プロローグ 11月8日 夜 スナック「すまいる」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「キレてるのはそっちでしょ。言っとくけど、なまけ者は神様になれないわ、この私が認めない。」
「ウチの前に愛犬捨ててったテメーに言われる筋合いはねーよ。」
私はケンカ交じりの会話に介入するわけにもいかず、ポッキーをかじりながら二人をぼんやり眺めていた。
巫女って口数少なめで物静かなイメージだったんだけど、歯に衣着せないっていうかサバサバしてるっていうか、阿音さんはとにかく強い。
あーだこーだ言い合った後、銀さんは下手(したて)に出た方がいいと判断したのか、急に猫なで声になった。
「あのさ~、阿音ちゃん~。」
「何よ、急に気持ち悪い。」
「一つ確認しておきたいんだけどさ~、願いが成就するっておさい銭の額と関係あんの?」
― !
この質問は、私が聞きたくても聞けなかったことだ。
実をいうと、さっき奉納したおさい銭は、あの日よりはるかに少ない。
神様は、誰からも平等に願いを聞き届けてくださる存在、のはずだ。
でも、御守りや祈祷料は数百円から数万円までランクがあるし、高い方が御利益ありそうな気もしないでもない。
さすがに不謹慎だから聞けずにいたんだけど、実際のところはどうなんだろう。
「はァ?何言ってんの?」
阿音さんは、せせら笑った。
「そんなんなら金持ちや時の権力者がやりたい放題じゃない。お金で神様をコントロールしようって発想が甘いっての。ばちが当たるわよ。」
「そっか~、そうだよな。そうだよな!」
銀さんは胸をなでおろしたようだった。
どうやら、願いの成就は金額と関係ないらしい。
「ってことは、この前帰れたのは強く願う気持ちが通じたってことなんですね。今日は気持ちが足りなかったのかな。」
「別世界への移動は、真剣に願ったくらいで叶うもんじゃないわ。そりゃ、私だって借金のない世界に行きたいな~って思った事もあるけど、行けたためしはないわよ。」
私の何気ない感想に阿音さんから容赦のない回答が返ってきた。
「でも、どうしてここに来ちゃったんだろう…。私、みんなに会いたいとか、こっちに来たいとか、お願いしたわけでもないのに。」
「ないないない。俺が??それは絶対ない!!ある!!ある!!アレ??」
まごついた銀さんは手をすべらせて、グラスを派手に倒してしまった。
テーブルが一気に水浸しになって、端からボタボタとウーロン茶がしたたり落ちる。
私の服にも少しかかってしまった。
「すみません、おしぼりください~。」
「イヤイヤイヤ名前さんは悪くないからね~。そっかー。困っちゃったよね。」
引きつった笑いをしてる銀さんとは、会話が微妙にずれている。
「銀さん、『すまいる』に来てから変だよ。もしかして熱あるんじゃない?」
「あるある…。アレ?イヤイヤイヤ俺熱ねーよ。」
問題ないと銀さんは強調したけど、阿音さんは黒服さんに体温計を持ってくるよう頼んだ。
テーブルがキレイになってから、私たちは元の話題に戻る。
銀さんは以前、宮司さんを訪ねた日のことを聞かせてくれた。
「…って代々伝わってるっーワケだ。肝心の絵巻は燃えちまったから、俺は直接見てねーんだけどよ。」
「あの一族、代々女関係はだらしないけど本業は真面目で優秀な人たちだから、おっさんは嘘をついていないし、絵巻が描かれた時代に往来のメカニズムが解明できなかったって結論も信用していいと思う。あら、これ前も話したわよね?」
「アレ?そうだっけ?」
「名字さんがいなくなってから、血相変えて会いに来たじゃない。」
「えっ何?俺知らねーよ~人違いじゃね?っーか、そんなのイチイチ覚えてねーし。」
銀さんはぶっきらぼうに、しらばっくれてるけど、私の行方を気にしてくれてたんだ。
「巫女の立場から言わせてもらうけど、あの神社におまつりされてる神様と、名字さんに起きた超常現象は関係ないと思ってる。あの御方がそんな事をなさるはずはない。」
「だとしたら一体何が原因なんだ?」
「さあ…、私にもわからない。」
えっ?
