Day11-1 10月20日 午後 公園
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万事屋に居候して一週間が過ぎた頃から、家事とキャサリンさんのパシリと定春くんの散歩が日課になった。
一日のサイクルが出来ると、ようやくこの世界になじんできた感じがする。
モフモフのぬいぐるみみたいな定春くんを血の通う生物だと認識したのは、万事屋で初めて眠った翌朝のことで、「ワン!」と吠えた時は、びっくりして銀さんの陰に隠れてしまった。
近頃は大分慣れてきたものの、急に動かれるとまだ怖い。
神楽ちゃんを夜兎族の天人だと実感するのも定春くんと遊んでいる時だ。
銀さんをぶん投げたり重い米袋を片手で持ち運べる並外れたパワーは知っているけど、定春くんをロデオみたいに乗りこなして河川敷を走り回る姿は、CGを多用したアクション映画を見ているようで、いつも不思議な気持ちになる。
散歩の担当といっても、実質神楽ちゃんや新八くんのお供の私は、今日も公園のベンチに腰掛けて、二人と一匹が生き生きとじゃれあってるのをぼんやり眺めていた。
陽だまりの下で、うとうとするのを我慢しようと遠くに目をやると、遊具でのびのびと運動する子どもたちや、ベビーカーのママ友グループが立ち話をするありふれた光景が広がっている。
そこから少し離れた一角には、自動販売機とゴミ箱が設置されていて、しばらく見ていると、おじさんがしゃがみこんで販売機の下に手を入れ始めた。
どうやら小銭を落としてしまったらしい。服が汚れるのも気にせず、腹這いになってなんとか取り返そうと粘っている。
どこか哀愁が漂う姿が気になって、「よかったら使ってください。」と水飲み場で濡らしてきたハンカチを差し出した。
「エッ?俺に?こんなのもったいないよ。」
「でも、洗えば済む事なんで、とりあえず顔だけでも拭いてください。」
「嬢ちゃん、汚いおっさんの事は気にすんなって。アレ…?もしかしてあの時の?」
「あーっ!!」
地べたを這いずったせいで服と顔が汚れてる上に無精ひげが伸びてるけど、確かに私を助けてくれたサングラスのおじさんだ!
「あの時の嬢ちゃんだよね!確か、名前…、そうだ!名前ちゃんだ!!俺の事覚えててくれたんだ!その様子じゃ元気でやってるみたいでうれしいよ~。いや~恥ずかしい所見られちまったな~。」
顔は覚えてるけど、名前は自分から聞いておきながらすっかり忘れてしまった。
「おかげ様で無事帰れました!!あの時は本当にありがとうございました!またお会いできると思わなかったのでうれしいです!」
「俺もさ、びっくりだよ。江戸って広いようで狭いもんだねー。」
命の恩人に再会できたのがうれしくて、着物が汚れるもの気にせずにハグを求めてしまったけど、おじさんは快く応じてくれた。
この人がいなかったら、ヤクザの事務所に監禁されて、今頃はいかがわしい仕事を強制されていたかも知れないのだ。
腕を引っ張られエレベーターへ連れ込まれそうになった瞬間を思い出して身震いをした私の背中を、おじさんは安心させるようにぽんぽんと叩いてくれた。
「いや~こんなにしてもらっちゃっていいの?若い娘にハグしてもらえるなんて、俺この先の運使い果たしたようなモンだよ。」
その数秒後、私が痴漢に襲われていると勘違いした定春くんにおじさんは丸飲みされてしまった。
誤解を解くために新八くんと神楽ちゃんには、ターミナルの近くで迷子になった時に道案内してくれた人だと必死に説明して噛むのをやめてもらった。
「マジでか。マダオもたまには役にたつアル。」
「神楽ちゃんは相変わらず手厳しいね~。」
口振りを聞いていると、神楽ちゃんたちとかなり親しい関係らしい。
「名前さん、銀さんが長谷川さんを紹介したんですか?」
そうだ、長谷川さんって言うんだ。
「違うよ、さっき言ったけどターミナルの近くの通りで知り合った。長谷川さんがいなかったら、マジでヤバかったんだ。」
「ヤバいってあの時何があったんですか?」
新八くんが怪訝な表情になった。
あの日のトラブルを知ったら、二人はきっと自分を責めてしまう。銀さんにも心配をかけたくない。
「イヤイヤ、おじさん大したことしてないよ、ホンのちょっと年食ってるだけだから、少し頭を使って道案内をしただけさ。」
長谷川さんは私の意図を読んでくれてフォローしてくれた。
新八くんは、長谷川さんとは長い付き合いで、特に銀さんとはパチンコや居酒屋でつるむ仲だと教えてくれた。
住所不定ときどき無職な人らしい。
