Day5-4 10月14日 夜 スナック すまいる
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阿音は、元巫女とはいえ、巨大化した定春を元に戻した実績があるお墨付きの能力者だ。
名前さんを元の世界に送還してくれるなら、ぼったくられようが土下座を強要されようが全部呑むつもりで会いに来たんだけど。
いざという時に役に立たねーな。
「阿音ちゃんも大変よね。引きこもりの妹さんを抱えている上に、莫大な借金抱えてるんですもの。こういうきっかけでもないと働きづめの彼女が休みを取るなんてありえないのよ。銀さんついてないわね…。やだ私ったら…、銀さんがついてないのはいつものことですね。」
お妙は俺が阿音に会いに来た理由はどうでもいいらしく、焼酎の水割りを作りながら一人でぶつぶつつぶやいている。
「手間かけたな。じゃあ…そろそろ…」
目的の人物に会えない以上、長居する必要はない。
俺は立ちあがろうとした。
「ちょいと待ちな!」
水割りのグラスに添えられていたお妙の手が、俺をブロックしている。
反対側の手に握られたマドラーが、喉元に突き付けられてるんだけどォォォ!!
「店長~ドンペリ一本入りました~!!」
フロア全体に広がった陽気なドンペリコールが終わるとお妙は拘束を解き、マドラーを本来の位置に戻した。
これだから「すまいる」に来るのは嫌だったんだよ。
「俺、ドンペリとか頼んでねーけど…焼酎水割りセット以外頼んでねーけど。」
「そうかしら?私の耳にはドンペリって聞こえたわ。」
「オイ、でまかせ言ってんじゃ…」
俺が「オイ、」と言ったあたりで、お妙は振袖をまくり上げ、手の関節をボキボキ鳴らして完全に戦闘態勢に入った。
「ここに座ったからにはタダじゃ帰さねーぞ!」
完全にロックオンされた。
来るんじゃなかったァァァ!!
ドンペリを無理やり注文させたものの、お妙は名前さんの事をひどく心配していて、俺を質問攻めにした。
新八以外の視点から状況を確かめたかったらしい。
それと、俺は思いつきもしなかったが、彼女は自分の貸した着物が名前さんに似合ってるかやたら気にしていた。
じっくり観察してねェけど結構いいんじゃねーの。と適当に答えると、それなら安心ね、と意味深に笑っていた。
「本来なら、年の近い私が相談に乗ってあげるのがいいんだけど、何せ稼ぎ頭の彼女が急に休みを取ったから、お店全体のノルマを達成するのに大変なの。毎晩アフターに付き合わないといけないし、オフの時間は、ハロウィンデーの衣装を縫うので精一杯…。」
着席して会話に加わった同僚のおりょうも、通常より出勤日を増やして客に対応していると話していた。
とは言っても、阿音の常連客を横取りすることはせず、最低限の仁義を守って接客しているらしい。
そもそも、阿音とお妙はキャラが全く違うので、つく客も自然と違ってくるのだそうだ。
おりょうは数分後に指名が入り、ちゃっかり追加のつまみを注文すると席をたって行った。
「夜中に泣き出したって話を聞いたら、とても心配で…なるべく早く伺うわね。」
「そうしてくれると助かるわ、言っとくけど俺が泣かしたんじゃねェからな。」
「はいはい、わかってます。もし銀さんが泣かしてたなら、とっくに銀さんはこの世にいないから安心して。」
「俺が安心できないだろーが。」
相変わらずかわいくねェ女だが、今夜のお妙はいつもより毒気が抜けている。
名前さんに会うのが楽しみでウキウキしてるっーか、既に友達扱いだ。
彼女も仕事抜きで話せる友達が欲しいんだろう。
「名前さん、おしゃれは好き?新しい着物を持って行ったら気分転換になるかしら?それとも、うちに来てもらおうかな…。そういえば、最近うちに来てないわよね。たまには、みんなで食事でもどうかしら?私、腕ふるっちゃおうっと。」
嫌な汗が、つーっと背中を流れていく。
「いやいやいや志村家訪問は、またの機会っーことで…。」
お妙は全く意に介さない。
「あら残念、私の卵料理のフルコースを新しいお友達に食べて欲しかったんだけど…。なら、卵焼きをお土産に持って行くわね。」
「卵焼きは間に合ってるから!!今、忙しいんだろ??記憶が戻ってからでも十分食わせられるから!!ずーーーっと先でいいから!!」
お妙は、落ち込んだ時は甘いものを食べるのが一番だ、卵焼きを作って新八に持たせると頑な(かたくな)に言い張ったが、ババアがたっぷり食わせてるから心配すんな、それよりも、かぶき町に不案内な名前さんを見物がてら、界隈(かいわい)で評判のスポットに連れ出してやってくれと懇願(こんがん)して辛くも乗り切った。
ダークマターの被害者は俺たちだけで十分だ。
口に入れた途端、自分のことすら認識できなくまっちまう。
しかし、暴力的なのと破壊的な料理の腕を除けば、お妙は義理人情に厚い、きわめて真っ当な女だ。
半ば強引にドンペリを注文したのは月間のノルマ以外に、長居させて名前さんの日常を聞き出す目的もあったのだと、滅多にお目にかかれねーボトルが空になる頃になって、俺はやっと気づいた。
名前さんを元の世界に送還してくれるなら、ぼったくられようが土下座を強要されようが全部呑むつもりで会いに来たんだけど。
いざという時に役に立たねーな。
「阿音ちゃんも大変よね。引きこもりの妹さんを抱えている上に、莫大な借金抱えてるんですもの。こういうきっかけでもないと働きづめの彼女が休みを取るなんてありえないのよ。銀さんついてないわね…。やだ私ったら…、銀さんがついてないのはいつものことですね。」
お妙は俺が阿音に会いに来た理由はどうでもいいらしく、焼酎の水割りを作りながら一人でぶつぶつつぶやいている。
「手間かけたな。じゃあ…そろそろ…」
目的の人物に会えない以上、長居する必要はない。
俺は立ちあがろうとした。
「ちょいと待ちな!」
水割りのグラスに添えられていたお妙の手が、俺をブロックしている。
反対側の手に握られたマドラーが、喉元に突き付けられてるんだけどォォォ!!
