Day4-3 10月13日 深夜 万事屋 ソファー
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この日、名字さんは元気を取り戻したようだった。
神楽の提案で夕食前に銭湯に繰り出したのが功を奏したのか、男湯まで二人のはしゃぐ声が聞こえてくる。
コーヒー牛乳の一気飲み競争で神楽に負けた(当たり前だろ)が、よほど自信があるらしく、帰り道に再勝負を申し込む様子を見て、俺と新八は安心した。
新八が気合いを入れた料理の食べっぷりを三人で見張っていたのがバレると、すぐに箸を置いて恥ずかしそうに抗議したが全部片付けた。
うちに来てから残さず食ったのはおそらく初めての事だ。
本来の「素顔」が、俺たちと打ち解けるにつれ、少しずつ見えてきている。
で、今は神楽とバーゲンダッシュをほおばりながら「渡る世間は鬼しかいねーコノヤロー」に夢中だ。
とりあえず、彼女が気兼ねなく万事屋でくつろげるのはいいことだ。
ただ、一つの問題を除いて。
ヅラから託されたバッグの中身と、名字さんの正体についてアイツらに一刻も早く説明がしたい。
でも、昨日から、なかなかタイミングがつかめねェ。
神楽は銭湯に誘ったり人気ドラマを見せたりと神楽なりに知恵を絞って、彼女に寂しい思いをさせないよう、朝から晩まで片時も離れずにいる。
それは新八も同じだ。
秘密を抱えてる俺とは裏腹に、三人は楽しく団らんしている。
結局、ドラマを見た後は、お通ちゃんのライブDVDで騒いでから、玄関まで新八を見送ると、残った三人でUNOを散々やって、眠りについた。
明日こそ、腹くくんねーと。
アイツらは彼女が別世界からやってきた人間だって、すんなり信じるだろうか?
新八はともかく、神楽は奇妙なお金や免許証を見せても、記憶喪失の天人とか帰国子女だと言い張るに違いねェ。
俺はソファーに寝転がりながら頭をかいた。
何コレェェェ?!
天パが悪化してるんだけど!!
脳のスペックを遥かにオーバーした驚異の真実が髪の毛に作用してんのかよオォォォ!!
ほら、「お菓子を食べたらいいのに」発言で有名な異国の姫さんが、投獄されたショックのあまり、一晩で天パになったって逸話があるくらいだし。
アレ、白髪だっけ??
全てを打ち明けてスッキリしたヅラの爽やかな顔が浮かんでくる。
今となってはヤローの気持ちが痛いほどわかる。
あー、眠れねー。
元来俺は寝つきがいい方なんだ。
「うわぁあああ!!」
まどろみ始めたところだった。
和室の方から叫び声とガサゴソ動く音が漏れてきた。
悪い夢でも見たのか?
ソファーから体を起こし、忍び足でふすまに聞き耳を立てる。
声をあげて泣いているようだ。
激しい泣き声はしばらく続いてから静かになった。
また、ゴソゴソと動く音が聞こえてくる。
どうやら起きてくるらしい。
俺はとっさに事務所のイスに深く座り、机の上に置いてあったジャンプを手に取って、窓から差し込むネオンの明かりの元で読みふけっていたように装った。
名字さんは、最低限、人が通れる寸法にゆっくりとふすまを開け、左右をキョロキョロ確認してから一歩ずつ慎重に洗面所の方に歩いて行った。
バシャバシャと水音がする。
どうやら顔を洗っているようだ。
程なくして洗面所から出てきた。
ソファーに俺がいないのに気づくと、机の方にそろそろと近寄ってくる。