January 1月31日 夜 スナック「すまいる」
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おもてなしとして忘れちゃいけないポイント、それは上座下座(かみざしもざ)の知識。
宴会場やレストラン、披露宴の座席においても上座、下座がある。
クルマの場合、上座は運転席の後ろになるらしい。
でも、運転手専門の俺こと山崎退は真選組でそんな作法を教わった記憶はない。
というのも、うちの大将は堅苦しいのが嫌いだし、一分一秒を争う突撃で、座る位置や乗り降りの順番を守ってたら賊を取り逃してしまうからだ。
今夜も局長は一目散に降りて、さっさと「すまいる」へ吸い込まれていったが、副長と沖田隊長は、いつまで経っても降りやしない。
「あの…、クルマまわしとくんで。」
「…。」
「…。」
仕方ないので俺は駐車場へ移動した。
「いい加減降りてくださいよ~。局長が待ってますよ。」
エンジンを切っても、マヨラーとドS王子が外に出る気配はない。
「副長~行きましょうよ。」
「ザキ、俺タバコ切らしてたわ、ちょっくらコンビニに…
「さっき買ったじゃないですか。」
「いや、予備のタバコが…
女の子達にキャーキャー騒がれるのが苦手な副長は店での滞在時間を短くしたいようだ。
無理矢理連れてこられた沖田隊長は、アイマスクを下げてタヌキ寝入りをしている。
最終的に俺が後部座席のドアを開けると、二人はしぶしぶ外に出て「すまいる」に向かった。
「あー面倒くせェ、キャバ嬢への生贄(いけにえ)は土方さんで十分でさァ。」
沖田隊長はガムを噛みながらダルそうにぶらつく。
「オイ、生贄ってどういうことだ?俺は食いモンじゃねーぞ。」
イラッとした副長は、道路に吸い殻を叩きつけた。
「じゃ、俺は落語の再放送があるんでこれで失礼しや…
「待ちやがれ。」
ヘッドフォン片手にターンした沖田隊長の襟首をつかんで逃亡を阻止すると、副長は黒服に声をかけた。
「いらっしゃいませ。近藤様が先にお待ちです。」
局長は、いつも一人で「すまいる」に通っている。
部下の同伴をめったにしないあの人が、副長と沖田隊長を呼んだのは、キャバ嬢に大人気のイケメンを招く事で自分の株を上げたい、といったところだろう。
でも、俺が呼ばれた理由がどうにもわからない。
「っていうか俺、場違いじゃないですかね…。」
俺は副長に率直な感想をぶつけた。
「近藤さん曰く(いわく)、俺達に最近入店した娘を紹介したいんだと。」
副長の言葉を信用すると、「俺達」には、一応「山崎退」も含まれているらしい。
「猪突猛進(ちょとつもうしん)一辺倒の戦法に限界があると反省したらしく、『将を射んと欲すればまず馬を射よ』の故事に倣い(ならい)、周囲の好感度を高める作戦に切り替えたそうだ。」
副長は小難しいことわざを多用してるけど、要は姐さんの友人知人を味方につけたい、といったところだろう。
そして、おとなしくなった沖田隊長の襟首を離すとタバコに火を点けた。
「周囲って…旦那達の好感度は日々ダダ下がりじゃねェですか。これ以上誰のを上げるっていうンですかィ?」
沖田隊長の見解はもっともだ。
「だから、そのキャバ嬢だ。何やら山崎の知り合いらしいぞ。」
何だって?!
「お、俺の知り合いなんですか?!」
「アレ?彼女が喜ぶから連れてこいって近藤さんが言ってたけど。知り合いなんだろ?」
マジで?!俺を喜んでくれる女の子なんているの?!人違いじゃないのか?!
「ソイツが姐御の心のカギを握る大物なんですかィ?」
「さぁな。でも近藤さんにとっちゃ、カギ握るっーか藁(わら)をもつかむ気持ちなんだろうよ。とりあえず売上に貢献しときゃ向こうは喜ぶ。」
フロアへの階段を降りると、局長が大きく手を振ってきた。
「トシ~総悟~遅いぞ~!」
大声で出迎えたので場の空気がざわつく。
キャバ嬢たちが黄色い声を浴びせる中で俺達は席に案内された。
「いや~、今夜はトシと総悟が来てくれて、店中が大騒ぎだ。全くモテる男はうらやましいよ~。」
俺の存在は欠落しているが、よくある事なので俺は気にしない。
それよりも、姐さんが来るまで別のキャバ嬢が接待するのが普通じゃないのか?不思議な事に局長は一人きりだ。
副長と局長の会話に耳を傾けると、さっきまで「俺の友人」をテーブルにつけてほしいと長らく交渉していたらしい。
本来、ヘルプは指名の対象外だけど、店長に事情を説明して了承を得たそうだ。
俺にキャバ嬢の友だちがいるだって?
そんな存在いたら毎日楽しくてたまんねーよ!
っーか誰なの?
誰??
