March 3月29日 昼下がり バイト先
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奴らは自分の思い通りに交渉がいかないとすぐに電話を切る。
そして、お前が脱走に手間取ったから立てこもる羽目になったんだ、などと仲間内で小競り合い、キレると相手にガラスのコップを投げつけたりしている。
リーダーは電話で交渉している浪人風の男らしい。
でも、この人たちは、お互いを信用していない、っていうか自分以外誰も信用してない。
私から見える範囲でも、陶器やガラスの破片があたりに散らばり、一時間前からは想像もできないぐらい店は汚されている。
どこかで強奪してきたタバコで一服している天人は、床に吸い殻を落とすと足でグイッともみ消した。
犯人達と真選組が交渉を重ねているうちに、頭上がうるさくてたまらなくなってきた。
監視役で隣に座る天人が携帯電話でテレビを眺めてるのでチラ見すると、どのテレビ局に変えても、人質事件の派手なテロップと共に、空撮でこのビルが映っている。
どうやら上空で何台もヘリが飛んでいるようだ。
向こうの声が聞こえないのか、リーダーの男は同じ問いを繰り返していたけど、とうとう
「俺らは見世物じゃねーんだよ!!ヘリを追い払え!!」
と受話器に向かって叫び、要求に従わないなら、コイツの指を切断すると捨て台詞を吐きオーナーさんを電話口に出して命乞いをさせた。
ヘリの爆音のせいで犯人達はかなりイライラしている。
奴らは、人として超えちゃいけないラインを軽々飛び越えてきた人たちだ。
本当に指を切り落とされるかもしれない…。
間もなくヘリは飛び去って行った。
金塊を入れたスーツケースが銀行の本店から出発し、宇宙船の手配などの交渉が思い通りに運んでいるのか、犯人達は次第にくつろぎ始めていた。
見張り番と交代で、店のパンやハム、ジュースやケーキを業務用冷蔵庫と棚から勝手に取り出して、好き放題にむさぼっている。
様子を見かねたらしいオーナーさんが、何か作りましょうか?と恐る恐る申し出たけど、包丁や熱湯を扱うので却下された。
ひとしきり食べて満足すると、タバコを吸ってる者もいる。
でも、全員刀は手元に置いてあるし、私の横には監視役が常についている。
あれから何回も電話がかかってくる度、私たち人質は生存確認のため代わる代わる電話に出される状態が続いていた。
励ましてくれる近藤さんに精一杯頑張って返事しようとすると、ど突かれたり首に刃物を押し当てられて脅されるのでまともな言葉が出せない。
犯人達は電話口で私が悲鳴をあげるのを楽しんでいるようだったけど、疲れがひどくなるにつれ、私は期待通りに声をあげられなくなっていった。
むなしくなるので壁の時計を見るのを止めた頃、リーダーの男が金塊の準備ができたと得意気に叫び、周囲はどよめき立ち、私にもかすかな希望が湧いてきた。
「オイ、立て!」
すると、遠く離れていたところに座らされていたオーナーさんが引っ立てられていく。
「私は後で構いません!名前ちゃんを先に助けてあげてください!」
「テメーに指図されるいわれはねーよ!」
抗議したオーナーさんは、顔を殴られて床にうずくまった。
「出ろ!!出ねーと女の命はねーぞ。」
オーナーさんは、男性の私は後でいい、うちのバイトの女の子を先に解放してあげてくださいと、すがりついたところ、天人に蹴りを何発も入れられうめき声をあげた。
「名前…ちゃん…気をしっかり…ぅうっ
顔を腫らしてぐったりしたオーナーさんが、リーダーの男と天人に抱えられて裏口へ連れていかれるのを黙って見ていると、背の高い男が近づいてきた。
「解放の順番は、女子供が先だって思い込んでただろ~。俺達はそんなに甘くねーよ。」
私をバカにしたように、せせら笑っている。
「真選組局長の縁者を手放すワケにはいかねェ。一緒に宇宙船に乗ってもらう。」
あの時とっさに近藤さん、と口走ったのはまずかったんだ…。
「それとアンタには人質以外の価値がある、逃亡資金だ。」
「?」
「女は生きた商品だ、カネに困ったらいつでも売れる。アンタはなかなかの上玉だから、さぞかしいい値がつくだろうよ。」
「そんな…。」
「コイツはあの組織へのいい貢物になりますぜ。侍の国の人間に興味を示してる夜兎の若い団長がいるって例のヤローから聞きやした。」
裏口から戻って来た天人が口をはさんだ。
「ソイツは確かか?なら好都合だ。団長とやらに売りとばそう。」
