Day9-1 10月18日 午後 遠出
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「新八くんと神楽ちゃんも強いの?」
「新八はあれでも道場の当主だからな。酢昆布娘は見ての通りだ。」
「お妙さんは、なぎなたの名手で文武両道なんだって。会うの楽しみだな~、銀さんから見てもお妙さんは完璧な大和撫子?」
「いやいやいや名前さんのほうが大和撫子って柄だから。料理うまいしおしとやかだし、暴力ふるわねーし。」
「えー、新八くんが熱く語ってくれるお姉さん像って…
「重度のシスコンなんだよアイツは、幼いころに両親亡くして姉弟で肩寄せ合って暮らしてきたから仕方ねーけどな。」
「そうなんだ…知らなかった。」
そういえば新八くんからお父さんやお母さんの話を聞いたことなかった。二人には経済的にも精神的にもつらいことが沢山あったのだろう。
「お妙さんはきっと苦労してきたんだから、絶対大和撫子だよ。」
と反論すると、銀さんはあきれた様子で、
「お妙に明日会えばわかるさ。」
とニヤリと笑った。
「足、疲れてねェか?」
銀さんは、泥はねしないようそろそろ歩く私のためにゆっくり歩いてくれた。
雨に濡れた道を和服で歩くのはとても難しい。
借りた着物を汚さないように頑張ってるけど、それでもはねてるだろう。
通りの反対側からみたらし団子の香ばしい匂いが流れてきた途端、私に歩調を合わせていた銀さんが急に止まった。
買い食いしようかどうか迷ってるらしい。
無邪気な横顔を眺めていたら、私はあることに気づいた。
― 今日、二人と相合い傘してる!
相合い傘を急に意識してしまうと、夜中ずっとそばにいて「護る」って言ってくれた事と、無銭飲食に抗議した料亭の店主を路上に引きずり出して、見せしめに刀で襲い掛かった天人の集団を、「洞爺湖」の木刀でこともなげに文字通り「片付けた」勇ましい姿が頭の中で再現される。
あー、ヤバい。距離が近すぎる。
さっきまで全然気にならなかったのに。
雨、早く止んでくれないかな。
たちまち希望通りに雨は止み、何も知らない銀さんはさっさと傘をたたんだ。
かぶき町に住所が変わる交差点を渡る頃には、大分日が沈んで肌寒くなってきた。
通りの居酒屋には明かりがつき、「かぶき町」は本格的な様相を取り戻し始める。
「どーだ?少しはかぶき町に慣れたか?」
「キャサリンさんのタバコのパシリで近所は大体マスターしたよ。」
「あの猫耳ババア…。」
「銘柄は同じなのに、毎日違う場所で買ってこさせられるのが面倒かな。初日は近くの自動販売機だったのが、次の日は通りの向こうのタバコ屋になって、今日はもっと離れたコンビニで、だんだん道が複雑になってくるよ、あっ、言われた通り神楽ちゃんやたまさんと一緒だよ、心配しないで。」
普段キャサリンさんの事を余りよく言わないので、パシリをやめさせる方向になると思ったら、銀さんからは意外な答えが返ってきた。
「へェ~、猫耳おばさんも粋な計らいするじゃねーか。」
「えっ?」
「別の場所に買いに行かせるっーことは、あのアマ、名前さんの頭にかぶき町の地図を叩きこむつもりなんじゃねーの。」
「キャサリンさんってとっつきにくいけど親切なんだね。」
「バカ言うな。キャサリンはそんな生易しいモンじゃねーよ。アイツは化け猫だ。」
などと言いつつも、銀さんはキャサリンさんに一目置いてるようだ。
お登勢さんも、たまさんも、一筋縄ではいかない人たちなので、万事屋の三人とのかけ合いをみているのはとても楽しい。
日は完全に暮れて、近所のなじみある景色に帰ってきた。
「ここを右に曲がると、居酒屋の赤提灯で…。
と私は得意げに右に曲がろうとした。
途端、銀さんが手首を引いて、
「名前さんの家はこっち。」
と言うと、左に曲がった。
大きくて温かい手がこそばゆい。
「まだまだだなー」って口走ると、銀さんは立ち止まって私を自分の方に向かせた。
そして、「今は『万事屋』が名前さんの家だ、だから二度と出ていくなんて言うんじゃねェ。っーか…、少しは俺を頼れ。」
目をしっかりと見据えて、言った。
不意にシリアスになった状況が気まずくて、とっさにその場を持たせるために、
「銀さんは事務所の社長で、私が所属タレントだから護ってくれるんだよね。」
と冗談めかしたら、銀さんは手首を離した。
そして、少し笑ってからやさしくデコピンすると、
私の手をとって、黙ったまま歩き始めた。
銀さんにとって、特別な関係じゃない女の子とも手をつないで歩くのは普通に当たり前かも知れないけど。
私、弱ってるんだよ。
お願いだから。
銀さんは何気にひどい人だ。
サイテーだ。
