Day11-1 10月20日 午後 公園
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「あの後、怪しい街にお礼に行くわけにもいかないし、あきらめてたんです。そうだ、コーヒー好きなんですよね?おごらせてください。」
「嬢ちゃんに恵んでもらう程落ちぶれちゃいないぜ。」
長谷川さんはそう言うと、ポケットからさっきの小銭をだし、缶コーヒーをおごってくれた。
二人でベンチに腰掛けて真っ先に、私はさっきから気になっていた事を聞いてみた。
「私が新八くんと立ち話をしている間、長谷川さんは神楽ちゃんとお話ししてたじゃないですか、その時、『マダオ』ってしきりに呼んでたんですけど、何の事ですか?」
「あ~『まるでダメなおっさん』略してマダオ。見ての通り、俺はそのあだ名にふさわしい生きざまを地でいってるワケだ。」
「そんなことないですよ。だって私を助けてくれたじゃないですか。私にとって恩人というか長谷川さんは神様です!」
「イヤイヤイヤ名前ちゃんが俺にとっての女神様だよ。こんなにほめられたの超久しぶりでさ、近ごろ寒くなってきたけど今夜はいい酒飲んでぐっすり眠れそうだ。でも、言っとくけど俺は嫁のハツ一筋だから、嬢ちゃんに惚れられても付き合えないんだ、ごめんよ。」
長谷川さんはオヤジギャグもそこそこに、こちらが頼みもしないのに自分がどれだけ奥さんを愛してるか、物静かで育ちのよさそうな女の人の写真を見せながら熱く語ってくれた。
公務員をクビになってから苦労をかけ通しだけど、別居中のハツさんは辛抱強く帰りを待ってくれてるという。
でも、その日暮らしの彼が奥さんと再び一緒に暮らせる日は遠い先の事だと長谷川さんもわかっているようだった。
銀さんたちと出会ったせいで職を失ったらしいけど、根っから恨んでるわけでもないのは、心が広いのか気が弱いのかどっちかわからない。
全然年上なのに寂しげで頼りない彼をほっとけない時点で、私はマダオ属性が好きなのかもしれない。
長谷川さんは、かなり短くなるまで吸ったタバコを空き缶の飲み口に落としてから、新しいのをくわえて火をつけると、ベンチで伸びをして青空に向かって煙をゆるりと吐き出した。
「かぶき町っーのは。」
小さい声でポツリと長谷川さんがつぶやいた。
「はい。」
「ふところの深い、あったけー街だよ。」
「…。」
「だから、こう、どーんとさ、おおらかに構えてりゃきっといい事あるさ。俺みたいなマダオでも時にはパチンコで大当たり出したり、名前ちゃんにハグしてもらえたりするし。」
「そうなると本当にいいんですけど…。」
「万事屋とお登勢さんたちがついてるんだから平気さ。あと俺も追加で。マダオだけど、猫の手よりはマシだからさ。特に大人の問題、恋の悩みは秘密厳守で相談にのっちゃうよ。」
「そうだ!」
「はい?」
「銀さんには気ィつけろよ。」
「えっ?何でですか?」
「つられて甘いモン食ってるとあっという間に太っちまうぞ。」
「あれだけ大量にスイーツ摂取してカロリーどこいってるんですかね、特に運動してる様子もないし。」
素人目から見ても最強な剣さばきの割に、銀さんが日々鍛錬(たんれん)している様子は全くない。
神楽ちゃんは毎日定春くんと飛び回ってるし、新八くんは道場で早朝稽古(けいこ)してから万事屋に通ってくるけど、銀さんの並外れた強さと食べても太らない点は全くの謎だ。
「名前ちゃんは心配するこたァーねーか。成長期なんだし食わなきゃ大きくなれねーぞ。」
「いや、私これ以上背伸びないんで。」
「どっちかっーと、銀さんが名前ちゃんにちょっかい出すの心配した方がいいか。銀さんも立派なマダオだから引っかかるなよ~。」
長谷川さんは着古した服の上にタバコの灰が落ちるのも気にせず、大きな声で笑っていた。
「みんな心配してるから、そろそろ行くか。」
あたりが暗くなり、風も強くなってきた頃に私たちは公園を後にすることにした。
長谷川さんは吸い殻を沢山押しこんだ空き缶を近くにあったゴミ箱に入れた。
公園の門の隅の方にはホームレスっぽい人たちが固まって酒盛りをしている。
通り過ぎる時、誰もが彼に手を上げてあいさつしてくるってことは、彼も野宿組の仲間なんだろうか。
長谷川さんに送ってもらい万事屋の戸を開けようとしたら、カギがかかっている。
部屋の明かりがついていない。
誰も帰ってないようなので「お登勢」で待たせてもらうことにして階段を降りた。
「今日は本当にうれしかったです!!またお会いできますか?」
「こんなおじさんだけど、コーヒー飲みたくなったら公園で声かけてよ。仕事のない日はブラブラしてるからさ、時間だけはたっぷりあるから。」
「送ってもらってありがとうございました。ここで大丈夫です。『お登勢』で待たせてもらうんで。」
「俺も『お登勢』に用があるんだ。これから飲むのさ。」
「ここによく来るんですか?」
