Day2-1 10月11日 昼 「お登勢」
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最後に振袖に手を通したのは成人式だったな。
浴衣ぐらいは自分で着られるようになりたいけど、毎年美容院にお願いしている。
お登勢さんは手際よく私に着つけていった。
うっ、きっついー、胸とおなかが締め付けられる。
「なんだィ、これくらいできついのかィ?でも、しっかり締めておかないと、ずるずるに着くずれちまうよ。こればっかりは、とにかく慣れるしかないね。」
お登勢さんは背中をぽん、と叩いた。
「はい、できたよ、なかなかきまってるじゃないか。」
全身が映る姿見の前に立ってみる。
我ながら結構似合ってるかもしれない。
足袋はお妙さんがいくつか用意してくれたサイズの中に合うのがあった。
足袋も履き慣れてないから、足の指のポジションが妙に落ち着かない。
草履を履いてスナックに戻る。
「名前ちゃんかわいいアル。」
「名字さん、似合ってますよ。それと、リラックスリラックス。肩の力抜いて。」
お世辞でもほめてもらえるとうれしいな。
「お登勢様、昼食の用意ができました。」
カウンターには既にお昼が整っていた。
たまさんが志村くんと私の前に、ごはんと出来立てのおかず一人前を並べてくれる。
一方、神楽ちゃんの前には、炊飯ジャーがどーんと置かれた。
ごはんのお代わりは神楽ちゃんの担当のようだ。
「あの、お登勢さんとたまさんは召し上がらないのですか?」
「あたしらは後で食べるから気にしないでさっさとおあがり。」
「何から何まですみません、それじゃあ、いただきます。」
「いただきます。」
神楽ちゃんは、いただきます、の挨拶もそこそこに、炊飯ジャーのふたを開けてそこから猛烈なスピードで直接食べ始めた。
あれは私たちのお代わり用じゃなくて、神楽ちゃん専用の「ごはん」だったのだ。
食べるってより、吸い込む、のほうが正しい。
あっけにとられてると志村くんが苦笑いして教えてくれる。
「神楽ちゃんは地球の外から来た夜兎族の女の子なので、食欲旺盛なんです。初めて会う人はみんな驚くんですよ。」
「やと族?神楽ちゃんは他の星から来たの?」
「天人アルよ。名前ちゃんも天人アルか?」
「多分違うと思う…。」
神楽ちゃんは小さい体なのに沢山食べて大丈夫なのかな。
でも、大食い選手権に出る人は意外にやせてるからなぁ。
それにしてもすごい食べっぷりだ。
「名字様、冷めてしまいますので、どうぞお召し上がりになってください。」
たまさんが呼びかけるまで、私はおはしとお茶碗を持ったまま神楽ちゃんに釘づけだった。
「そうですよ、僕たちもいただきましょう。」
「そういえば、さか…銀さんっていつごろ戻ってくるの?」
銀さん、か。
まだ、呼びなれないな。
「予定だとそろそろ現れてもいいはずだけど、遅いなあ。まあ気にせず食べてましょう。ところで、言いそびれてたけど、僕、みんなから新八って呼ばれているので、そう呼んでください。」
「新八じゃなくて駄メガネアル。」
「えっ、新八くんって呼べばいいんだよね?それとも駄メガネ?どっち?」
「駄メガネアル。」
「だからメガネが本体じゃねーって言ってんだろォォォ!!」
「冗談言ってごめん、駄メガネって二度と呼ばないから二人ともケンカやめてよ、本当ごめんなさい。」
私を挟んで両側に座っている二人は、食事そっちのけでお互いつかみかかりそうな勢いだ。
いくら私が謝っても言い合いを止めてくれない。
ノリでまずい事言っちゃったな。
どうしよう…。
「アンタたちケンカなら外でおやり。ここは私の城だよ。静かにしな。」
お登勢さんの一言で、部屋の空気が一変した。
二人は急にしおらしくなっている。
かくいう私もちょっと恐い。
お登勢さんは女帝だ。
言い争いをやめた新八くんが、照れ隠しで頭をかきながら謝ってくる。
「いや~、いきなりこんなところ見せちゃって恥ずかしいなー。でも、僕らいつもバカやってるんで、本当に気兼ねせずに何でも言ってください。」
「こっちこそふざけてごめん。」
新八くんと向き合って話していた私を、神楽ちゃんが袖を軽く引っ張って自分の方に向かせた。
「これから仲良くするアル。」
「神楽ちゃん、よろしくね。」
神楽ちゃんは私がそう言うと、ニコッと笑った。