地球の外に出たら、ここにも、元の世界にも、戻れなくなる。
お父さんにもお母さんにも、銀さんたちにも会えなくなる。
そんなの嫌だ。
そして、お前が脱走に手間取ったから立てこもる羽目になったんだ、などと仲間内で小競り合い、キレると相手にガラスのコップを投げつけたりしている。
リーダーは電話で交渉している浪人風の男らしい。
でも、この人たちは、お互いを信用していない、っていうか自分以外誰も信用してない。
私から見える範囲でも、陶器やガラスの破片があたりに散らばり、一時間前からは想像もできないぐらい店は汚されている。
どこかで強奪してきたタバコで一服している天人は、床に吸い殻を落とすと足でグイッともみ消した。
犯人達と真選組が交渉を重ねているうちに、頭上がうるさくてたまらなくなってきた。
監視役で隣に座る天人が携帯電話でテレビを眺めてるのでチラ見すると、どのテレビ局に変えても、人質事件の派手なテロップと共に、空撮でこのビルが映っている。
どうやら上空で何台もヘリが飛んでいるようだ。
向こうの声が聞こえないのか、リーダーの男は同じ問いを繰り返していたけど、とうとう
「俺らは見世物じゃねーんだよ!!ヘリを追い払え!!」
と受話器に向かって叫び、要求に従わないなら、コイツの指を切断すると捨て台詞を吐きオーナーさんを電話口に出して命乞いをさせた。
ヘリの爆音のせいで犯人達はかなりイライラしている。
奴らは、人として超えちゃいけないラインを軽々飛び越えてきた人たちだ。
本当に指を切り落とされるかもしれない…。
間もなくヘリは飛び去って行った。
金塊を入れたスーツケースが銀行の本店から出発し、宇宙船の手配などの交渉が思い通りに運んでいるのか、犯人達は次第にくつろぎ始めていた。
見張り番と交代で、店のパンやハム、ジュースやケーキを業務用冷蔵庫と棚から勝手に取り出して、好き放題にむさぼっている。
様子を見かねたらしいオーナーさんが、何か作りましょうか?と恐る恐る申し出たけど、包丁や熱湯を扱うので却下された。
ひとしきり食べて満足すると、タバコを吸ってる者もいる。
でも、全員刀は手元に置いてあるし、私の横には監視役が常についている。
あれから何回も電話がかかってくる度、私たち人質は生存確認のため代わる代わる電話に出される状態が続いていた。
励ましてくれる近藤さんに精一杯頑張って返事しようとすると、ど突かれたり首に刃物を押し当てられて脅されるのでまともな言葉が出せない。
犯人達は電話口で私が悲鳴をあげるのを楽しんでいるようだったけど、疲れがひどくなるにつれ、私は期待通りに声をあげられなくなっていった。
むなしくなるので壁の時計を見るのを止めた頃、リーダーの男が金塊の準備ができたと得意気に叫び、周囲はどよめき立ち、私にもかすかな希望が湧いてきた。
「オイ、立て!」
すると、遠く離れていたところに座らされていたオーナーさんが引っ立てられていく。
「私は後で構いません!名前ちゃんを先に助けてあげてください!」
「テメーに指図されるいわれはねーよ!」
抗議したオーナーさんは、顔を殴られて床にうずくまった。
「出ろ!!出ねーと女の命はねーぞ。」
オーナーさんは、男性の私は後でいい、うちのバイトの女の子を先に解放してあげてくださいと、すがりついたところ、天人に蹴りを何発も入れられうめき声をあげた。
「名前…ちゃん…気をしっかり…ぅうっ
顔を腫らしてぐったりしたオーナーさんが、リーダーの男と天人に抱えられて裏口へ連れていかれるのを黙って見ていると、背の高い男が近づいてきた。
「解放の順番は、女子供が先だって思い込んでただろ~。俺達はそんなに甘くねーよ。」
私をバカにしたように、せせら笑っている。
「真選組局長の縁者を手放すワケにはいかねェ。一緒に宇宙船に乗ってもらう。」
あの時とっさに近藤さん、と口走ったのはまずかったんだ…。
「それとアンタには人質以外の価値がある、逃亡資金だ。」
「?」
「女は生きた商品だ、カネに困ったらいつでも売れる。アンタはなかなかの上玉だから、さぞかしいい値がつくだろうよ。」
「そんな…。」
「コイツはあの組織へのいい貢物になりますぜ。侍の国の人間に興味を示してる夜兎の若い団長がいるって例のヤローから聞きやした。」
裏口から戻って来た天人が口をはさんだ。
「ソイツは確かか?なら好都合だ。団長とやらに売りとばそう。」
地球の外に出たら、ここにも、元の世界にも、戻れなくなる。
お父さんにもお母さんにも、銀さんたちにも会えなくなる。
そんなの嫌だ。