January 1月31日 夜 スナック「すまいる」
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「お妙さんが来るまでよろしくお願いします。」
あいさつを一通り終えた彼女は、慣れた手つきでお酒を作っていく。俺は帰りの運転が待っているので我慢だ。
「名前さん…と言いやしたっけ。アンタ、どちらの故郷(くに)のご出身で?」
乾き物の皿を空にしてグラスを手に取った沖田隊長は唐突に質問した。
「国…?国ですか…。」
彼女は戸惑っている。落語好きが高じて古風な表現を多用する沖田隊長の問いかけが、とっさに理解できないようだ。
「よせ総悟。名前ちゃんは記憶喪失で全部忘れちまってんだ。」
すかさず局長が割って入る。
「っーことは、頭の中すっからかんなんですかィ?ソイツはかわいそうだ。」
軽口はいつものことだけど、俺にはそれだけじゃないように思える。
多分、沖田隊長は名前ちゃんにいい印象を持っていない。
「すっからかんって、やだな~沖田さん。近藤さんが江戸の事を親切に教えてくれるおかげで、これでも頭の中スカスカぐらいに詰まってきてるんですよ。」
彼女はうまく切り返した。
「名前ちゃんは記憶力が抜群でな、乾いたスポンジが水を吸収するように覚えていくんだよ。」
「それは近藤先生の教え方がお上手だからですよ。」
「こりゃ一本取られたな。ハハハ。」
「フフフ。」
二人は顔を見合わせると、笑った。
何この雰囲気?イラッとくるんだけど。
「総悟、こりゃ俺達いる意味ねーな。」
「じゃ、近藤さん。これで失礼しやす。」
二人も聞いてらんねーって感じで立ち上がった。
「トシ~、総悟~。お妙さんが来るまで居てくんない?お願い~。」
局長がしきりに頼むので副長と沖田隊長はしょうがなく座り直した。
「それでは、近藤先生の授業を始めまーす。」
「はい!」
仕切り直して、みんなで話が出来るのかと思いきや局長は彼女を独り占めだ。
「だりィ。」
「姐御が来るまでの辛抱ですぜ。」
副長と沖田隊長も拍子抜けだ。
っーか副長とくっつける作戦は、見込み違いだったのか。
結局テーブルは名前ちゃんと局長、俺達三人に分かれてしまった。
「どうした総悟?今日はやけに大人しいな。得体の知れねェ化けモンでもみつけたのか?」
沖田隊長の厳しい視線が気になったのか、副長が声をかけた。
「ここには化粧でツラ変えちまう妖怪がうじゃうじゃいまさァ。あの娘、今のところ尻尾は出てねーようですぜ。」
「女狐を演じるにはまだまだ役不足だろ。近藤さんの姪っ子ぐらいが関の山だ。」
「さァ、お手並み拝見ってことで。」
彼女の方を見たまま沖田隊長は返事をした。
去年、俺は報告書で、攘夷浪士と名前ちゃんは無関係だと結論を出した。
でも沖田隊長は依然、危険人物とみなしているように思える。
俺が見落とした重大な情報をつかんでいるのか?
団子屋で一体何があったんだ?
そんな俺達とは裏腹に、マンツーマンの授業を続ける二人は、江戸の名所解説で盛り上がっている。
「そうなんですか、広い公園なんですね~。」
「徳川公の銅像が待ち合わせのスポットと覚えておくように。俺もいつかお妙さんと…
得意気に講義する局長に、彼女は笑顔で相づちをうっている。このペースでいけば、ヘタな地元民より江戸に詳しくなってしまうだろう。
興味深く会話を聴いていると仕事の電話がケータイにかかってきたので俺は席をはずした。
通話を終えて戻ってくると、本日の「授業」が終わり、全員は「お通語」で話すゲームを始めている。
副長と沖田隊長は「死ね沖田」「死ね土方」を連発する一方、名前ちゃんは失敗しまくって局長にからかわれている。
裏表のない性格の二人は、恋の橋渡しやノルマ営業と関係なくすっかり親しくなったようだ。
なんだよ~、俺だって任務とはいえデートした仲なんだぞ。
局長と仲良くしているとちょっと嫉妬しちゃうな。
端に座ったまま「お通語」ゲームを聴いていると、キリのいい所で局長が席を立ち名前ちゃんの隣に座らせてくれた。
「いいんですか?」
「友人の団らんを邪魔するほどヤボじゃないさ。」
俺への気遣いかと思いきや局長は出入口をチラチラ見ている。姐さんが客を見送りに行ったのでスタンバイを始めたようだ。
「この前は、お別れのあいさつが中途半端ですみませんでした。」
名前ちゃんはいちいち律儀で礼儀正しい。
「全然気にしなくていいよ。旦那はああいうお人だから、俺慣れっこだし。」
「あのメガネ、カワイイってよく褒められるし、とても気に入ってます。あの…お礼といっちゃなんですけど、私のできる範囲なら何でも言ってください。」
笑顔の彼女は心から申し出てくれている。またとないチャンスを逃しちゃいけない。この際、勇気を出して申し込んでみよう。
