Day1-6 10月10日 消灯後 見舞客の正体
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職務質問を受けたら、ごまかしたり、しらを切るのが不審人物の常套手段だ。
まずは刀で脅して口を割らせる。大概はこれで落ちる。
反撃してきたら、腕でも足でも落として尋問にかけりゃいい。
土方のヤローは柳生の当主が女とわかった途端、無意識のうちに手加減して、あっさり負けちまった。
翻って(ひるがえって)俺は、近藤さんの妨げになる奴は、男だろーが女だろーがためらいなく斬る。
覚悟しろィ。
一名分のネームプレートがかかった二人部屋は他の部屋と同様、消灯していた。
引き戸を、そっと開ける。
扉付近に殺気が感じられないのを確認して、侵入する。
窓側のベッドに、女は、布団から両手をだした状態であおむけに目を閉じていた。
一歩ずつ、距離を縮める。
反応はない。
刀の届く範囲まで、間合いを詰める。
女の呼吸に、変化はない。
刀の鯉口を切る。
女は、身じろぎひとつしない。
そろそろ目を覚ましなせィ。
布団の上に腕を投げ出した名字名前は両手に武器を持っていないように見える。
幽霊みてーに、パッと消えちまう自信でもあるのかィ?
コイツが現世の生き物なら、逃げだすルートは二つある。
身体能力を駆使し、超光速で俺の背後の扉から走り去るか、強引に窓を突き破って飛び降りるか、二つに一つだ。
たとえ記憶を失っていても眠っていても殺気を察知すれば本能が発動する。
DNAに埋め込まれた動きは死ぬまで体を支配する。
あの程度のかすり傷なら、動作に支障は全くないだろう。
っーか、さっきから殺気出してるの気づけよ。
降参かィ?
― … -
気にくわねェ。
名字名前は俺の刃が首筋に触れるか触れないか数ミリの距離で当てられても反応しなかった。
無防備に、ひたすらこんこんと眠りこけていた。
気にくわねェ。
名字名前は、ただの鈍くせェ町娘だった。
泣きはらしたまぶたに、乾いた涙の跡。
なまっちょろい腕は懸垂一回もできやしねェだろう。
豆ひとつない、やわらかな手のひらは、刀、クナイ、銃、血生ぐさい武器の一切とは無縁の証だ。
極めつけは間抜けな寝顔ときてやがる。
結局のところ、コイツは、幽霊でも超ハイスペックの天人工作員でもなく、生半可な覚悟で出奔した中流家庭の家出娘といったところかィ。
訳ありには間違いねーだろーが、どーせ、親とけんかしたか、意に沿わない結婚を強いられたとか、そんなオチだろう。
家庭や恋愛関係のゴタゴタはあいにく真選組の管轄外だ。俺の知ったこっちゃねーよ。
コイツは、のんびりと甘やかされて育った風な顔つきをしている。
どうせ数日以内に心配した親が迎えに来るはずだ。
とっとと田舎に帰っちまいな。
あーあ。気にくわねェ。
とんだ無駄足だったぜィ。
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」かよ。
気にくわねェ存在は、テメー自身かィ。
いや、「出現」はホントに見間違いだったのか?
コイツがごく普通の町娘だとしても、その疑問は解消されてねェ。
俺は女狐にでも化かされたのかィ?
とんだ新月の夜だ。
非力な一般人相手にかつて無い敗北感を覚えた俺は、一旦ナースステーションに戻ってミスドの箱を引き取り、見舞客の団らんスペースに設置された自動販売機で缶コーヒーを買い、病室に踵(きびす)をかえすと、ベッド脇のテーブルに箱とコーヒーを、そっと置いた。
「ポンデリングでも食って、元気だしなせェ。」
― 旦那、俺、テメーに負けちまったみたいでさァ… ―
解説&補足は次のページ
2014年10月21日UP
まずは刀で脅して口を割らせる。大概はこれで落ちる。
反撃してきたら、腕でも足でも落として尋問にかけりゃいい。
土方のヤローは柳生の当主が女とわかった途端、無意識のうちに手加減して、あっさり負けちまった。
翻って(ひるがえって)俺は、近藤さんの妨げになる奴は、男だろーが女だろーがためらいなく斬る。
覚悟しろィ。
一名分のネームプレートがかかった二人部屋は他の部屋と同様、消灯していた。
引き戸を、そっと開ける。
扉付近に殺気が感じられないのを確認して、侵入する。
窓側のベッドに、女は、布団から両手をだした状態であおむけに目を閉じていた。
一歩ずつ、距離を縮める。
反応はない。
刀の届く範囲まで、間合いを詰める。
女の呼吸に、変化はない。
刀の鯉口を切る。
女は、身じろぎひとつしない。
そろそろ目を覚ましなせィ。
布団の上に腕を投げ出した名字名前は両手に武器を持っていないように見える。
幽霊みてーに、パッと消えちまう自信でもあるのかィ?
コイツが現世の生き物なら、逃げだすルートは二つある。
身体能力を駆使し、超光速で俺の背後の扉から走り去るか、強引に窓を突き破って飛び降りるか、二つに一つだ。
たとえ記憶を失っていても眠っていても殺気を察知すれば本能が発動する。
DNAに埋め込まれた動きは死ぬまで体を支配する。
あの程度のかすり傷なら、動作に支障は全くないだろう。
っーか、さっきから殺気出してるの気づけよ。
降参かィ?
― … -
気にくわねェ。
名字名前は俺の刃が首筋に触れるか触れないか数ミリの距離で当てられても反応しなかった。
無防備に、ひたすらこんこんと眠りこけていた。
気にくわねェ。
名字名前は、ただの鈍くせェ町娘だった。
泣きはらしたまぶたに、乾いた涙の跡。
なまっちょろい腕は懸垂一回もできやしねェだろう。
豆ひとつない、やわらかな手のひらは、刀、クナイ、銃、血生ぐさい武器の一切とは無縁の証だ。
極めつけは間抜けな寝顔ときてやがる。
結局のところ、コイツは、幽霊でも超ハイスペックの天人工作員でもなく、生半可な覚悟で出奔した中流家庭の家出娘といったところかィ。
訳ありには間違いねーだろーが、どーせ、親とけんかしたか、意に沿わない結婚を強いられたとか、そんなオチだろう。
家庭や恋愛関係のゴタゴタはあいにく真選組の管轄外だ。俺の知ったこっちゃねーよ。
コイツは、のんびりと甘やかされて育った風な顔つきをしている。
どうせ数日以内に心配した親が迎えに来るはずだ。
とっとと田舎に帰っちまいな。
あーあ。気にくわねェ。
とんだ無駄足だったぜィ。
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」かよ。
気にくわねェ存在は、テメー自身かィ。
いや、「出現」はホントに見間違いだったのか?
コイツがごく普通の町娘だとしても、その疑問は解消されてねェ。
俺は女狐にでも化かされたのかィ?
とんだ新月の夜だ。
非力な一般人相手にかつて無い敗北感を覚えた俺は、一旦ナースステーションに戻ってミスドの箱を引き取り、見舞客の団らんスペースに設置された自動販売機で缶コーヒーを買い、病室に踵(きびす)をかえすと、ベッド脇のテーブルに箱とコーヒーを、そっと置いた。
「ポンデリングでも食って、元気だしなせェ。」
― 旦那、俺、テメーに負けちまったみたいでさァ… ―
解説&補足は次のページ
2014年10月21日UP