August~another day~ 8月中旬 海水浴場
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「よかった来てくれて。ずっと言ってるんだけど、パチンコやめてくれなくて。」
「僕たち、海の家の主人が銀さんに報酬全額渡しちゃったって聞いて行方を探してたんです。こんなことだろうと思いましたよ。」
神楽ちゃんは、ため息をついた新八くんと目を合わせてうなずくと、腕まくりをして一歩前に出た。
「銀ちゃんんん!!」
銀さんは神楽ちゃんに襟首をつかまれると、強風にたなびく鯉のぼりのように宙に浮かんだまま引っ張られていった。
その日の晩、海岸で花火をした私たちは、手持ちが尽きた後も夜風が心地よかったので、浜辺でのんびりと過ごしていた。
新八くんは燃えかすの入ったバケツを脇に置き、海に向かってお通ちゃんの曲を音痴全開に絶叫する一方、神楽ちゃんは拾った流木で砂浜にお絵かきをしている。
裸足になった私は、銀さんと二人で水際を歩いていた。
「…だから~その点銀さんはトータルで勝ってるからね~。」
「ギャンブラーは誰でもトータルで勝ってるって言うんだけど。だったら競馬とかパチンコ業界成り立たないし。」
私は波に八つ当たりをするよう強く水面を蹴り、派手に水しぶきをあげた。
銀さんは、パチンコ屋を叩き出されてからチューパッドの先のついた方を分けてくれたり、やたらと媚びへつらってくる。
「もういいよ、銀さんの話聞きたくない。私、かぶき町で何言われたか知ってる?居酒屋のおじさんに呼び止められて『俺の顔見ると逃げられちゃうから口添えしてくれる?銀さん半年以上ツケためて困ってるんだよ。』なんて言われたんだよ!ここ数か月家賃滞納してるの知ってたけど、飲みもツケだったなんて…。私そこまでしておごってほしくない!」
「まあまあそんな事言わずに名前ちゃん~。」
銀さんは私がこの世界に戻ってくる直前に万馬券を当てて、半年分の家賃を払ったらしい。
それが最後の支払いと聞いて銀さんらしいなと思う私は、大分金銭感覚が麻痺しているようだ。
現にその日暮らしにも慣れてきてしまっている。
「あぶく銭に浮かれて贅沢するなんてやっぱりおかしいよ。」
気を引き締めようと反論したら銀さんから思わぬ言葉が返ってきた。
「その割には、刺身の船盛りとか伊勢海老の生け造りとか目ェキラキラさせて食ってたよな。」
「…!」
あの後私たちは、御機嫌取りをしてきた銀さんの誘いに乗って、居酒屋で海の幸を豪勢に食べまくっていたのだ。
「アレ?ああいうのはあぶく銭って言わねーの?」
「だって…あれは豆パン生活で中トロに飢えてたというか…。」
「どういうカネだか知ってておかわりしたんだよなァ~?」
訳の分からない理論で攻守逆転した銀さんは、ガシッと私の肩を抱いてニターッと笑いかけてくる。
「パ…、パチンコで稼いでくれたお金…。」
「勝った分は家賃にあてないとダメ!とか説教しといて、あの食いっぷりはねーよな~。」
ずっと下手(したて)に出てたのは最後の最後でひっくり返すためだったんだ…。
「ぎ、銀さんのおかげで豪遊でき…ました。ごちそうさまでした。」
ううう…ドS銀さんにはかなわない。
ほろよい気分の銀さんは、私の肩を抱くのを止めると両手を頭の後ろに組んで、うろ覚えのCMソングを口ずさみながら海岸をゆっくり歩いていく。
やりこめられた私が立ち止まり銀さんの後ろ姿をじっと見守っていると、お絵かきに飽きた神楽ちゃんがこっちに寄ってきた。
「銀ちゃんにいじめられたアルか?」
「そういう訳じゃないんだけど…。」
「名前ちゃん、見ててヨ。」
そう言った神楽ちゃんは助走をつけると、銀さんの頭を跳び箱代わりにして高々と飛び越えていった。
「神楽ァァァ!!」
空は雲一つない満月で、かぶき町で見られないくらい沢山の星々がきらめいている。
そんな風景の中、逃げていく神楽ちゃんと怒って追いかける銀さんの後ろ姿がやけに絵になる。
この瞬間を写真におさめたいな…。
そう思った私は、バッグを開けてある物を探した。
でも、そこにはあるはずのスマホは、なかった。
そっか、もう長いこと持ってなかったな。
翌日、私たちは久しぶりに源外さんの工房を訪れた。
こっちに戻った当初、私は源外さんの所へ毎週のように通っていた。
でもお手伝いできることはなかったので、いつの間にか銀さんから口伝えで状況を聞くようになっていたけど、異世界転送装置の完成には程遠いとのことだった。
だからといって源外さんを責めるわけにはいかない。
というのも、装置を構成する部品を作る機械を作る部品を一から源外さんが手作りしているのだ。
発明と並行してスマホ充電機の改良も続けている。
その効率は最近目覚ましい進歩を遂げたそうだけど、体を転送できるくらいエネルギーが貯まる日は、いつになるかわからない。