「年の頃は総悟より上でトシより下ぐらいだ。とても素直で明るい娘だぞ。なお、現在付き合っている男はいないそうだ。」
「近藤さん、お決まりの営業トークを信用しちゃァいけませんぜ。」
ソファーにふんぞり返った沖田隊長は、早くもおつまみをかじり始める。
「これに関しては総悟が正しい。全く近藤さんのお人よしにも程があるってんだ。」
副長は煙を吐き出すと、灰皿を引き寄せた。
「トシ、彼女はあんなアバズレとは違う。」
「アバズレ?」
宴会場やレストラン、披露宴の座席においても上座、下座がある。
クルマの場合、上座は運転席の後ろになるらしい。
でも、運転手専門の俺こと山崎退は真選組でそんな作法を教わった記憶はない。
というのも、うちの大将は堅苦しいのが嫌いだし、一分一秒を争う突撃で、座る位置や乗り降りの順番を守ってたら賊を取り逃してしまうからだ。
今夜も局長は一目散に降りて、さっさと「すまいる」へ吸い込まれていったが、副長と沖田隊長は、いつまで経っても降りやしない。
「あの…、クルマまわしとくんで。」
「…。」
「…。」
仕方ないので俺は駐車場へ移動した。
「いい加減降りてくださいよ~。局長が待ってますよ。」
エンジンを切っても、マヨラーとドS王子が外に出る気配はない。
「副長~行きましょうよ。」
「ザキ、俺タバコ切らしてたわ、ちょっくらコンビニに…
「さっき買ったじゃないですか。」
「いや、予備のタバコが…
女の子達にキャーキャー騒がれるのが苦手な副長は店での滞在時間を短くしたいようだ。
無理矢理連れてこられた沖田隊長は、アイマスクを下げてタヌキ寝入りをしている。
最終的に俺が後部座席のドアを開けると、二人はしぶしぶ外に出て「すまいる」に向かった。
「あー面倒くせェ、キャバ嬢への生贄(いけにえ)は土方さんで十分でさァ。」
沖田隊長はガムを噛みながらダルそうにぶらつく。
「オイ、生贄ってどういうことだ?俺は食いモンじゃねーぞ。」
イラッとした副長は、道路に吸い殻を叩きつけた。
「じゃ、俺は落語の再放送があるんでこれで失礼しや…
「待ちやがれ。」
ヘッドフォン片手にターンした沖田隊長の襟首をつかんで逃亡を阻止すると、副長は黒服に声をかけた。
「いらっしゃいませ。近藤様が先にお待ちです。」
局長は、いつも一人で「すまいる」に通っている。
部下の同伴をめったにしないあの人が、副長と沖田隊長を呼んだのは、キャバ嬢に大人気のイケメンを招く事で自分の株を上げたい、といったところだろう。
でも、俺が呼ばれた理由がどうにもわからない。
「っていうか俺、場違いじゃないですかね…。」
俺は副長に率直な感想をぶつけた。
「近藤さん曰く(いわく)、俺達に最近入店した娘を紹介したいんだと。」
副長の言葉を信用すると、「俺達」には、一応「山崎退」も含まれているらしい。
「猪突猛進(ちょとつもうしん)一辺倒の戦法に限界があると反省したらしく、『将を射んと欲すればまず馬を射よ』の故事に倣い(ならい)、周囲の好感度を高める作戦に切り替えたそうだ。」
副長は小難しいことわざを多用してるけど、要は姐さんの友人知人を味方につけたい、といったところだろう。
そして、おとなしくなった沖田隊長の襟首を離すとタバコに火を点けた。
「周囲って…旦那達の好感度は日々ダダ下がりじゃねェですか。これ以上誰のを上げるっていうンですかィ?」
沖田隊長の見解はもっともだ。
「だから、そのキャバ嬢だ。何やら山崎の知り合いらしいぞ。」
何だって?!
「お、俺の知り合いなんですか?!」
「アレ?彼女が喜ぶから連れてこいって近藤さんが言ってたけど。知り合いなんだろ?」
マジで?!俺を喜んでくれる女の子なんているの?!人違いじゃないのか?!
「ソイツが姐御の心のカギを握る大物なんですかィ?」
「さぁな。でも近藤さんにとっちゃ、カギ握るっーか藁(わら)をもつかむ気持ちなんだろうよ。とりあえず売上に貢献しときゃ向こうは喜ぶ。」
フロアへの階段を降りると、局長が大きく手を振ってきた。
「トシ~総悟~遅いぞ~!」
大声で出迎えたので場の空気がざわつく。
キャバ嬢たちが黄色い声を浴びせる中で俺達は席に案内された。
「いや~、今夜はトシと総悟が来てくれて、店中が大騒ぎだ。全くモテる男はうらやましいよ~。」
俺の存在は欠落しているが、よくある事なので俺は気にしない。
それよりも、姐さんが来るまで別のキャバ嬢が接待するのが普通じゃないのか?不思議な事に局長は一人きりだ。
副長と局長の会話に耳を傾けると、さっきまで「俺の友人」をテーブルにつけてほしいと長らく交渉していたらしい。
本来、ヘルプは指名の対象外だけど、店長に事情を説明して了承を得たそうだ。
俺にキャバ嬢の友だちがいるだって?
そんな存在いたら毎日楽しくてたまんねーよ!
っーか誰なの?
誰??
「年の頃は総悟より上でトシより下ぐらいだ。とても素直で明るい娘だぞ。なお、現在付き合っている男はいないそうだ。」
「近藤さん、お決まりの営業トークを信用しちゃァいけませんぜ。」
ソファーにふんぞり返った沖田隊長は、早くもおつまみをかじり始める。
「これに関しては総悟が正しい。全く近藤さんのお人よしにも程があるってんだ。」
副長は煙を吐き出すと、灰皿を引き寄せた。
「トシ、彼女はあんなアバズレとは違う。」
「アバズレ?」