初めて会った天人は、色白で華奢(きゃしゃ)な体のかわいい女の子だった。
2014年11月1日UP
浴衣ぐらいは自分で着られるようになりたいけど、毎年美容院にお願いしている。
お登勢さんは手際よく私に着つけていった。
うっ、きっついー、胸とおなかが締め付けられる。
「なんだィ、これくらいできついのかィ?でも、しっかり締めておかないと、ずるずるに着くずれちまうよ。こればっかりは、とにかく慣れるしかないね。」
お登勢さんは背中をぽん、と叩いた。
「はい、できたよ、なかなかきまってるじゃないか。」
全身が映る姿見の前に立ってみる。
我ながら結構似合ってるかもしれない。
足袋はお妙さんがいくつか用意してくれたサイズの中に合うのがあった。
足袋も履き慣れてないから、足の指のポジションが妙に落ち着かない。
草履を履いてスナックに戻る。
「名前ちゃんかわいいアル。」
「名字さん、似合ってますよ。それと、リラックスリラックス。肩の力抜いて。」
お世辞でもほめてもらえるとうれしいな。
「お登勢様、昼食の用意ができました。」
カウンターには既にお昼が整っていた。
たまさんが志村くんと私の前に、ごはんと出来立てのおかず一人前を並べてくれる。
一方、神楽ちゃんの前には、炊飯ジャーがどーんと置かれた。
ごはんのお代わりは神楽ちゃんの担当のようだ。
「あの、お登勢さんとたまさんは召し上がらないのですか?」
「あたしらは後で食べるから気にしないでさっさとおあがり。」
「何から何まですみません、それじゃあ、いただきます。」
「いただきます。」
神楽ちゃんは、いただきます、の挨拶もそこそこに、炊飯ジャーのふたを開けてそこから猛烈なスピードで直接食べ始めた。
あれは私たちのお代わり用じゃなくて、神楽ちゃん専用の「ごはん」だったのだ。
食べるってより、吸い込む、のほうが正しい。
あっけにとられてると志村くんが苦笑いして教えてくれる。
「神楽ちゃんは地球の外から来た夜兎族の女の子なので、食欲旺盛なんです。初めて会う人はみんな驚くんですよ。」
「やと族?神楽ちゃんは他の星から来たの?」
「天人アルよ。名前ちゃんも天人アルか?」
「多分違うと思う…。」
神楽ちゃんは小さい体なのに沢山食べて大丈夫なのかな。
でも、大食い選手権に出る人は意外にやせてるからなぁ。
それにしてもすごい食べっぷりだ。
「名字様、冷めてしまいますので、どうぞお召し上がりになってください。」
たまさんが呼びかけるまで、私はおはしとお茶碗を持ったまま神楽ちゃんに釘づけだった。
「そうですよ、僕たちもいただきましょう。」
「そういえば、さか…銀さんっていつごろ戻ってくるの?」
銀さん、か。
まだ、呼びなれないな。
「予定だとそろそろ現れてもいいはずだけど、遅いなあ。まあ気にせず食べてましょう。ところで、言いそびれてたけど、僕、みんなから新八って呼ばれているので、そう呼んでください。」
「新八じゃなくて駄メガネアル。」
「えっ、新八くんって呼べばいいんだよね?それとも駄メガネ?どっち?」
「駄メガネアル。」
「だからメガネが本体じゃねーって言ってんだろォォォ!!」
「冗談言ってごめん、駄メガネって二度と呼ばないから二人ともケンカやめてよ、本当ごめんなさい。」
私を挟んで両側に座っている二人は、食事そっちのけでお互いつかみかかりそうな勢いだ。
いくら私が謝っても言い合いを止めてくれない。
ノリでまずい事言っちゃったな。
どうしよう…。
「アンタたちケンカなら外でおやり。ここは私の城だよ。静かにしな。」
お登勢さんの一言で、部屋の空気が一変した。
二人は急にしおらしくなっている。
かくいう私もちょっと恐い。
お登勢さんは女帝だ。
言い争いをやめた新八くんが、照れ隠しで頭をかきながら謝ってくる。
「いや~、いきなりこんなところ見せちゃって恥ずかしいなー。でも、僕らいつもバカやってるんで、本当に気兼ねせずに何でも言ってください。」
「こっちこそふざけてごめん。」
新八くんと向き合って話していた私を、神楽ちゃんが袖を軽く引っ張って自分の方に向かせた。
「これから仲良くするアル。」
「神楽ちゃん、よろしくね。」
神楽ちゃんは私がそう言うと、ニコッと笑った。
初めて会った天人は、色白で華奢(きゃしゃ)な体のかわいい女の子だった。
2014年11月1日UP