「店長~ドンペリ一本入りました~!!」
フロア全体に広がった陽気なドンペリコールが終わるとお妙は拘束を解き、マドラーを本来の位置に戻した。
これだから「すまいる」に来るのは嫌だったんだよ。
「俺、ドンペリとか頼んでねーけど…焼酎水割りセット以外頼んでねーけど。」
「そうかしら?私の耳にはドンペリって聞こえたわ。」
「オイ、でまかせ言ってんじゃ…」
俺が「オイ、」と言ったあたりで、お妙は振袖をまくり上げ、手の関節をボキボキ鳴らして完全に戦闘態勢に入った。
「ここに座ったからにはタダじゃ帰さねーぞ!」
完全にロックオンされた。
来るんじゃなかったァァァ!!
ドンペリを無理やり注文させたものの、お妙は名前さんの事をひどく心配していて、俺を質問攻めにした。
新八以外の視点から状況を確かめたかったらしい。
それと、俺は思いつきもしなかったが、彼女は自分の貸した着物が名前さんに似合ってるかやたら気にしていた。
じっくり観察してねェけど結構いいんじゃねーの。と適当に答えると、それなら安心ね、と意味深に笑っていた。
「本来なら、年の近い私が相談に乗ってあげるのがいいんだけど、何せ稼ぎ頭の彼女が急に休みを取ったから、お店全体のノルマを達成するのに大変なの。毎晩アフターに付き合わないといけないし、オフの時間は、ハロウィンデーの衣装を縫うので精一杯…。」
着席して会話に加わった同僚のおりょうも、通常より出勤日を増やして客に対応していると話していた。
とは言っても、阿音の常連客を横取りすることはせず、最低限の仁義を守って接客しているらしい。
そもそも、阿音とお妙はキャラが全く違うので、つく客も自然と違ってくるのだそうだ。
おりょうは数分後に指名が入り、ちゃっかり追加のつまみを注文すると席をたって行った。
「夜中に泣き出したって話を聞いたら、とても心配で…なるべく早く伺うわね。」
「そうしてくれると助かるわ、言っとくけど俺が泣かしたんじゃねェからな。」
「はいはい、わかってます。もし銀さんが泣かしてたなら、とっくに銀さんはこの世にいないから安心して。」
「俺が安心できないだろーが。」
相変わらずかわいくねェ女だが、今夜のお妙はいつもより毒気が抜けている。
名前さんに会うのが楽しみでウキウキしてるっーか、既に友達扱いだ。
彼女も仕事抜きで話せる友達が欲しいんだろう。
「名前さん、おしゃれは好き?新しい着物を持って行ったら気分転換になるかしら?それとも、うちに来てもらおうかな…。そういえば、最近うちに来てないわよね。たまには、みんなで食事でもどうかしら?私、腕ふるっちゃおうっと。」
嫌な汗が、つーっと背中を流れていく。
「いやいやいや志村家訪問は、またの機会っーことで…。」
お妙は全く意に介さない。
「あら残念、私の卵料理のフルコースを新しいお友達に食べて欲しかったんだけど…。なら、卵焼きをお土産に持って行くわね。」
「卵焼きは間に合ってるから!!今、忙しいんだろ??記憶が戻ってからでも十分食わせられるから!!ずーーーっと先でいいから!!」
お妙は、落ち込んだ時は甘いものを食べるのが一番だ、卵焼きを作って新八に持たせると頑な(かたくな)に言い張ったが、ババアがたっぷり食わせてるから心配すんな、それよりも、かぶき町に不案内な名前さんを見物がてら、界隈(かいわい)で評判のスポットに連れ出してやってくれと懇願(こんがん)して辛くも乗り切った。
ダークマターの被害者は俺たちだけで十分だ。
口に入れた途端、自分のことすら認識できなくまっちまう。
しかし、暴力的なのと破壊的な料理の腕を除けば、お妙は義理人情に厚い、きわめて真っ当な女だ。
半ば強引にドンペリを注文したのは月間のノルマ以外に、長居させて名前さんの日常を聞き出す目的もあったのだと、滅多にお目にかかれねーボトルが空になる頃になって、俺はやっと気づいた。