阿音さんは専門家じゃないの?
「ウチの前に愛犬捨ててったテメーに言われる筋合いはねーよ。」
私はケンカ交じりの会話に介入するわけにもいかず、ポッキーをかじりながら二人をぼんやり眺めていた。
巫女って口数少なめで物静かなイメージだったんだけど、歯に衣着せないっていうかサバサバしてるっていうか、阿音さんはとにかく強い。
あーだこーだ言い合った後、銀さんは下手(したて)に出た方がいいと判断したのか、急に猫なで声になった。
「あのさ~、阿音ちゃん~。」
「何よ、急に気持ち悪い。」
「一つ確認しておきたいんだけどさ~、願いが成就するっておさい銭の額と関係あんの?」
― !
この質問は、私が聞きたくても聞けなかったことだ。
実をいうと、さっき奉納したおさい銭は、あの日よりはるかに少ない。
神様は、誰からも平等に願いを聞き届けてくださる存在、のはずだ。
でも、御守りや祈祷料は数百円から数万円までランクがあるし、高い方が御利益ありそうな気もしないでもない。
さすがに不謹慎だから聞けずにいたんだけど、実際のところはどうなんだろう。
「はァ?何言ってんの?」
阿音さんは、せせら笑った。
「そんなんなら金持ちや時の権力者がやりたい放題じゃない。お金で神様をコントロールしようって発想が甘いっての。ばちが当たるわよ。」
「そっか~、そうだよな。そうだよな!」
銀さんは胸をなでおろしたようだった。
どうやら、願いの成就は金額と関係ないらしい。
「ってことは、この前帰れたのは強く願う気持ちが通じたってことなんですね。今日は気持ちが足りなかったのかな。」
「別世界への移動は、真剣に願ったくらいで叶うもんじゃないわ。そりゃ、私だって借金のない世界に行きたいな~って思った事もあるけど、行けたためしはないわよ。」
私の何気ない感想に阿音さんから容赦のない回答が返ってきた。
「でも、どうしてここに来ちゃったんだろう…。私、みんなに会いたいとか、こっちに来たいとか、お願いしたわけでもないのに。」
「ないないない。俺が??それは絶対ない!!ある!!ある!!アレ??」
まごついた銀さんは手をすべらせて、グラスを派手に倒してしまった。
テーブルが一気に水浸しになって、端からボタボタとウーロン茶がしたたり落ちる。
私の服にも少しかかってしまった。
「すみません、おしぼりください~。」
「イヤイヤイヤ名前さんは悪くないからね~。そっかー。困っちゃったよね。」
引きつった笑いをしてる銀さんとは、会話が微妙にずれている。
「銀さん、『すまいる』に来てから変だよ。もしかして熱あるんじゃない?」
「あるある…。アレ?イヤイヤイヤ俺熱ねーよ。」
問題ないと銀さんは強調したけど、阿音さんは黒服さんに体温計を持ってくるよう頼んだ。
テーブルがキレイになってから、私たちは元の話題に戻る。
銀さんは以前、宮司さんを訪ねた日のことを聞かせてくれた。
「…って代々伝わってるっーワケだ。肝心の絵巻は燃えちまったから、俺は直接見てねーんだけどよ。」
「あの一族、代々女関係はだらしないけど本業は真面目で優秀な人たちだから、おっさんは嘘をついていないし、絵巻が描かれた時代に往来のメカニズムが解明できなかったって結論も信用していいと思う。あら、これ前も話したわよね?」
「アレ?そうだっけ?」
「名字さんがいなくなってから、血相変えて会いに来たじゃない。」
「えっ何?俺知らねーよ~人違いじゃね?っーか、そんなのイチイチ覚えてねーし。」
銀さんはぶっきらぼうに、しらばっくれてるけど、私の行方を気にしてくれてたんだ。
「巫女の立場から言わせてもらうけど、あの神社におまつりされてる神様と、名字さんに起きた超常現象は関係ないと思ってる。あの御方がそんな事をなさるはずはない。」
「だとしたら一体何が原因なんだ?」
「さあ…、私にもわからない。」
えっ?
阿音さんは専門家じゃないの?