May 5月上旬 覆面パトカー
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「釣りはいらねーよ。」
「あの…土方さん?」
「あとで連絡する。」
「!!」
一万円札のお釣りを台に置いて副長が立ち去ろうとするので、名前ちゃんは「困ります。」と言って必死に引き留める。
すぐに店長がやってきて、いらねェ、受け取る訳には参りません。の押し問答の末、副長は募金箱にお釣りを入れて店を出て行った。
覆面パトカーに戻った俺はあんぱんの袋を開きつつ、万事屋の犬が屯所に連れてきた迷い犬に、副長が嬉々としてマヨネーズを与えた事件を思い起こしていた。
先日、定食屋の主人が他界して以来、味覚の理解者がいないもんな…。あの人だってマヨの旨さを分かち合うマヨ友が欲しいのだろう。
俺は鬼の副長の抱える孤独に思いをはせた。
そして、俺はあんぱんにマヨネーズを…かけるわけねーよ。
5月○日(金曜日)
コンコン、と覆面パトカーの窓をノックされる。ノックの主は万事屋の旦那だった。
オイ、そこのストーカー警察さんよォ~この辺りを二度とうろつくんじゃねェ。
それとニコチンマヨ野郎に伝えろ、うちの名前ちゃんにゲテモノ食わせようなんてこの俺が許さねェ。と鋭い目ですごまれたので急発進して難を逃れる。
旦那に知られた以上、捜査はこれまでだ。
気づけば監視活動は十一日目に入ってるし、見守り任務は打ち切ろう。
~追記~
屯所に戻るやいなや、副長の乗る車に押し込まれ高級な店に連れていかれた。
俺は、副長との縁続きを企む財閥の一族が開いたパーティーに、数合わせで呼ばれたのだった。
副長は、見合い話やこの手の誘いは基本、松平のとっつあんの所で止めてもらってるけど、時々は顔を立てるために応じている、と帰りの車の中で話してくれた。
そして、真選組が権力争いに巻き込まれないよう、幕府や豪商の娘とは交際しないときっぱり言い切った。
とは言え、副長だって健康な男だ。
時には合コンで気の合った娘とデートしたり、かつて付き合っていた時期もあった。
俺たちは、副長とミツバさんとの涙なしでは語れない最期の数日に立ち会っている。
だからこそ、副長がどこぞのお嬢さんと一緒に歩いていると、ようやく新しい一歩を踏み出したんだ…、深い心の傷を癒してくれる人が現れたんだ、と隊内で副長の恋を応援するのが通例になっていた。
でも、そんな幸せは長く続かない。
食事がアレだし、そう遠くないうちに「私と仕事、どっちが大事?」「ただ待つだけなんて辛すぎる。」と女性の方から一方的に別れを告げて去っていく。
この繰り返しで副長はすっかり懲りてしまったのか、近頃はいい話をめっきり聞かない。
ミツバさん以上に愛せる女性がいないってのもあるけど、あの人に恋人ができない原因は仕事最優先の生活にあると思う。あと、ひたすら待てる女性じゃないと副長の彼女=将来の俺たちの姐さんは務まらない。
副長…幸せになってください。
俺も、頑張ります。
以上
酔っぱらったり夜書いた手紙は一晩明けて読み直せ、と古来から言われている。
どうせこの書類は沖田隊長も見るんだし、ミツバさんの名を出す事は二人の癒えてない傷に塩を塗り込むようなもんだ。
俺は報告書を読み直し「追記」の部分を焼却した上で提出しに行った。
半日後、俺は副長室に呼び出された。
明らかに副長はピリピリしている。
ここで下手に言い訳をすると逆効果だ。先に謝っておくしかない。
「す、すいませんでした!俺、今回は報告書に『僕はあの子の笑顔が見たかったんだなあと思いました。』とか書いてな…
俺は土下座し、頭を畳に擦りつけて謝罪した。
「テメーを呼び出したのはそんなチンケな事じゃねェ。」
「?」
恐る恐る頭を上げると副長が灰皿を引き寄せていたので俺は姿勢を正した。
それと調子を合わせるように副長はタバコをもみ消し、一呼吸おいてから口を開いた。
「人斬り万斉が、江戸に潜伏している。」
その名を聞いて俺の全身がぞわっとした。
「言いてェ事は、わかるな?」
「…もちろんです。」
俺にとどめを刺さなかったことを後悔させてやる。
