Day30+about50 12月25日 夜 ターミナル駅
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「天人共に人間の見分けはつかぬらしい。」
「ああ、わかります。私も天人の顔みんな同じに見えるし。あっ、ごめんなさい、宇宙怪獣ステファンさんは覚えました。」
[エリザベスです]
「ステファンさんの中の人がエリザベスさんなんですね。」
[…。]
なんか間違ったかな?
「名前殿、通りを見るがいい。歩く者たちは俺達に注意を払っておらぬ。」
彼の言う通りだ。歩きスマホをしたり、ヘッドフォンで音楽を聞いたり、私たちがその場にいないかのように、誰もがひたすら早く家に帰ろうとしている。
「万一俺に気づいても、大抵の人は関わりを避けるから都会は住みやすい。」
逃げ延びていられるのは、都会の無関心のおかげなのかな。
「時には我々と志を同じくする者が支援してくれることもある。」
桂さんが自信たっぷりに言うってことは、彼の人柄と思想に賛同する人が江戸に少なからずいるのだろう。
実際、指名手配犯でも銀さんは友だちでいるし、かくいう私もなごんでしまっている。
それと、端正な顔立ちの桂さんは一部の女子に人気があって、指名手配のポスターが時々盗まれるらしい。
「そうなんですか、でも無理しないでくださいね。」
エリザベスさんと桂さんは机とイスをたたむと壁側によせた。
そして、二人は柱の陰でサンタクロースの服を脱ぐと、すばやく虚無僧(こむそう)の姿に変装して荷物を抱えた。
「名前殿、江戸での暮らしには慣れてきたか?」
「みんなにはよくしてもらってます。こっちに来るのは二回目だから、オロオロすることもないし、桂さんを見て悲鳴を上げることもないですしね。今日はバイトの帰りなんです。」
「銀時は相変わらずか?」
「相変わらずというか、銀さん甘い物食べ過ぎだけど、とてもやさしくて一緒にいると楽しいです。このマフラー、みんなからのクリスマスプレゼントなんです!万事屋のマフラーって色違いなんですよね、銀さんが赤、新八くんが黄色。」
私はおろしたてのマフラーの両端を持ちながら話した。
「リーダーはピンクで名前殿は白か、よく似合っているぞ。ヤツとうまくやれているようでよかった。」
「でも、厳しいのが玉にキズかな。門限とか決まり事とか、もう少しゆるくてもいいかなって。」
「銀時は歴戦の女傑(にょけつ)に囲まれているので、か弱い女子(おなご)への接し方がわからないのだよ。ましてや名前殿はたった一人で俺たちの世に来た。銀時がひな鳥を育てる親のように過保護になるのも致し方ない。」
「心配してくれるのは有難いんだけど、最近の銀さん、まるでシスコンのお兄さんみたいなんですよ。八百屋の若旦那さんと親しく話してると不機嫌になるし、バイトの友だちに男の兄弟がいるかって確認してくるし、監視の目がやたら厳しいんです。今度銀さんに会ったら、私を子ども扱いしないでって言ってもらえませんか?」
「なるほど。銀時には、良き兄貴分としてふるまい続けるよう助言しておこう。」
桂さんは、なぜか不敵な笑みを浮かべた。
「兄貴分って…、それじゃ束縛きついままなんですけど。」
「むしろ、ヤツにとっては『兄』でいられるうちが楽なのさ。」
「?」
「名前殿にとって今の状態がいいかどうかは、名前殿が決めることだな。」
「私は全然よくないんですけど。」
不満をもらすと、桂さんは笑っていた。
雑踏の出す騒音にまぎれて、警察の使うホイッスルの音がかすかに聞こえてきた。
桂さんと話をしている間にも、エリザベスさんはずっと辺りを警戒している。
真選組は確実に接近しているようだ。
「おおっと時間がない。名前殿、一つ頼みを聞いてくれるか?」
「何ですか?」
「これを真選組の隊士に渡してほしいのだ。」
桂さんが言うのと同時に、エリザベスさんはクリスマスカラーの紙袋を差し出してきた。
「いいですけど、真選組にですか?」
「クリスマスぐらい敵に塩を送ろうと思ってな。ささやかなプレゼントが、この紙袋に入っている。」
「中身を聞いてもいいですか?」
「そんじょそこらじゃお目にかかれない、機械じかけのおもちゃだ。そうだな、煙の出てくる玉手箱とでも言えばいいか。」
「直接渡したら捕まっちゃいますものよね。了解です。渡しておきます。」
[メリークリスマス]
エリザベスさんは、プラカードを持っていない方の手?でステファンのぬいぐるみをプレゼントしてくれた。
「名前殿、メリークリスマス!そしてアディオス!」
「二人とも気をつけてくださいね。」
[またね]
別れのあいさつもそこそこに、二人は人混みに紛れてあっという間に見えなくなった。
集団の駆ける規則正しい足音と笛の音が段々こっちに向かってくる。
「ほら、君!危ないからそこどいて!!」
「桂ァァァ!!」
「オイ!!こっちだ!!」
依頼された通り、私は一人の隊士に声をかけた。
「なんだ?こっちは今急いでるんだ!」
「すみません、桂っていう人がこれを真選組の方に渡すように、と。」
「桂の遺留品か!」
殺気立った隊士は詰め寄ると、指名手配の写真を見せてきた。