Day9-2 10月18日 深夜 真選組屯所 副長室
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「遅い。」
― すみません、局長につかまって遅くなっちゃいました。トシの部屋の書類の山は一向に減らんなあって笑ってましたよ。はい、灰皿。局長が事あるごとに提案してるんだし、そろそろ事務専用の小姓つけてもいいんじゃないですか?
「日がな一日、机で書類作るだけのヤツはウチに要らねェ。剣振るうのが俺たちの仕事だ。」
― それじゃあ、からくりってのはどうですか?最近は種類が多様化してメイド型や秘書タイプもあるらしいですよ、普及が進み、価格帯も以前に比べると大分安くなっ…
「例のからくりはあきらめろって言っただろーが。大体、総悟の破壊活動のせいでどんだけ予算使ってると思ってんだ。これ以上隊士を増やす余裕すらねェ。」
― それは誤解です!たまさんとは全然進展してません!俺は、副長の体が心配なんです。近頃は全然寝てないじゃないですか…。
「俺はテメーの脳ミソの方が心配だ。」
― 名字さんの報告書はここに置いときます。では失礼します。
「オイ、昨日の報告書で、
― ハッ!
夢か…。
俺は総悟の始末書にハンコつきながらいつの間にか居眠りしていたらしい。
寝覚めに一本火を点けて辺りを見回すと、文机のかたわらにザキの文書が置いてある。
ってことは半分寝ながら相手する器用な真似をしてたのか。
時計に目をやると深夜を回ってるが、これくらいの枚数なら目を通せるだろう。
近頃の桂に関する情報はどいつもこいつもガセネタで、近藤さんに会わす顔が無ェ。
アジトで押収した謎の数列は、分析の結果、攘夷浪士専用サイトの会員IDと判明した。
攘夷活動の極秘情報が得られるかと思いきや、桂と異国のドラマについて語る場でクソの役にも立ちゃしねェ。
IDが流出したのにヤツらはサイトを閉鎖する気配もなく、和気あいあいと新シーズンの展開を予想しやがって、本気で攘夷を目指してるのか疑いたくなる有様だ。
結局、名字名前にまつわる三つの番号との関連性はみられなかった。
例の番号は、逃亡資金を隠した貸金庫のナンバーとパスワードのようにも思える。
ただ、名字名前はカネを横領する狡猾(こうかつ)な人間に見えねーし、親の決めた結婚が気に入らず有り金下ろして家出したお嬢様にしては優雅な物腰や気品が欠落している。
しかし、あの女には奇妙なことに個人情報の一切が存在しない。
過去を全消去するたァ相当な権力者の息がかかってるのは確実だ。
となると、名字名前は、やんごとなきお方が愛人に産ませた娘か?
もはや、万事屋が女をはねたのは悪い事じゃねェと俺は思い始めていた。
万が一高貴な血筋のご令嬢と判明した場合、腕の立つアイツらの庇護下に置いておけば身の安全は図れる。
居候中のあの家にはチャイナ娘も住んでるからヤローが手を出す心配はねェ。
ヤツは怪我させて記憶喪失にしちまった負い目から必死で出自を洗ってることだろう。
一日も早く親元に帰したいと思っているはずだ。
正体は万事屋の方が先にたどり着くかも知れねェ。
謎だらけの名字名前には、総悟もやたらご執心なのが妙に引っかかる。
この前のザキとの打合せにひょっこり顔を出してきやがるし、近ごろかぶき町付近の甘味屋によく出没してると、あたりを管轄するパトロール隊から話を聞いた。
その上、今も報告書を手に取ったらドーナツのかけらがこぼれ落ちてきた。っーことは、俺が居眠りしている間に総悟はコイツを読んでいる。
小娘を暇つぶしのおもちゃにするにしては随分な身構えようだ。
サボりが本業のドS王子をやる気にさせるあの女は一体何者だ?
などと考えつつ報告書を開いたが、さっきから顔がやけにむずがゆい。
タバコを一旦灰皿に置き、ポケットから手ぬぐいを出して顔を拭くと墨がベッタリついていた。総悟のヤロー…!!
カッコ悪ィが誰も見ちゃいねーし、ザキのレポートはものの数分で終わるだろう。
コイツを片付けたら一風呂浴びてツラ洗って寝ると決めて俺は読み始めた。
【監察報告書】~10月18日 午後~
対 象 者:名字名前(女)
主たる目的:個人情報の収集及び交友関係(攘夷浪士及び反社会的人物)の把握
付随目的 :坂田銀時(通称:万事屋の旦那、元攘夷浪士)の動向把握
捜査期間 :全2日(1日目:10月16日 万事屋 / 2日目: 10月18日 屋外)
特記事項等:現場権限で捕縛可 副長判断で捜査期間延長の可能性有
目次の体裁は取れている。
ここまでは合格として、次のページから「作文んん!?」じゃねーだろーな。
昨日は、名字名前が桂に夢中とかくだらねー情報ばかりつらつら書き殴りやがって。
ところがページをめくると、ザキの報告書は作文から日記に進化を遂げていた。
○時○分:万事屋に名字名前(以下「名前ちゃん」と略)を迎えに行く。
芸能事務所の社長気取りの旦那に、恫喝まじりの説教をくらってから彼女を連れだす。
三人は笑顔で俺たちを送り出したが、どうせ尾行してくるだろう。