サングラスをかけた男の姿が脳裏によみがえってきた。
2016年4月27日UP
「あの…土方さん?」
「あとで連絡する。」
「!!」
一万円札のお釣りを台に置いて副長が立ち去ろうとするので、名前ちゃんは「困ります。」と言って必死に引き留める。
すぐに店長がやってきて、いらねェ、受け取る訳には参りません。の押し問答の末、副長は募金箱にお釣りを入れて店を出て行った。
覆面パトカーに戻った俺はあんぱんの袋を開きつつ、万事屋の犬が屯所に連れてきた迷い犬に、副長が嬉々としてマヨネーズを与えた事件を思い起こしていた。
先日、定食屋の主人が他界して以来、味覚の理解者がいないもんな…。あの人だってマヨの旨さを分かち合うマヨ友が欲しいのだろう。
俺は鬼の副長の抱える孤独に思いをはせた。
そして、俺はあんぱんにマヨネーズを…かけるわけねーよ。
5月○日(金曜日)
コンコン、と覆面パトカーの窓をノックされる。ノックの主は万事屋の旦那だった。
オイ、そこのストーカー警察さんよォ~この辺りを二度とうろつくんじゃねェ。
それとニコチンマヨ野郎に伝えろ、うちの名前ちゃんにゲテモノ食わせようなんてこの俺が許さねェ。と鋭い目ですごまれたので急発進して難を逃れる。
旦那に知られた以上、捜査はこれまでだ。
気づけば監視活動は十一日目に入ってるし、見守り任務は打ち切ろう。
~追記~
屯所に戻るやいなや、副長の乗る車に押し込まれ高級な店に連れていかれた。
俺は、副長との縁続きを企む財閥の一族が開いたパーティーに、数合わせで呼ばれたのだった。
副長は、見合い話やこの手の誘いは基本、松平のとっつあんの所で止めてもらってるけど、時々は顔を立てるために応じている、と帰りの車の中で話してくれた。
そして、真選組が権力争いに巻き込まれないよう、幕府や豪商の娘とは交際しないときっぱり言い切った。
とは言え、副長だって健康な男だ。
時には合コンで気の合った娘とデートしたり、かつて付き合っていた時期もあった。
俺たちは、副長とミツバさんとの涙なしでは語れない最期の数日に立ち会っている。
だからこそ、副長がどこぞのお嬢さんと一緒に歩いていると、ようやく新しい一歩を踏み出したんだ…、深い心の傷を癒してくれる人が現れたんだ、と隊内で副長の恋を応援するのが通例になっていた。
でも、そんな幸せは長く続かない。
食事がアレだし、そう遠くないうちに「私と仕事、どっちが大事?」「ただ待つだけなんて辛すぎる。」と女性の方から一方的に別れを告げて去っていく。
この繰り返しで副長はすっかり懲りてしまったのか、近頃はいい話をめっきり聞かない。
ミツバさん以上に愛せる女性がいないってのもあるけど、あの人に恋人ができない原因は仕事最優先の生活にあると思う。あと、ひたすら待てる女性じゃないと副長の彼女=将来の俺たちの姐さんは務まらない。
副長…幸せになってください。
俺も、頑張ります。
以上
酔っぱらったり夜書いた手紙は一晩明けて読み直せ、と古来から言われている。
どうせこの書類は沖田隊長も見るんだし、ミツバさんの名を出す事は二人の癒えてない傷に塩を塗り込むようなもんだ。
俺は報告書を読み直し「追記」の部分を焼却した上で提出しに行った。
半日後、俺は副長室に呼び出された。
明らかに副長はピリピリしている。
ここで下手に言い訳をすると逆効果だ。先に謝っておくしかない。
「す、すいませんでした!俺、今回は報告書に『僕はあの子の笑顔が見たかったんだなあと思いました。』とか書いてな…
俺は土下座し、頭を畳に擦りつけて謝罪した。
「テメーを呼び出したのはそんなチンケな事じゃねェ。」
「?」
恐る恐る頭を上げると副長が灰皿を引き寄せていたので俺は姿勢を正した。
それと調子を合わせるように副長はタバコをもみ消し、一呼吸おいてから口を開いた。
「人斬り万斉が、江戸に潜伏している。」
その名を聞いて俺の全身がぞわっとした。
「言いてェ事は、わかるな?」
「…もちろんです。」
俺にとどめを刺さなかったことを後悔させてやる。
サングラスをかけた男の姿が脳裏によみがえってきた。
2016年4月27日UP