March Part2 3月29日 日没 バイト先
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どれくらい経ったのだろう。
頭に軽く手を置かれた。
怖い。
何をされるのだろう。
どこに連れていかれるのだろう。
怖い。
今度は肩をぽんぽんと叩かれた。
恐る恐る顔を上げると、真選組の制服を着たびしょ濡れの銀さんが目の前に立っていた。
「銀さん…?」
「○○。」
「○○、○○○○○。」
― えっ?
「○○○○…○。」
銀さんが口を動かしている。
「○○?」
でも、何を言ってるのか、わからない。
銀さんは首をかしげたけど、私の両耳を手でふさいで「あー、あー。」と発音してみろって言ってるように見えた。
「あー、あー」と発声して、自分の声を確かめる。
言葉が体の中で反響している。
繰り返しているうちに、段々音が聞こえるようになってきた。
どうやら爆発音で耳がおかしくなってたみたいだ。
ようやく私が「うん。」とうなずいたので、銀さんは私の両耳から濡れてひんやりした手をはずした。
私、助かったんだ…。
多分、さっきは、
ケガしてねーか?とか
大丈夫か?とか
待たせたな、とか
声をかけてくれてたのだろう。
でも、何でもいい、銀さんが来てくれただけでいい。
顔を上げると、銀さんはおどけた様子で騎士が主人にするように、ひざまずいて私の手をとったけど、すぐに内出血で赤黒くなった手首に気づき、ものすごくすまなそうな顔になった。
私は銀さんのせいじゃないと言いたくて首を横に振った。
銀さんの口からは、いつもの調子で言葉が飛び出す。
「水もしたたるいい男、参上つかまつる。」
「ほんとだ。びしょ濡れだね。」
私が精一杯笑うと銀さんは、しずくがしたたってる髪の毛をかき上げた。
普段見たことのないおでこが現れる。
真選組の隊服を着て髪をオールバックにした銀さん。
格好は全然違うけど、意外と似合う。
でも、どうして警察の服を着ているの?
「その服…。」
「あー、これにはちょっとしたワケがあってだな。」
銀さんは口ごもった。
耳が正常になるにしたがって、壊れたドアの外から大きな水の音が聞こえてくる。
「?」
「ああ、アレ?スプリンクラー壊した。」
「…仕事は?」
「新八と神楽置いてきたから問題ねーよ。とはいえこの騒ぎじゃ映画館ガラガラだろうな。」
そっか。
そうだよね。
これでやっと、万事屋に帰れるんだ。
いつもみたいにみんなで笑いあってパフェを食べたら銭湯に行こう。
今日の事は全部忘れてしまおう。
段々と、殺伐とした非常事態が日常に変わっていく。
変わっていく…。
そうじゃない。
銀さんが危険を冒して戦って、私の日常を取り戻してくれたんだ。
どうしてこの人はこんなにやさしくて強いんだろう。
私にやさしくしてくれるんだろう…。
「銀さん」
「ん?」
「どうして来てくれたの?」
私は助けに来てくれてありがとう、って言うつもりだったのに、口からはなぜか違う言葉が漏れてきた。
「『名前ちゃんは俺が護る』って言ったろ。」
「銀さん。」
「何だ?」
「なんで銀さんはモテないんだろう…。」
私はこんな時に何を言ってるんだろう?
「名前?」
「銀さんがモテないのはおかしいよ!」
今まで黙っていた分、あらゆる思いがこみあげてきて、うまく言葉にならない。
「何?いきなりどーしちゃった?頭打ってねーか?」
みるみる私の目には涙がたまって視界がぼやけてきた。
「おかしくないよ、っていうかおかしい…。」
気が緩んだのか、涙がつーっと流れてくる。
「オイ、大丈夫か?」
銀さんは涙をぬぐって頭をなでてくれる。
「だって、命がけで体張って守ってくれるんだよ。」
「ソイツは俺が勝手にしちまった約束だ。」
そんな、さも当たり前のように言わないでよ。私は…、
「危ないのに、びしょ濡れになって助けに来てくれたら…誰だって、私だって好…
頭に軽く手を置かれた。
怖い。
何をされるのだろう。
どこに連れていかれるのだろう。
怖い。
今度は肩をぽんぽんと叩かれた。
恐る恐る顔を上げると、真選組の制服を着たびしょ濡れの銀さんが目の前に立っていた。
「銀さん…?」
「○○。」
「○○、○○○○○。」
― えっ?
