思い出した。
私には仲が良かった男の子がいた。
とても小さくてサッカーが大好きだった。
今までその記憶を忘れていた、いや閉じ込めてたんだ。
あの時が私にとって大好きな時間で幸せな時間。
そんな時間も呆気なく終わった。




私は〇〇ただの女子中学生。
頭は悪いし、人見知り。でも、昔は陽気で常に笑顔だったらしい。
そんな曖昧な理由は。
昔の記憶がないからだ。
否…
ないわけではない。思い出したくないんだ。
思い出すことによって、またあの子に会いたくなるんだから。

今から約10年前
私とあの子が出会った
いつものように女の子達と積み木や、お絵描きで楽しんでいた。

｢わぁ、、〇〇ちゃんおえかきじょぉーず！！｣
｢へへん！でしょ！｣
｢あらあら、ほんとね。将来はマンガ家さんかなぁ？｣
｢漫画家、、？｣
｢そう！お絵描きのお仕事よ｣
｢すごぉい、、、でも〇〇漫画家さんになれるかなぁ｣
｢〇〇ちゃんなら慣れるわよ！！｣
｢自信ないよ。それに前にママが言ってたもん、お勉強しないといい仕事はできないって、、そんなお絵描きじゃお金なんて稼げないって。｣
｢あら、そうなの、？でもね〇〇ちゃんは自分のなりたいのになってね。お母さんの言うことは大事だけど、あなたはあなたなんだから。｣
｢う、うん。｣

私と保育園の先生。
未だに記憶が残っている。
先生が私の事を励ましたこと、親にいつも叱られたこと。全て。

私にとって仕事は大変なもので、好きなことでは生きていけないんだって。小さい子供ながらにもそんな事を考えていた。

でも、心の奥底では自分の大好きなことでみんなを自分を、幸せにしたい。
そんな想いが密かにあった。

でも母親は認めてはくれなかった。
母親にいい自分を見せたい一心で、絵を描くのを辞めた。
いつも絵を描いていた私が絵を描かない。
先生は珍しがっているが、周りは私のことを見ていない。だからわからない。
みんな私の事を忘れている。
そんなことを思ったのも束の間

ある男の子に聞かれたのだ。
｢ねぇ、なんでお絵描きしないの？｣
突然問われた。
始めてみる男の子だった。
まず男の子と関わらないから誰が誰かすら認知していなかった。
でもそう問われて。
｢私には必要ないの。。だからやめたの。｣
｢それって、自分で思ったの？｣
｢ううん、、でもやらない方がお母さんは喜んでくれるの｣
｢〇〇は描きたくないの？｣
｢描きたいけど、、｣
｢じゃあ描こうよ！！〇〇はお絵描きが好き！俺はサッカーが好き！好きなことした方が幸せだよ！！｣
｢え、、、うん。そうだけど、そういえばなんで私の名前知ってるの、？｣
｢えぇ？？覚えてるよ！だっていつもお絵描きしてるんだもん！｣
｢そ、そっか。。でも私、、君の名前知らない。。｣
｢俺は円堂守！！よろしくね！〇〇｣
｢う、うん！！｣
これが円堂守と私の出会い。
でもその数ヶ月に、親の離婚で引っ越した。

｢私ね。。ここから離れちゃうの。｣
｢え？？なんで！｣
｢わかんないんだけど、お家変わるんだって。
遠くなっちゃうから違う所に行くんだって。｣
｢ごめんね。。せっかく仲良くなったのに。｣

｢そっか。。俺すごい寂しいけど男だから泣かないし止めない！でも！絶対会うからね！俺〇〇のこと見つけたら絶対名前呼ぶから！！｣
｢うん！！お願いね！！｣
それが私と円堂守くんとの最後の会話だった。