Day5-3 10月14日 夜 銭湯
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玄関を出たところで、散歩から戻ってきた新八くんたちとすれ違った。
「お登勢」に入る前に、ふと二階を見上げると、万事屋の扉が閉まるところだった。
私を心配して見守ってくれたのだろう。
それから、「お登勢」でごはんを頂いた。
事情を知ってるはずのお登勢さんは、根掘り葉掘り聞いたり、腫れ物に触れるような扱いを一切せず、
「着物は少し寸胴(ずんどう)なぐらいが似合うのさ。」
と、沢山おかずを出して無理やり私に食べさせただけだった。
万事屋のみんなは優しい。
こっちが申し訳なくなるぐらい。
「名前ちゃん~、先上がるアル。」
「もう少し浸かってる~!外寒いし。」
「今日もコーヒー牛乳一気飲み競争するネ、手加減しないアル!」
神楽ちゃんはさっさと上がっていた。
今日の銭湯は空いていて、私の他には浴場の入口付近で、もう一人おばさんが体を洗っているだけだ。
神楽ちゃんと親しいらしく、しばらく話し込んでいた。
一人きりの広い湯船で思いっきり手足を伸ばす。
昨夜のことが脳内によみがえる。
ヤバい。
はずかしい。
あの事はなかったことにしたい。
あ-……。
銀さんと目を合わせられない。
私は、夜中、現実と夢のはざまの夢(あれは事故直前の出来事だけど、フラッシュバックだ。)で叫び声をあげて、銀さんを起こしてしまったと思う。
でも、ソファーで眠っていたはずの銀さんは、真っ暗な部屋でイスに座ってジャンプを読んでいた。
確かに、窓の外からネオンの明かりがうっすらと入ってくるけど、マンガのセリフというか文字まで判読するのは、どう考えても無理だっただろう。
銀さんは、大人だ。
ひたすら泣きまくって、メチャクチャな感情をぶつけたのに、ずっとそばにいて、話を聞いてくれて、
「護る。」
って言ってくれた。
本当にうれしかった。
思い出すと、ヤバい。
なんだか、脈拍が上がってきたような気がする。
銀さんが私に向き合ってかけてくれた言葉は、正直「護る」と「背負う」くらいしか覚えていない。
パニックを起こした私には全部理解できなかったけれど、まっすぐな気持ちは伝わってきた。
ああいうの何ていうんだろう、大人の余裕?
うーん、そういうのじゃない。
多分、銀さんの何でも受けとめる度量の広さとか、さりげない優しさは、単に年を取っただけで身につくものじゃない。
あくまでも直感だけど、銀さんは辛い経験をしてきている。
でも、振り返らず前を向いて、過去のすべてを背負って歩いてるから、見かけの年齢以上に大人なんだと思う。
そして、そんな人柄にひかれて、新八くんと神楽ちゃんがついてきて、お登勢さんたちが三人を見守ってるんだ。
さすがに、考え過ぎか…。
普段の銀さんはひたすら明るい人だし、重い過去がどうのとかは、きっと私の思い過ごしだろう。
でも、今まで会ったことないタイプの人だから、どうしても詮索したくなる。
少しお湯熱いかな…。
はしっこに移ろう。
夜明けに目覚めたら、私はいつの間にか銀さんに寄りかかって眠っていたのに気づいた。
毛布にくるまっていた私とは対照的に、銀さんはパジャマ姿のまま寝入っていた。
夜、冷えていたのに。
向かいのソファーに毛布はあったのに。
私をゆり動かさないように我慢してくれたのだろう。
それから、そーっとソファーを離れ、自分の毛布を銀さんにかけてから、忍び足で和室に戻って布団で寝た。
今度は悪夢を見ずに済んだ。
昼前に起きてからは、涙を流すこともなく、一日中穏やかに過ごすことができた。
それは、銀さんがずっとそばにいて、やさしい言葉をかけてくれたり、温かい飲み物を作って飲ませてくれたり、和ませようと自分が記憶喪失になった時のことをギャグ交じりに話してくれたからだ。
それと、銀さんが肩を貸してくれて、何かいい匂いがして
ヤバい。
クラクラする。
頼りがいがあるっていうか、
私、ちょっとおかしいな…。