「カネが入ると一杯やりにな。ここには知った顔も多いし、ツケもきくし。」
長谷川さんは楽しそうにクイッとぐい飲みで酒を飲みほすポーズをした。
「嬢ちゃんに恵んでもらう程落ちぶれちゃいないぜ。」
長谷川さんはそう言うと、ポケットからさっきの小銭をだし、缶コーヒーをおごってくれた。
二人でベンチに腰掛けて真っ先に、私はさっきから気になっていた事を聞いてみた。
「私が新八くんと立ち話をしている間、長谷川さんは神楽ちゃんとお話ししてたじゃないですか、その時、『マダオ』ってしきりに呼んでたんですけど、何の事ですか?」
「あ~『まるでダメなおっさん』略してマダオ。見ての通り、俺はそのあだ名にふさわしい生きざまを地でいってるワケだ。」
「そんなことないですよ。だって私を助けてくれたじゃないですか。私にとって恩人というか長谷川さんは神様です!」
「イヤイヤイヤ名前ちゃんが俺にとっての女神様だよ。こんなにほめられたの超久しぶりでさ、近ごろ寒くなってきたけど今夜はいい酒飲んでぐっすり眠れそうだ。でも、言っとくけど俺は嫁のハツ一筋だから、嬢ちゃんに惚れられても付き合えないんだ、ごめんよ。」
長谷川さんはオヤジギャグもそこそこに、こちらが頼みもしないのに自分がどれだけ奥さんを愛してるか、物静かで育ちのよさそうな女の人の写真を見せながら熱く語ってくれた。
公務員をクビになってから苦労をかけ通しだけど、別居中のハツさんは辛抱強く帰りを待ってくれてるという。
でも、その日暮らしの彼が奥さんと再び一緒に暮らせる日は遠い先の事だと長谷川さんもわかっているようだった。
銀さんたちと出会ったせいで職を失ったらしいけど、根っから恨んでるわけでもないのは、心が広いのか気が弱いのかどっちかわからない。
全然年上なのに寂しげで頼りない彼をほっとけない時点で、私はマダオ属性が好きなのかもしれない。
長谷川さんは、かなり短くなるまで吸ったタバコを空き缶の飲み口に落としてから、新しいのをくわえて火をつけると、ベンチで伸びをして青空に向かって煙をゆるりと吐き出した。
「かぶき町っーのは。」
小さい声でポツリと長谷川さんがつぶやいた。
「はい。」
「ふところの深い、あったけー街だよ。」
「…。」
「だから、こう、どーんとさ、おおらかに構えてりゃきっといい事あるさ。俺みたいなマダオでも時にはパチンコで大当たり出したり、名前ちゃんにハグしてもらえたりするし。」
「そうなると本当にいいんですけど…。」
「万事屋とお登勢さんたちがついてるんだから平気さ。あと俺も追加で。マダオだけど、猫の手よりはマシだからさ。特に大人の問題、恋の悩みは秘密厳守で相談にのっちゃうよ。」
「そうだ!」
「はい?」
「銀さんには気ィつけろよ。」
「えっ?何でですか?」
「つられて甘いモン食ってるとあっという間に太っちまうぞ。」
「あれだけ大量にスイーツ摂取してカロリーどこいってるんですかね、特に運動してる様子もないし。」
素人目から見ても最強な剣さばきの割に、銀さんが日々鍛錬(たんれん)している様子は全くない。
神楽ちゃんは毎日定春くんと飛び回ってるし、新八くんは道場で早朝稽古(けいこ)してから万事屋に通ってくるけど、銀さんの並外れた強さと食べても太らない点は全くの謎だ。
「名前ちゃんは心配するこたァーねーか。成長期なんだし食わなきゃ大きくなれねーぞ。」
「いや、私これ以上背伸びないんで。」
「どっちかっーと、銀さんが名前ちゃんにちょっかい出すの心配した方がいいか。銀さんも立派なマダオだから引っかかるなよ~。」
長谷川さんは着古した服の上にタバコの灰が落ちるのも気にせず、大きな声で笑っていた。
「みんな心配してるから、そろそろ行くか。」
あたりが暗くなり、風も強くなってきた頃に私たちは公園を後にすることにした。
長谷川さんは吸い殻を沢山押しこんだ空き缶を近くにあったゴミ箱に入れた。
公園の門の隅の方にはホームレスっぽい人たちが固まって酒盛りをしている。
通り過ぎる時、誰もが彼に手を上げてあいさつしてくるってことは、彼も野宿組の仲間なんだろうか。
長谷川さんに送ってもらい万事屋の戸を開けようとしたら、カギがかかっている。
部屋の明かりがついていない。
誰も帰ってないようなので「お登勢」で待たせてもらうことにして階段を降りた。
「今日は本当にうれしかったです!!またお会いできますか?」
「こんなおじさんだけど、コーヒー飲みたくなったら公園で声かけてよ。仕事のない日はブラブラしてるからさ、時間だけはたっぷりあるから。」
「送ってもらってありがとうございました。ここで大丈夫です。『お登勢』で待たせてもらうんで。」
「俺も『お登勢』に用があるんだ。これから飲むのさ。」
「ここによく来るんですか?」
「カネが入ると一杯やりにな。ここには知った顔も多いし、ツケもきくし。」
長谷川さんは楽しそうにクイッとぐい飲みで酒を飲みほすポーズをした。