「嬢ちゃん、いい所に来てくれた。早速だが携帯電話のロックを解除してくれ。パスワードは俺でも解読できるが、一応了承をもらおうと思ってな。」
「僕たち、海の家の主人が銀さんに報酬全額渡しちゃったって聞いて行方を探してたんです。こんなことだろうと思いましたよ。」
神楽ちゃんは、ため息をついた新八くんと目を合わせてうなずくと、腕まくりをして一歩前に出た。
「銀ちゃんんん!!」
銀さんは神楽ちゃんに襟首をつかまれると、強風にたなびく鯉のぼりのように宙に浮かんだまま引っ張られていった。
その日の晩、海岸で花火をした私たちは、手持ちが尽きた後も夜風が心地よかったので、浜辺でのんびりと過ごしていた。
新八くんは燃えかすの入ったバケツを脇に置き、海に向かってお通ちゃんの曲を音痴全開に絶叫する一方、神楽ちゃんは拾った流木で砂浜にお絵かきをしている。
裸足になった私は、銀さんと二人で水際を歩いていた。
「…だから~その点銀さんはトータルで勝ってるからね~。」
「ギャンブラーは誰でもトータルで勝ってるって言うんだけど。だったら競馬とかパチンコ業界成り立たないし。」
私は波に八つ当たりをするよう強く水面を蹴り、派手に水しぶきをあげた。
銀さんは、パチンコ屋を叩き出されてからチューパッドの先のついた方を分けてくれたり、やたらと媚びへつらってくる。
「もういいよ、銀さんの話聞きたくない。私、かぶき町で何言われたか知ってる?居酒屋のおじさんに呼び止められて『俺の顔見ると逃げられちゃうから口添えしてくれる?銀さん半年以上ツケためて困ってるんだよ。』なんて言われたんだよ!ここ数か月家賃滞納してるの知ってたけど、飲みもツケだったなんて…。私そこまでしておごってほしくない!」
「まあまあそんな事言わずに名前ちゃん~。」
銀さんは私がこの世界に戻ってくる直前に万馬券を当てて、半年分の家賃を払ったらしい。
それが最後の支払いと聞いて銀さんらしいなと思う私は、大分金銭感覚が麻痺しているようだ。
現にその日暮らしにも慣れてきてしまっている。
「あぶく銭に浮かれて贅沢するなんてやっぱりおかしいよ。」
気を引き締めようと反論したら銀さんから思わぬ言葉が返ってきた。
「その割には、刺身の船盛りとか伊勢海老の生け造りとか目ェキラキラさせて食ってたよな。」
「…!」
あの後私たちは、御機嫌取りをしてきた銀さんの誘いに乗って、居酒屋で海の幸を豪勢に食べまくっていたのだ。
「アレ?ああいうのはあぶく銭って言わねーの?」
「だって…あれは豆パン生活で中トロに飢えてたというか…。」
「どういうカネだか知ってておかわりしたんだよなァ~?」
訳の分からない理論で攻守逆転した銀さんは、ガシッと私の肩を抱いてニターッと笑いかけてくる。
「パ…、パチンコで稼いでくれたお金…。」
「勝った分は家賃にあてないとダメ!とか説教しといて、あの食いっぷりはねーよな~。」
ずっと下手(したて)に出てたのは最後の最後でひっくり返すためだったんだ…。
「ぎ、銀さんのおかげで豪遊でき…ました。ごちそうさまでした。」
ううう…ドS銀さんにはかなわない。
ほろよい気分の銀さんは、私の肩を抱くのを止めると両手を頭の後ろに組んで、うろ覚えのCMソングを口ずさみながら海岸をゆっくり歩いていく。
やりこめられた私が立ち止まり銀さんの後ろ姿をじっと見守っていると、お絵かきに飽きた神楽ちゃんがこっちに寄ってきた。
「銀ちゃんにいじめられたアルか?」
「そういう訳じゃないんだけど…。」
「名前ちゃん、見ててヨ。」
そう言った神楽ちゃんは助走をつけると、銀さんの頭を跳び箱代わりにして高々と飛び越えていった。
「神楽ァァァ!!」
空は雲一つない満月で、かぶき町で見られないくらい沢山の星々がきらめいている。
そんな風景の中、逃げていく神楽ちゃんと怒って追いかける銀さんの後ろ姿がやけに絵になる。
この瞬間を写真におさめたいな…。
そう思った私は、バッグを開けてある物を探した。
でも、そこにはあるはずのスマホは、なかった。
そっか、もう長いこと持ってなかったな。
翌日、私たちは久しぶりに源外さんの工房を訪れた。
こっちに戻った当初、私は源外さんの所へ毎週のように通っていた。
でもお手伝いできることはなかったので、いつの間にか銀さんから口伝えで状況を聞くようになっていたけど、異世界転送装置の完成には程遠いとのことだった。
だからといって源外さんを責めるわけにはいかない。
というのも、装置を構成する部品を作る機械を作る部品を一から源外さんが手作りしているのだ。
発明と並行してスマホ充電機の改良も続けている。
その効率は最近目覚ましい進歩を遂げたそうだけど、体を転送できるくらいエネルギーが貯まる日は、いつになるかわからない。
「嬢ちゃん、いい所に来てくれた。早速だが携帯電話のロックを解除してくれ。パスワードは俺でも解読できるが、一応了承をもらおうと思ってな。」