August Part1 8月中旬 夕方 繁華街
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「そんなことないよ、お付き合いするようになったらみんなに紹介するし。」
「合コンアルか?」
詮索好きな神楽ちゃんは食い下がってくる。
「本当に違うって。今日はバイトの友達と女子会。」
「女子会のクセに、そわそわしてて怪しいネ。私、銀ちゃんに絶対内緒にするから教えてヨ。名前ちゃん、教えてプリーズ~、ヘルペスミ~。」
「…。」
神楽ちゃんは上目づかいで袖を引っ張ってくる。
ああ…これはバレてる。
万事屋に戻ったら神楽ちゃんは間違いなく銀さんに報告するだろう。
今晩帰ったらみんなに一部始終を報告するはめになる…。
口止め料を渡そうかな。
いや、それはダメだ。延々たかられることになる。
「ごめん神楽ちゃん、待ち合わせに遅れちゃうからまたね。」
私は時計をみるフリをすると、走って逃げ出した。
それから、私は電車を乗り継いで最寄りの駅についた。
夏休みの週末ということもあって街は大勢の人々でにぎわっている。
街頭ビジョンの時計を確認すると、時間には充分余裕があった。
私は待ち合わせの場所に向かって大通りを歩き始めたけど、すぐに地下街から行くべきだったと後悔した。
信号待ちの間、夕日が強くてアスファルトから熱が跳ね返ってくる。
そこで、街路樹の木陰に移動して青になるまで涼んでから再び歩き始めた。
横断歩道を渡り、待ち合わせ場所が見えてきたところだった。
二人組の男の人とすれ違いざまに物が落ちる音がした。
振り向くとお財布が地面に落ちている。
立ち去っていく男の人のズボンの後ろポケットは大きく破けていた。
「あの…、落としましたよ。」
私はすぐにお財布を拾って彼の後ろ姿へ呼びかけた。
でも、ヘッドフォンをしてるせいで私の声が耳に入っていないようだ。
しょうがないので私は小走りに彼を追い越し、前に回って呼び止めた。
「落としましたよ。」
財布を差し出すと、彼は落し物をしたのに初めて気づいたようでひどく驚いた。
「かたじけないでござる。」
落し物の主はサングラスをかけ、髪の毛を立てて三味線を背負っている。
高そうなヘッドフォンもしてるし、いかにもミュージシャンといった格好だ。
「いいえ、こちらこそ。」
連れの男性は、編み笠を深くかぶっているので顔は見えない。
足袋をはかずに、女性が着てもおかしくないような柄の着物をまとっている。
着物の丈は通常よりかなり短いし、胸元を大きく開けている。
こんな格好は相当の自信がなければ絶対できない。この人は自他ともに認める、おしゃれ上級者だ。
「名前~!こっちこっち!!」
― 名前…?
編み笠の人が、そうつぶやいた気がした。
私の名前、割とありがちなやつなんだけど、変に思えたのかな?
多分気のせいだろう。
「ちょっと待ってて~!今行く~。」
私は、先に到着した友達に手を振りその場を立ち去ろうとすると、サングラスの彼が引き留めるように質問してきた。
「おぬし、江戸の者でござるか?」
「はい、一応。」
「ご友人を待たせてるところ申し訳ないが、一つ道を尋ねたいでござる。実は、拙者たち徳川公の銅像へ参りたいのだが、道に迷ってしまったでござる。」
ああそういうことか。私は二人が変わったいでたちをしている理由が分かったような気がした。
この人たちは流行の違う地域、おそらく京(みやこ)から来ている。だから地理に不案内なのだろう。
「合コンアルか?」
詮索好きな神楽ちゃんは食い下がってくる。
「本当に違うって。今日はバイトの友達と女子会。」
「女子会のクセに、そわそわしてて怪しいネ。私、銀ちゃんに絶対内緒にするから教えてヨ。名前ちゃん、教えてプリーズ~、ヘルペスミ~。」
「…。」
神楽ちゃんは上目づかいで袖を引っ張ってくる。
ああ…これはバレてる。
万事屋に戻ったら神楽ちゃんは間違いなく銀さんに報告するだろう。
今晩帰ったらみんなに一部始終を報告するはめになる…。
口止め料を渡そうかな。
いや、それはダメだ。延々たかられることになる。
「ごめん神楽ちゃん、待ち合わせに遅れちゃうからまたね。」
私は時計をみるフリをすると、走って逃げ出した。
それから、私は電車を乗り継いで最寄りの駅についた。
夏休みの週末ということもあって街は大勢の人々でにぎわっている。
街頭ビジョンの時計を確認すると、時間には充分余裕があった。
私は待ち合わせの場所に向かって大通りを歩き始めたけど、すぐに地下街から行くべきだったと後悔した。
信号待ちの間、夕日が強くてアスファルトから熱が跳ね返ってくる。
そこで、街路樹の木陰に移動して青になるまで涼んでから再び歩き始めた。
横断歩道を渡り、待ち合わせ場所が見えてきたところだった。
二人組の男の人とすれ違いざまに物が落ちる音がした。
振り向くとお財布が地面に落ちている。
立ち去っていく男の人のズボンの後ろポケットは大きく破けていた。
「あの…、落としましたよ。」
私はすぐにお財布を拾って彼の後ろ姿へ呼びかけた。
でも、ヘッドフォンをしてるせいで私の声が耳に入っていないようだ。
しょうがないので私は小走りに彼を追い越し、前に回って呼び止めた。
「落としましたよ。」
財布を差し出すと、彼は落し物をしたのに初めて気づいたようでひどく驚いた。
「かたじけないでござる。」
落し物の主はサングラスをかけ、髪の毛を立てて三味線を背負っている。
高そうなヘッドフォンもしてるし、いかにもミュージシャンといった格好だ。
「いいえ、こちらこそ。」
連れの男性は、編み笠を深くかぶっているので顔は見えない。
足袋をはかずに、女性が着てもおかしくないような柄の着物をまとっている。
着物の丈は通常よりかなり短いし、胸元を大きく開けている。
こんな格好は相当の自信がなければ絶対できない。この人は自他ともに認める、おしゃれ上級者だ。
「名前~!こっちこっち!!」
― 名前…?
編み笠の人が、そうつぶやいた気がした。
私の名前、割とありがちなやつなんだけど、変に思えたのかな?
多分気のせいだろう。
「ちょっと待ってて~!今行く~。」
私は、先に到着した友達に手を振りその場を立ち去ろうとすると、サングラスの彼が引き留めるように質問してきた。
「おぬし、江戸の者でござるか?」
「はい、一応。」
「ご友人を待たせてるところ申し訳ないが、一つ道を尋ねたいでござる。実は、拙者たち徳川公の銅像へ参りたいのだが、道に迷ってしまったでござる。」
ああそういうことか。私は二人が変わったいでたちをしている理由が分かったような気がした。
この人たちは流行の違う地域、おそらく京(みやこ)から来ている。だから地理に不案内なのだろう。