万事屋に戻るまでの短い間、銀さんは私の手を離してはくれなかった。
2015年3月15日UP
「新八はあれでも道場の当主だからな。酢昆布娘は見ての通りだ。」
「お妙さんは、なぎなたの名手で文武両道なんだって。会うの楽しみだな~、銀さんから見てもお妙さんは完璧な大和撫子?」
「いやいやいや名前さんのほうが大和撫子って柄だから。料理うまいしおしとやかだし、暴力ふるわねーし。」
「えー、新八くんが熱く語ってくれるお姉さん像って…
「重度のシスコンなんだよアイツは、幼いころに両親亡くして姉弟で肩寄せ合って暮らしてきたから仕方ねーけどな。」
「そうなんだ…知らなかった。」
そういえば新八くんからお父さんやお母さんの話を聞いたことなかった。二人には経済的にも精神的にもつらいことが沢山あったのだろう。
「お妙さんはきっと苦労してきたんだから、絶対大和撫子だよ。」
と反論すると、銀さんはあきれた様子で、
「お妙に明日会えばわかるさ。」
とニヤリと笑った。
「足、疲れてねェか?」
銀さんは、泥はねしないようそろそろ歩く私のためにゆっくり歩いてくれた。
雨に濡れた道を和服で歩くのはとても難しい。
借りた着物を汚さないように頑張ってるけど、それでもはねてるだろう。
通りの反対側からみたらし団子の香ばしい匂いが流れてきた途端、私に歩調を合わせていた銀さんが急に止まった。
買い食いしようかどうか迷ってるらしい。
無邪気な横顔を眺めていたら、私はあることに気づいた。
― 今日、二人と相合い傘してる!
相合い傘を急に意識してしまうと、夜中ずっとそばにいて「護る」って言ってくれた事と、無銭飲食に抗議した料亭の店主を路上に引きずり出して、見せしめに刀で襲い掛かった天人の集団を、「洞爺湖」の木刀でこともなげに文字通り「片付けた」勇ましい姿が頭の中で再現される。
あー、ヤバい。距離が近すぎる。
さっきまで全然気にならなかったのに。
雨、早く止んでくれないかな。
たちまち希望通りに雨は止み、何も知らない銀さんはさっさと傘をたたんだ。
かぶき町に住所が変わる交差点を渡る頃には、大分日が沈んで肌寒くなってきた。
通りの居酒屋には明かりがつき、「かぶき町」は本格的な様相を取り戻し始める。
「どーだ?少しはかぶき町に慣れたか?」
「キャサリンさんのタバコのパシリで近所は大体マスターしたよ。」
「あの猫耳ババア…。」
「銘柄は同じなのに、毎日違う場所で買ってこさせられるのが面倒かな。初日は近くの自動販売機だったのが、次の日は通りの向こうのタバコ屋になって、今日はもっと離れたコンビニで、だんだん道が複雑になってくるよ、あっ、言われた通り神楽ちゃんやたまさんと一緒だよ、心配しないで。」
普段キャサリンさんの事を余りよく言わないので、パシリをやめさせる方向になると思ったら、銀さんからは意外な答えが返ってきた。
「へェ~、猫耳おばさんも粋な計らいするじゃねーか。」
「えっ?」
「別の場所に買いに行かせるっーことは、あのアマ、名前さんの頭にかぶき町の地図を叩きこむつもりなんじゃねーの。」
「キャサリンさんってとっつきにくいけど親切なんだね。」
「バカ言うな。キャサリンはそんな生易しいモンじゃねーよ。アイツは化け猫だ。」
などと言いつつも、銀さんはキャサリンさんに一目置いてるようだ。
お登勢さんも、たまさんも、一筋縄ではいかない人たちなので、万事屋の三人とのかけ合いをみているのはとても楽しい。
日は完全に暮れて、近所のなじみある景色に帰ってきた。
「ここを右に曲がると、居酒屋の赤提灯で…。
と私は得意げに右に曲がろうとした。
途端、銀さんが手首を引いて、
「名前さんの家はこっち。」
と言うと、左に曲がった。
大きくて温かい手がこそばゆい。
「まだまだだなー」って口走ると、銀さんは立ち止まって私を自分の方に向かせた。
そして、「今は『万事屋』が名前さんの家だ、だから二度と出ていくなんて言うんじゃねェ。っーか…、少しは俺を頼れ。」
目をしっかりと見据えて、言った。
不意にシリアスになった状況が気まずくて、とっさにその場を持たせるために、
「銀さんは事務所の社長で、私が所属タレントだから護ってくれるんだよね。」
と冗談めかしたら、銀さんは手首を離した。
そして、少し笑ってからやさしくデコピンすると、
私の手をとって、黙ったまま歩き始めた。
銀さんにとって、特別な関係じゃない女の子とも手をつないで歩くのは普通に当たり前かも知れないけど。
私、弱ってるんだよ。
お願いだから。
銀さんは何気にひどい人だ。
サイテーだ。
万事屋に戻るまでの短い間、銀さんは私の手を離してはくれなかった。
2015年3月15日UP