新八くんは、積もる話がありそうですし先に帰ってますね、と長谷川さんと立ち話をしてる神楽ちゃんに声をかけてから定春くんと一緒に帰って行った。
一日のサイクルが出来ると、ようやくこの世界になじんできた感じがする。
モフモフのぬいぐるみみたいな定春くんを血の通う生物だと認識したのは、万事屋で初めて眠った翌朝のことで、「ワン!」と吠えた時は、びっくりして銀さんの陰に隠れてしまった。
近頃は大分慣れてきたものの、急に動かれるとまだ怖い。
神楽ちゃんを夜兎族の天人だと実感するのも定春くんと遊んでいる時だ。
銀さんをぶん投げたり重い米袋を片手で持ち運べる並外れたパワーは知っているけど、定春くんをロデオみたいに乗りこなして河川敷を走り回る姿は、CGを多用したアクション映画を見ているようで、いつも不思議な気持ちになる。
散歩の担当といっても、実質神楽ちゃんや新八くんのお供の私は、今日も公園のベンチに腰掛けて、二人と一匹が生き生きとじゃれあってるのをぼんやり眺めていた。
陽だまりの下で、うとうとするのを我慢しようと遠くに目をやると、遊具でのびのびと運動する子どもたちや、ベビーカーのママ友グループが立ち話をするありふれた光景が広がっている。
そこから少し離れた一角には、自動販売機とゴミ箱が設置されていて、しばらく見ていると、おじさんがしゃがみこんで販売機の下に手を入れ始めた。
どうやら小銭を落としてしまったらしい。服が汚れるのも気にせず、腹這いになってなんとか取り返そうと粘っている。
どこか哀愁が漂う姿が気になって、「よかったら使ってください。」と水飲み場で濡らしてきたハンカチを差し出した。
「エッ?俺に?こんなのもったいないよ。」
「でも、洗えば済む事なんで、とりあえず顔だけでも拭いてください。」
「嬢ちゃん、汚いおっさんの事は気にすんなって。アレ…?もしかしてあの時の?」
「あーっ!!」
地べたを這いずったせいで服と顔が汚れてる上に無精ひげが伸びてるけど、確かに私を助けてくれたサングラスのおじさんだ!
「あの時の嬢ちゃんだよね!確か、名前…、そうだ!名前ちゃんだ!!俺の事覚えててくれたんだ!その様子じゃ元気でやってるみたいでうれしいよ~。いや~恥ずかしい所見られちまったな~。」
顔は覚えてるけど、名前は自分から聞いておきながらすっかり忘れてしまった。
「おかげ様で無事帰れました!!あの時は本当にありがとうございました!またお会いできると思わなかったのでうれしいです!」
「俺もさ、びっくりだよ。江戸って広いようで狭いもんだねー。」
命の恩人に再会できたのがうれしくて、着物が汚れるもの気にせずにハグを求めてしまったけど、おじさんは快く応じてくれた。
この人がいなかったら、ヤクザの事務所に監禁されて、今頃はいかがわしい仕事を強制されていたかも知れないのだ。
腕を引っ張られエレベーターへ連れ込まれそうになった瞬間を思い出して身震いをした私の背中を、おじさんは安心させるようにぽんぽんと叩いてくれた。
「いや~こんなにしてもらっちゃっていいの?若い娘にハグしてもらえるなんて、俺この先の運使い果たしたようなモンだよ。」
その数秒後、私が痴漢に襲われていると勘違いした定春くんにおじさんは丸飲みされてしまった。
誤解を解くために新八くんと神楽ちゃんには、ターミナルの近くで迷子になった時に道案内してくれた人だと必死に説明して噛むのをやめてもらった。
「マジでか。マダオもたまには役にたつアル。」
「神楽ちゃんは相変わらず手厳しいね~。」
口振りを聞いていると、神楽ちゃんたちとかなり親しい関係らしい。
「名前さん、銀さんが長谷川さんを紹介したんですか?」
そうだ、長谷川さんって言うんだ。
「違うよ、さっき言ったけどターミナルの近くの通りで知り合った。長谷川さんがいなかったら、マジでヤバかったんだ。」
「ヤバいってあの時何があったんですか?」
新八くんが怪訝な表情になった。
あの日のトラブルを知ったら、二人はきっと自分を責めてしまう。銀さんにも心配をかけたくない。
「イヤイヤ、おじさん大したことしてないよ、ホンのちょっと年食ってるだけだから、少し頭を使って道案内をしただけさ。」
長谷川さんは私の意図を読んでくれてフォローしてくれた。
新八くんは、長谷川さんとは長い付き合いで、特に銀さんとはパチンコや居酒屋でつるむ仲だと教えてくれた。
住所不定ときどき無職な人らしい。
新八くんは、積もる話がありそうですし先に帰ってますね、と長谷川さんと立ち話をしてる神楽ちゃんに声をかけてから定春くんと一緒に帰って行った。