Day7 10月16日 午後 万事屋 来客
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さっきから名前ちゃんは、TVや新聞、ポスターで誰もが見慣れた桂の顔を初めて見る無邪気な反応をみせている。
彼女はヤツと知り合いどころか、本当に何も知らないのだと俺は確信した。
となると、桂はバッグを置き引きするほど心底卑しい男に落ちぶれたか、連続窃盗犯が桂をみたという証言自体ウソだった、の二つに一つだ。
一体、彼女はどこで生まれ育ったのか、という謎は残る。
しかし、何はともあれ疑いが晴れて本当によかった。
面通しはこれで終了にしよう。
そして俺は、メガネを買いに行く日取りを話し合うために呼びかけたのだけど、彼女はチャイナさんと写真を指さしながら盛り上がっていて全く聞いちゃくれない。
「…そうなんだ~、神楽ちゃん詳しいね。『狂乱の貴公子』って呼ばれてるんだ~。中性的な顔立ちだし女装コンテストで上位いけそう。」
「女装もイケるアル。いつも『んまい棒』持ち歩いてるアル。」
「『んまい棒』?さっき爆弾持ち歩いてるって言ってなかった?この桂?って犯人、テロリストに全然見えない~。」
「もしかして名前ちゃん、ヅラにホレたアルか?」
「えっ?!この人若いのにヅラなの?マジで!残念過ぎる!」
この娘どんだけ桂に夢中なんだよ…。
女性陣二人はイライラする俺にお構いなしだ。
新八くんが場の空気を変えようとお茶を入れ替えてきたが全く効果がない。
しかし名前ちゃんの一言で事態は収束を迎えた。
「いいな~髪の毛サラサラまっすぐで。トリートメントどこの使ってるんだろう。」
旦那の顔が急に曇って涙目になった。
ストレートヘアーをほめたのが気に食わないらしく、チャイナさんの頭を思いっきりはたいてから、話を終わらせろと身振り手振りで合図してくる。
空気を読んでチャイナさんは収拾に入った。
「そうアル、ヅラは住所不定の未亡人専用テロリストだから真剣なお付き合いはおすすめしないアル。」
「名前さ~ん、話題がそれちゃってジミーくんが困ってるよ。」
「ごめんなさい、ちょっと、かっこいいなーって思っただけで。で、山崎さん、何の話してたんでしたっけ?」
俺は即座に写真を取り上げた。
「メガネを買いに行く話だよ。いつにしようか?」
俺と名前ちゃんは待ち合わせの時間を調整しようと相談を始めたが、旦那があれこれ言って邪魔をしてくる。
どうやら俺が彼女と二人きりになるのを快く思っていないらしい。
名前ちゃんは遠回しに断っているが、旦那は買い物についていくとガキみたいに絡んでくる。
新八くんとチャイナさんは半ばあきれ顔だ。
とうとう業を煮やした彼女は、自分のせいで仕事ができない日を増やしてほしくないです仕事に行ってください、ときっぱりと断った。
「名前さんがそこまで言うなら、二人に任せて俺たちは稼がせてもらうことにするか。それじゃあ、ジミーくん頼んだからな。」
ようやく、旦那は理解のある風に引き下がった。でも目は笑ってない。
少しでも妙なことを働いたらタダじゃおかねーよ、的なオーラを発してる。
待ち合わせの時間が決まり、用は済んだので、そろそろ退散することにした。
ATMでお金を引き出してから屯所へ帰った俺は、勘のいい同僚にテメー女がらみでいい事あったろコノヤローとからかわれてから自室に戻り、この日の報告書を仕上げると、肌寒くなってきたので冬用の着物を出すために押入れを開けた。
何やってんの俺??
ふと気づくと名前ちゃんと会う日のコーディネートを考えている自分がいた。
我ながら舞い上がり過ぎだろ。
でも、振り替え休暇が消化しきれない俺にとって、女の子と二人きりの買い物は十分なボーナスだ。
それに潜入調査につきものの身の危険はゼロという最高のシチュエーションに、多少気分が高揚するのは致し方ない。
ただ、一つだけ憂鬱なことがある。
あの様子じゃ、三人は絶対尾行してくる。
下手すりゃ乱入してくる事態も考えられるので、買い物中に素性を探る時間はごくわずかだ。
俺は先手を取るために、明日の下見の時間を長めにとることにした。
2015年2月23日UP