「俺、名前ちゃんに合コンの幹事をお願いしたいんだけど。」
あいさつを一通り終えた彼女は、慣れた手つきでお酒を作っていく。俺は帰りの運転が待っているので我慢だ。
「名前さん…と言いやしたっけ。アンタ、どちらの故郷(くに)のご出身で?」
乾き物の皿を空にしてグラスを手に取った沖田隊長は唐突に質問した。
「国…?国ですか…。」
彼女は戸惑っている。落語好きが高じて古風な表現を多用する沖田隊長の問いかけが、とっさに理解できないようだ。
「よせ総悟。名前ちゃんは記憶喪失で全部忘れちまってんだ。」
すかさず局長が割って入る。
「っーことは、頭の中すっからかんなんですかィ?ソイツはかわいそうだ。」
軽口はいつものことだけど、俺にはそれだけじゃないように思える。
多分、沖田隊長は名前ちゃんにいい印象を持っていない。
「すっからかんって、やだな~沖田さん。近藤さんが江戸の事を親切に教えてくれるおかげで、これでも頭の中スカスカぐらいに詰まってきてるんですよ。」
彼女はうまく切り返した。
「名前ちゃんは記憶力が抜群でな、乾いたスポンジが水を吸収するように覚えていくんだよ。」
「それは近藤先生の教え方がお上手だからですよ。」
「こりゃ一本取られたな。ハハハ。」
「フフフ。」
二人は顔を見合わせると、笑った。
何この雰囲気?イラッとくるんだけど。
「総悟、こりゃ俺達いる意味ねーな。」
「じゃ、近藤さん。これで失礼しやす。」
二人も聞いてらんねーって感じで立ち上がった。
「トシ~、総悟~。お妙さんが来るまで居てくんない?お願い~。」
局長がしきりに頼むので副長と沖田隊長はしょうがなく座り直した。
「それでは、近藤先生の授業を始めまーす。」
「はい!」
仕切り直して、みんなで話が出来るのかと思いきや局長は彼女を独り占めだ。
「だりィ。」
「姐御が来るまでの辛抱ですぜ。」
副長と沖田隊長も拍子抜けだ。
っーか副長とくっつける作戦は、見込み違いだったのか。
結局テーブルは名前ちゃんと局長、俺達三人に分かれてしまった。
「どうした総悟?今日はやけに大人しいな。得体の知れねェ化けモンでもみつけたのか?」
沖田隊長の厳しい視線が気になったのか、副長が声をかけた。
「ここには化粧でツラ変えちまう妖怪がうじゃうじゃいまさァ。あの娘、今のところ尻尾は出てねーようですぜ。」
「女狐を演じるにはまだまだ役不足だろ。近藤さんの姪っ子ぐらいが関の山だ。」
「さァ、お手並み拝見ってことで。」
彼女の方を見たまま沖田隊長は返事をした。
去年、俺は報告書で、攘夷浪士と名前ちゃんは無関係だと結論を出した。
でも沖田隊長は依然、危険人物とみなしているように思える。
俺が見落とした重大な情報をつかんでいるのか?
団子屋で一体何があったんだ?
そんな俺達とは裏腹に、マンツーマンの授業を続ける二人は、江戸の名所解説で盛り上がっている。
「そうなんですか、広い公園なんですね~。」
「徳川公の銅像が待ち合わせのスポットと覚えておくように。俺もいつかお妙さんと…
得意気に講義する局長に、彼女は笑顔で相づちをうっている。このペースでいけば、ヘタな地元民より江戸に詳しくなってしまうだろう。
興味深く会話を聴いていると仕事の電話がケータイにかかってきたので俺は席をはずした。
通話を終えて戻ってくると、本日の「授業」が終わり、全員は「お通語」で話すゲームを始めている。
副長と沖田隊長は「死ね沖田」「死ね土方」を連発する一方、名前ちゃんは失敗しまくって局長にからかわれている。
裏表のない性格の二人は、恋の橋渡しやノルマ営業と関係なくすっかり親しくなったようだ。
なんだよ~、俺だって任務とはいえデートした仲なんだぞ。
局長と仲良くしているとちょっと嫉妬しちゃうな。
端に座ったまま「お通語」ゲームを聴いていると、キリのいい所で局長が席を立ち名前ちゃんの隣に座らせてくれた。
「いいんですか?」
「友人の団らんを邪魔するほどヤボじゃないさ。」
俺への気遣いかと思いきや局長は出入口をチラチラ見ている。姐さんが客を見送りに行ったのでスタンバイを始めたようだ。
「この前は、お別れのあいさつが中途半端ですみませんでした。」
名前ちゃんはいちいち律儀で礼儀正しい。
「全然気にしなくていいよ。旦那はああいうお人だから、俺慣れっこだし。」
「あのメガネ、カワイイってよく褒められるし、とても気に入ってます。あの…お礼といっちゃなんですけど、私のできる範囲なら何でも言ってください。」
笑顔の彼女は心から申し出てくれている。またとないチャンスを逃しちゃいけない。この際、勇気を出して申し込んでみよう。
「俺、名前ちゃんに合コンの幹事をお願いしたいんだけど。」