドラえもんの「どこでもドア」みたいに、今すぐ帰してくれたらなーって、都合のいいことを考えてしまう。
でも、たまさんにパーツのつなぎ目とかあったっけ?
うーん。
「新八くん、たまさんは本当に本当に『からくり』なの?」
「本当に本当です、口にするのはオイルだけですよ。」
まだ私が疑ってるので、新八くんは苦笑いしている。
「マジで?」
「マジです。」
本当なのかな…。
「原材料は体内に投入したら加工してくれますけど。」
「原材料?ますます訳わかんないんだけど。」
「名前さん、そんなに疑うなら後で『お登勢』に…
― バン!
大きな音と同時に、あたりが真っ暗になった。
「源外さん、大丈夫ですか?」
「心配いらねェよ~。」
奥の方から、のんきな声が聞こえてくる。大量の電気を使ったせいでブレーカーが落ちたらしい。
懐中電灯の明かりと影がゆらゆらと壁に映ってから数十秒で電源は復旧した。
入口付近の鋼材に腰掛けた銀さんと神楽ちゃんは停電を気にすることなく、桂さんの話を続けている。
桂さんは、唯一の私物のバッグを拾って万事屋に届けてくれた恩人だ。
私の様子を心配して、お見舞いに来てくれたこともある。
「機械に疎い(うとい)ヅラが最先端の携帯電話なんてよくわかったアルな。」
「女のバッグの中にある電化製品は携帯電話って認識らしいぜ。そうだ、ヅラが…
幕府に逆らった罪で指名手配されている、その人の工房は、路地を抜けた広場の先にあった。
出入り口には用途のわからないスクラップが、微妙なバランスで積まれている。
呼びに行った神楽ちゃんと一緒に、ガコンガコン音がする建物の奥から出てきた源外さんは、思ったより背が低くて年取ったおじいさんだった。
「初めまして、名字名前と申します。」
「銀の字から話は聞いてる。」
あいさつを終えた源外さんは、私と銀さんを交互に見比べている。
「じーさん、俺の顔に何かついてんの?」
「そうか、あん時の見立てが間違ってたのか…。オイ銀の字、もしかして、『どこでもドア』の嬢ちゃんか?」
「オィィィ!」
「やっぱりな。」
そう言うと、源外さんはニヤッと笑った。
私は「どこでもドア」の人とあだ名をつけられていたらしい。
この世界に瞬間移動してきたからだと思うけど、なぜか銀さんは半ギレしている。
場の雰囲気が落ち着いたところで、源外さんは声をかけてきた。
「まずは『スマホ』とやらを見せてくれ。」
バッグからスマホを取り出して渡すと、分厚いメガネをかけた源外さんは使い方がわからず、上下にしたり裏表にしたりしている。
土方さんが貸してくれた携帯電話は「ケータイ」だったし、ここはスマホが普及してない世界のようだ。
電源ボタンや充電アダプターの接続部、操作はタッチパネルという事を説明すると、源外さんはうなずきながらメモ用紙に筆で書きつけていく。
一通り話を聞いた源外さんは、
「コイツを起動させねーことには話が始まんねェ。中身を調べるには大体三十分くらいかかる。しばらくそこで待ってろ。」
と言って、大きな機械の電源を入れると奥の方に部品を取りに行った。
銀さんたちの住む「江戸」は、黒船の代わりに天人が乗った宇宙船が襲来して開国に至ったそうだ。
まだ将軍様はいらっしゃるし、真選組もいる。おおまかな感覚では「幕末」だ。
私は、「JIN」の仁先生のように博識じゃないけど、うなぎ=土用の丑の日やエレキテルで名をとどろかした平賀源内は、幕末より全然前の生まれじゃなかったっけ。
こっちの「平賀」さんは何を作ってる人なんだろう。
「銀さん、源外さんとはどういう付き合いなの?」
「主にスクーターの修理だな。」
そういえば初めて「お登勢」に来た時、銀さんはスクーターを修理に出していた。
「まだありますよ、たまさんの定期メンテナンスです。」
新八くんはさらっと答えたけど、メンテナンス?
「たまさんは事故や障害で、義手とか義足をつけてるの?」
「たまは『からくり』アル。」
「からくり?嘘でしょ!」
「本当ですよ。たまさんはオイルで動く『からくり』です。」
からかってるんだよね?!人間だよね??
でも、三人は真顔だ。
マジで?!
「あと、じーさんは卵かけ醤油機の発明家アル。」
「卵かけ醤油機?」
最先端のロボットとアイデア商品?何だか頭が混乱してくる。
ともあれ、一文字違いの平賀さんも天才発明家みたいだ。
「からくり」を修理しているなら、源外さんの技術は十分期待できるかもしれない。ドラえもんの「どこでもドア」みたいに、今すぐ帰してくれたらなーって、都合のいいことを考えてしまう。
でも、たまさんにパーツのつなぎ目とかあったっけ?
うーん。
「新八くん、たまさんは本当に本当に『からくり』なの?」
「本当に本当です、口にするのはオイルだけですよ。」
まだ私が疑ってるので、新八くんは苦笑いしている。
「マジで?」
「マジです。」
本当なのかな…。
「原材料は体内に投入したら加工してくれますけど。」
「原材料?ますます訳わかんないんだけど。」
「名前さん、そんなに疑うなら後で『お登勢』に…
― バン!
大きな音と同時に、あたりが真っ暗になった。
「源外さん、大丈夫ですか?」
「心配いらねェよ~。」
奥の方から、のんきな声が聞こえてくる。大量の電気を使ったせいでブレーカーが落ちたらしい。
懐中電灯の明かりと影がゆらゆらと壁に映ってから数十秒で電源は復旧した。
入口付近の鋼材に腰掛けた銀さんと神楽ちゃんは停電を気にすることなく、桂さんの話を続けている。
桂さんは、唯一の私物のバッグを拾って万事屋に届けてくれた恩人だ。
私の様子を心配して、お見舞いに来てくれたこともある。
「機械に疎い(うとい)ヅラが最先端の携帯電話なんてよくわかったアルな。」
「女のバッグの中にある電化製品は携帯電話って認識らしいぜ。そうだ、ヅラが…