プロローグ 11月8日 夜 スナック「すまいる」
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「銀さん、ボーっとしてるけど大丈夫?もしかして風邪ひいちゃった?」
隣に座ってる名前さんはコロナミンCの入ったグラスを持ったまま、心配そうに俺を見つめている。
「お、俺はバカだから風邪ひかねーっーか、ヘーキヘーキ。」
だけど、悪寒が止まらねェェェ。
「そういう割には顔色悪いわよね。バカもたまには風邪くらいひくでしょ。焼酎はお湯割りの方がいいかしら?」
「でも体調悪い時にお酒ってヤバくないですか?阿音さん、ウーロン茶ホットとかできます?」
阿音は黒服を呼ぶと温かいウーロン茶を注文した。
再会してから数時間後、名前さんはまだ元の世界に戻れてねェ。
スクーターで万事屋に連れ帰って新八と神楽と一緒に晩飯食って、神社に送り届けてさよならする予定…だったけど、事は簡単にいかなかった。
けなげに冷静を装ってる彼女は、ハンカチをぎゅっと強く握りしめている。
そりゃそーだ。
こっちに来る意思なんてみじんもねーんだし。
平和に暮らしてた名前さんを召喚しちまったのは、多分俺なんだから。
でもそんなの言えねェェェ!!
確かに俺は、もう一度会いたいって一瞬願っちまったけど、
ずっとここにいてほしいーとか、そんな事願ってねーから!!
一目会えたらいいな~、ぐらいだから!!
さっきから嫌な汗が流れっぱなしだ。
ヤベー、マジヤベェよ。
ウアアアアア!!
俺は頭をぐしゃぐしゃにかきむしった。
阿音の話がちっとも頭に入ってこねェ。
― Inception B2 Floor ―
今、私は銀さんと一緒にキャバクラの「すまいる」に来ている。
相談相手の阿音さんは、神社で消えた日に会うはずだった元巫女さんのキャバ嬢だ。
別のテーブルで接客中のお妙さんからは、先に進めておいてと伝言が来た。
例の人がドンペリを沢山入れてくれたので、お義理で当分相手をしないといけないらしい。
お妙さんにしつこく絡んでるガタイのいいストーカーは、阿音さんによると真選組のトップとのことだ。
あの人、本当に「ポリ公」だったんだ。
「沖田さん」と「土方さん」の上司は本当に「近藤さん」だったんだ。
何て偶然なんだろう。
っていうか、この際そんなことはどうでもいい。
再会してから数時間後、私はまだ元の世界に戻れていない。
新八くんと神楽ちゃんと再会を喜んで夕食をごちそうになって、神社でさよならする予定…だったけど、事は簡単にいかなかった。
私も、銀さんも、新八くんも、神楽ちゃんも、お妙さんも、へこんでいる。
私以上に落ち込んでいる銀さんは、体調が悪いらしく、ボーっとしてる上に冷や汗までかいている。
大丈夫?って時々呼びかけても、心ここにあらずって感じだ。
「銀さん、銀さん。阿音さんが呼んでるよ。」
何回か肩を叩くとようやく気が付いた。
「じゃあ、答えてちょうだい。誰もがお世話になる日本の学問の神様を、どなたと心得てるのよ。」
阿音さんが銀さんの頭をスッキリさせようとしたのか、突然クイズを始めた。
「俺を試そうなんて百年早ェよ。そりゃ学問の神様っていやァ…アレ?確か…。あと一歩の所で思い出せねェ、ええと…。」
銀さんは延々うなってるので最終的に私が答えると、阿音さんはうなずいた。
口に出して初めて意識したけど、教科書に載ってる実在の人物が、時を経て合格祈願の神様になったんだ。歴史ってすごいな…。
「そうよ、この国で人並外れた力を持つ存在なら、神様におなりあそばして雷が落せるようになれるの。」
「っーことは俺も神様になれるんだな!名前さんを帰してやれるなら、俺はスイーツ大明神でも甘味菩薩(ぼさつ)にでもなってやるよ。オイ、もったいぶらねェで今すぐ方法を教えやがれ。」
銀さんは一気にまくし立てると、テーブルに両手をバンと叩き付けて立ち上がった。
店中がこっちに注目している。
発言は荒唐無稽(こうとうむけい)だけど目は真剣そのものだ。
「可能性はゼロじゃない、と言いたいところだけど、まず無理でしょうね。っていうか日本の神々なめるんじゃないわよ。」
阿音さんは熱くなった銀さんに冷たい視線を向ける。
「いきなりキレられても困るんだけど。」
そう言うと、本気で神様になってくれそうだった銀さんは座りなおした。
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