Day7 10月16日 午後 万事屋 来客
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この捜査で重視するのは写真を目にした時の身体的反応だ。
正直なところ、YES・NOの返事はどうでもいい。
顔色、眼球の動き、息遣い、仕草、汗のにじみ方など、言葉では決して取りつくろえない、わずかなほころびが嘘の指標になる。
彼女は今日に至るまで何も思い出せてないと聞いているが、知己の顔を発見したらさすがに反応するだろう。
「知りません。」
「見たことないです。」
「いいえ。」
「知らないです。」
数十枚写真を用意してきたが、今の所順調にクリアしてきている。
最後の一枚を残して最重要手配犯の面通しは終わった。
そして、事故当日名前ちゃんのバッグを持ち去ったとされる桂の写真を差し出す。
ヤローは彼女と接触を試みた形跡があるが、俺たちが現れたので電話番号(暗号)の受け取りを断念し、バッグだけ持ち去った可能性が否定できないと副長はにらんでいる。
桂が金銭目的で遺留品をネコババするとは考えにくい。
あのバッグの中には一体何が入っていたんだ?
写真を認識するやいなや、三人の目が光る。
そりゃそーだ。昔からの知り合いなんだから。
名前ちゃんに視線を戻す。
愕然(がくぜん)とした。
彼女は写真をじっとみつめたまま動かない。凝視している。
それからテーブル上の写真を手に取って、俺と目が合うと何か言いたそうにそわそわし始めた。
副長の予測が当たってしまったのか?
でも、俺は数々の隠密活動で培った洞察力から、彼女はシロだと確信しているし、そうあってほしい思いも強い。
たとえ攘夷浪士の一味と発覚しても、腕の立つ旦那たちが後見人である以上、名前ちゃんの逮捕拘留は実質不可能だ。
副長はこともなげに「斬れ」の一言で済ませるけど無理に決まってるだろ。
写真を持ったままの彼女は、次第に口が半開きになり完全に目が泳いでしまっている。
副長の予想通り、桂と接触する予定だったのか。
内心暗澹(あんたん)たる気持ちで一杯になる。
だがこれは仕事だ、仕方ない。俺は恐る恐る話しかけた。
「名字さん、何か思い出せた?少しでも気づいたことがあったら言ってよ。この人、どこで見たのかな?」
「本当に何でもいいですか?」
名前ちゃんはためらっている。
見守っている三人も予想外の展開に戸惑いを隠せないようだ。
桂と面識があると全く知らなかったらしい。
彼らは意味不明なジェスチャーで互いにコミュニケーションを取ろうとしている。
「大丈夫だよ、思ったことをそのまま言えばいいんだ。」
「本当に本当に大丈夫ですか、逆に質問しちゃってもいいですか?」
「知ってる範囲でよければ答えるけど、どこが気になるのかな?」
俺は最悪のシナリオを想像した、きっと彼女はこう切り出すだろう。
「私、事故に遭ったあの日、写真の男の人と待ち合わせしてたんです………、ごめんなさい、なんだか頭が痛くてこれ以上思い出せない……、けど知ってる…、とても大切な物を渡すはずだった気がする…。山崎さん、この人をみると、なぜか懐かしい気持ちになるんです…、一体誰なんですか?正体を教えてくださいお願いします。」的な。
あーあ。どーするよ。
しかし彼女の発言はその場にいた全員の度胆を抜くものだった。
「この人、俳優さんかモデルさんですか?かなりレベル高くないですか?何やらかしたんですか?結婚詐欺とかですか?」
そっちかよォォォ!!
「あの…名字さん?指名手配の男は、桂小太郎って言うんだけど、芸能人でもセレブでもないからね、単なる余罪多数のテロリストだよ!この顔見たら110番だよ!!」
俺のたしなめは全然通じていない、写真を手放すどころか釘づけだ。
目をキラキラさせている。
「へ、へぇ~、名字さんは、この手の顔がタイプなんだ?」
もうやけっぱちだ。
「山崎さん何言ってるんですか~、そんなワケないですよ~。」
隠してるつもりでも態度で丸わかりだよ!!
かなりタイプってことかよォォォ!!
桂ァァァ!!
彼女を挟んでいる二人が、さっきの落ち着かない様子から打って変わって必死に笑いをかみ殺しているのに余計腹が立つ。
俺の隣に腰掛けている新八くんも忍び笑いで体を震わせている。
特に、長年の盟友である旦那にとって、名前ちゃんの反応はさぞかしこっけいでたまらないだろう。
マジすっげームカつく。