Day4-3 10月13日 深夜 万事屋 ソファー
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体が暖まって落ち着いたのか、泣くだけ泣いて気がすんだのか、やっと泣き止んだ。
フェイスタオルを差し出す。
部屋に差し込むわずかな光でもわかるくらい、浴衣の袖は涙で色が変わっていた。
タオルで顔を拭いた彼女は下を向いたままで、ぽつりぽつりと話し始めた。
「バカみたいなこと言うけど、絶対笑わない?」
「おお」
「本当?」
「あったりめェよ。銀さんに話して楽になるなら全部吐き出しちまいな。」
「あのね、夢を見てるんじゃないかって。」
「ん?」
「ドラえもんってわかる?」
「毎週見てるよ。」
「よかった、ドラえもんはこっちにもあるんだ。都市伝説で、ドラえもんの最終回ってのがあるんだけど。」
「あー、のび太が科学者になってドラえもんを直して再会するってヤツか?」
「発禁になった海賊版じゃなくて、すごく怖い方。」
「へぇー…、すごく怖い話なんだ…。でも全然大丈夫だから、ビビッたりしないから!」
「ドラえもんの全てのエピソードは、のび太が病院のベッドに寝かされて、植物人間状態で見てる夢だって。ドラえもんはどこにも存在しないって。」
「ふーん、そう…。全然、ヘーキだし…。」
「つまり、今、私の話しかけてる銀さんは想像上の架空人物で…、本当の私は万事屋に居候してなくて…」
「…。」
「現実の私は、交通事故で…頭を強く打って……、重体で…生死の境を…さまよってるって…。」
声が震え始めている。
いけねー、また泣き出しそうだ。
「いくらなんでも考えすぎだろ?慣れない暮らしで疲れてるんだ、明日パフェでも食いに行こうぜ。」
沈黙はしばらく続いた。
「違うよ、そんなことない。」
「『インセプション』って映画、知ってる?」
「イン?インポテーション??がどうしたって?」
「その映画は、夢が階層になってて、夢から覚めてもまた夢で…、あるよね、朝起きて、顔洗って、服着替えて、ごはん食べて、靴履いてドア開けるとベッドの上で目が覚める夢。」
「ガキの頃、厠でスッキリしたら布団で寝小便かましてたみてーな?」
「うん、そんな感じ。」
「だから、現実の私は病院でいろんな計器につながれていて、傍らにはお父さんとお母さんが泣きながら手を握っているの。」
「…。」
「今、銀さんと話しているのが夢の第一階層で…、万事屋で夜見る夢が第二階層で…とにかく、何度目が覚めても…私の部屋の天井に戻れない。ああぁ…わけわかんないよ…どうしていいのかわかんない……みんなに会いたい…現実に戻りたい…」
また泣き出しちまった。
どうやってなぐさめたらいいんだ?
ある日突然、この世界に放り込まれた女の子を。
俺たちの生きている現実の世界が、覚めぬ夢の中だと思いこみ、苦しんでる女の子を。
隣に座っていたソファーから立ち応接テーブルに腰掛けて、彼女と真正面に向き合う。
泣き声が収まるのを待ってから、俺はゆっくりと話し始めた。
目を合わせてくれなくていい。
ただ、耳に届くだけでいい。
「イン?とか夢の階層?とか、細かい事わかんねーけど、かぶき町の万事屋に、今、名前さんがここにいて、俺がここにいて、とりあえず生きてるってことでいいんじゃねーか?」
「うたかたの一夜の夢だろーが、世知辛い現実だろーが、その時を自分なりに足跡つけてくってのも悪かねェ。」
「あいにく、万事屋は大船どころかおんぼろ船だけどよ、でも、これだけは信じてくれ。」
「名前さんは、俺が護る。」
「新八と、神楽も同じ気持ちだ。だから肩に背負ってるモンを少しだけ分けちゃくれねーか?」
名前さんは、身じろぎひとつしなかった。
フェイスタオルを差し出す。
部屋に差し込むわずかな光でもわかるくらい、浴衣の袖は涙で色が変わっていた。
タオルで顔を拭いた彼女は下を向いたままで、ぽつりぽつりと話し始めた。
「バカみたいなこと言うけど、絶対笑わない?」
「おお」
「本当?」
「あったりめェよ。銀さんに話して楽になるなら全部吐き出しちまいな。」
「あのね、夢を見てるんじゃないかって。」
「ん?」
「ドラえもんってわかる?」
「毎週見てるよ。」
「よかった、ドラえもんはこっちにもあるんだ。都市伝説で、ドラえもんの最終回ってのがあるんだけど。」
「あー、のび太が科学者になってドラえもんを直して再会するってヤツか?」
「発禁になった海賊版じゃなくて、すごく怖い方。」
「へぇー…、すごく怖い話なんだ…。でも全然大丈夫だから、ビビッたりしないから!」
「ドラえもんの全てのエピソードは、のび太が病院のベッドに寝かされて、植物人間状態で見てる夢だって。ドラえもんはどこにも存在しないって。」
「ふーん、そう…。全然、ヘーキだし…。」
「つまり、今、私の話しかけてる銀さんは想像上の架空人物で…、本当の私は万事屋に居候してなくて…」
「…。」
「現実の私は、交通事故で…頭を強く打って……、重体で…生死の境を…さまよってるって…。」
声が震え始めている。
いけねー、また泣き出しそうだ。
「いくらなんでも考えすぎだろ?慣れない暮らしで疲れてるんだ、明日パフェでも食いに行こうぜ。」
沈黙はしばらく続いた。
「違うよ、そんなことない。」
「『インセプション』って映画、知ってる?」
「イン?インポテーション??がどうしたって?」
「その映画は、夢が階層になってて、夢から覚めてもまた夢で…、あるよね、朝起きて、顔洗って、服着替えて、ごはん食べて、靴履いてドア開けるとベッドの上で目が覚める夢。」
「ガキの頃、厠でスッキリしたら布団で寝小便かましてたみてーな?」
「うん、そんな感じ。」
「だから、現実の私は病院でいろんな計器につながれていて、傍らにはお父さんとお母さんが泣きながら手を握っているの。」
「…。」
「今、銀さんと話しているのが夢の第一階層で…、万事屋で夜見る夢が第二階層で…とにかく、何度目が覚めても…私の部屋の天井に戻れない。ああぁ…わけわかんないよ…どうしていいのかわかんない……みんなに会いたい…現実に戻りたい…」
また泣き出しちまった。
どうやってなぐさめたらいいんだ?
ある日突然、この世界に放り込まれた女の子を。
俺たちの生きている現実の世界が、覚めぬ夢の中だと思いこみ、苦しんでる女の子を。
隣に座っていたソファーから立ち応接テーブルに腰掛けて、彼女と真正面に向き合う。
泣き声が収まるのを待ってから、俺はゆっくりと話し始めた。
目を合わせてくれなくていい。
ただ、耳に届くだけでいい。
「イン?とか夢の階層?とか、細かい事わかんねーけど、かぶき町の万事屋に、今、名前さんがここにいて、俺がここにいて、とりあえず生きてるってことでいいんじゃねーか?」
「うたかたの一夜の夢だろーが、世知辛い現実だろーが、その時を自分なりに足跡つけてくってのも悪かねェ。」
「あいにく、万事屋は大船どころかおんぼろ船だけどよ、でも、これだけは信じてくれ。」
「名前さんは、俺が護る。」
「新八と、神楽も同じ気持ちだ。だから肩に背負ってるモンを少しだけ分けちゃくれねーか?」
名前さんは、身じろぎひとつしなかった。