「○○○○…○。」
銀さんが口を動かしている。
「○○?」
でも、何を言ってるのか、わからない。
銀さんは首をかしげたけど、私の両耳を手でふさいで「あー、あー。」と発音してみろって言ってるように見えた。
「あー、あー」と発声して、自分の声を確かめる。
言葉が体の中で反響している。
繰り返しているうちに、段々音が聞こえるようになってきた。
どうやら爆発音で耳がおかしくなってたみたいだ。
ようやく私が「うん。」とうなずいたので、銀さんは私の両耳から濡れてひんやりした手をはずした。
私、助かったんだ…。
多分、さっきは、
ケガしてねーか?とか
大丈夫か?とか
待たせたな、とか
声をかけてくれてたのだろう。
でも、何でもいい、銀さんが来てくれただけでいい。
顔を上げると、銀さんはおどけた様子で騎士が主人にするように、ひざまずいて私の手をとったけど、すぐに内出血で赤黒くなった手首に気づき、ものすごくすまなそうな顔になった。
私は銀さんのせいじゃないと言いたくて首を横に振った。
銀さんの口からは、いつもの調子で言葉が飛び出す。
「水もしたたるいい男、参上つかまつる。」
「ほんとだ。びしょ濡れだね。」
私が精一杯笑うと銀さんは、しずくがしたたってる髪の毛をかき上げた。
普段見たことのないおでこが現れる。
真選組の隊服を着て髪をオールバックにした銀さん。
格好は全然違うけど、意外と似合う。
でも、どうして警察の服を着ているの?
「その服…。」
「あー、これにはちょっとしたワケがあってだな。」
銀さんは口ごもった。
耳が正常になるにしたがって、壊れたドアの外から大きな水の音が聞こえてくる。
「?」
「ああ、アレ?スプリンクラー壊した。」
「…仕事は?」
「新八と神楽置いてきたから問題ねーよ。とはいえこの騒ぎじゃ映画館ガラガラだろうな。」
そっか。
そうだよね。
これでやっと、万事屋に帰れるんだ。
いつもみたいにみんなで笑いあってパフェを食べたら銭湯に行こう。
今日の事は全部忘れてしまおう。
段々と、殺伐とした非常事態が日常に変わっていく。
変わっていく…。
そうじゃない。
銀さんが危険を冒して戦って、私の日常を取り戻してくれたんだ。
どうしてこの人はこんなにやさしくて強いんだろう。
私にやさしくしてくれるんだろう…。
「銀さん」
「ん?」
「どうして来てくれたの?」
私は助けに来てくれてありがとう、って言うつもりだったのに、口からはなぜか違う言葉が漏れてきた。
「『名前ちゃんは俺が護る』って言ったろ。」
「銀さん。」
「何だ?」
「なんで銀さんはモテないんだろう…。」
私はこんな時に何を言ってるんだろう?
「名前?」
「銀さんがモテないのはおかしいよ!」
今まで黙っていた分、あらゆる思いがこみあげてきて、うまく言葉にならない。
「何?いきなりどーしちゃった?頭打ってねーか?」
みるみる私の目には涙がたまって視界がぼやけてきた。
「おかしくないよ、っていうかおかしい…。」
気が緩んだのか、涙がつーっと流れてくる。
「オイ、大丈夫か?」
銀さんは涙をぬぐって頭をなでてくれる。
「だって、命がけで体張って守ってくれるんだよ。」
「ソイツは俺が勝手にしちまった約束だ。」
そんな、さも当たり前のように言わないでよ。私は…、
「危ないのに、びしょ濡れになって助けに来てくれたら…誰だって、私だって好…