きみと謳う日常を
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最近本当についてないなぁ。私は日が暮れてとっくに暗くなった道を、学校へ向かって歩いていた。
2学期になって何があったかというと、席替えだ。席自体は窓際の後ろから3番目とまずまずの位置だった。それは喜ばしい。でも世の中そう上手くはいかず、京谷くんとは席が離れてしまった。京谷くんは廊下側から2列目、後ろから2番目の席。
せっかく打ち解けてきたのに、なんだか残念だ。委員会で会うから全く話さなくなるわけではないけれど、今までみたいな他愛ない話ができなくなると思うと寂しい。いや、そんなに雑談はしてないかな。
そんな気分だからだろうか、明日は小テストがあるというのに教科書を学校に置き忘れてしまった。だからとぼとぼと暗い道を学校目指し歩いているのだった。
教室で目当てのものを回収して外に出ると、他にも校門から出ようとしている人たちがいた。部活を終えた人たちが帰り始めたらしかった。その中に街灯に照らされて光る金色があった。部活はやってないって言ってたから一瞬違うかな、と思ったけど、もうその姿を見間違えたりはしない。
「京谷くん!」
京谷くんに駆け寄る。部活帰りの集団から離れていたので話しかけやすかった。
京谷くんは何でここにいる、という顔をしている。
「何でここにいる」
ほら、やっぱりそう思ってた。
「学校に忘れ物しちゃって」
そう言ってえへへ、と笑うと「狂犬ちゃーん、なになに彼女ー?」という声が後ろから聞こえた。振り返るとあの有名なイケメン、及川さんだった。その周りも同じジャージを着ているのでバレー部の人たちみたいだ。
ふと京谷くんを見ると、京谷くんもバレー部のジャージを着ているではないか。
及川さんの発言も忘れ、京谷くんのジャージをまじまじと見てどういうことかと考えていたら、及川さんがまた話しかけてきた。
「ふたり揃って無視しないでくれる!?及川さん泣くよ!?」
「え!ごめんなさい、泣かないでください!」
及川さんが思っていたのと微妙に印象が違う。焦って及川さんをなだめたが及川さんは変わらず泣き真似をするので私は困り果ててしまった。
京谷くんは目を細めて黙っている。これはめんどくさいって顔かな。ちょっとわかる。
「おいクソ及川、後輩に絡むんじゃねぇ!京谷、帰っていいぞ、お疲れ」
及川さんに「岩ちゃん!毎回叩くのやめてよ!」と言われている男前なお兄さんが助けてくれた。
「久原、帰るぞ」
そう言って京谷くんが校門を出るのを私は追いかけた。背後から「京谷に彼女が・・・!?」という声が聞こえ、背中に視線を感じる。
戻って訂正した方がいいかな、と思ったがだいぶ遠ざかってしまったので諦めた。京谷くんも気にしていないようだし。
私は先程から気になっていたことを京谷くんに聞いた。
「京谷くん、部活入ったの?」
「・・・もともと入ってた」
「あ、じゃあお休みしてたってことか」
京谷くんはぽつぽつと休んでから復帰するまでの経緯を話してくれた。
◇
「ここまででいいよ、ありがとう」
家の近くまで京谷くんが一緒に来てくれた。私の家まで来ると京谷くんが家に帰るのが遅くなってしまうので、私は京谷くんにお礼を言って別れようとした。
「家まで送る」
そんな私の考えなどおかまいなしに京谷くんが歩き出す。
「京谷くん、帰るの遅くなっちゃうよ」
「暗くてあぶねぇだろ」
「そうだけど・・・」
渋っていると京谷くんが私の腕を引っ張って歩くように促した。ぐっと私を引っ張る京谷くんの力強さに私は何も言えなくなった。掴まれた腕が熱い。仕方ないので、私は再び京谷くんの隣を歩き始めた。
私の家の前に着いた。
「送らせちゃってごめんね、ありがとう。また明日ね」
京谷くんが歩き出すのを見送ろうと待っていたら京谷くんがスマホを取り出した。
「連絡先寄越せ」
「えっ、ハイ」
京谷くんの鋭い視線に捉えられ、息が止まるかと思った。混乱しながら私もスマホを取り出し、連絡先を教える。
「夜遅くなる時は連絡しろ」
そう言ってじゃあな、と京谷くんは闇の中へと消えていく。
夜遅くなる時は、一緒に帰ってくれるってことかな。生まれて初めて心臓がぎゅうっとなった。
ドキドキして、その日の夜はなかなか眠れなかった。
2019.3.30
2学期になって何があったかというと、席替えだ。席自体は窓際の後ろから3番目とまずまずの位置だった。それは喜ばしい。でも世の中そう上手くはいかず、京谷くんとは席が離れてしまった。京谷くんは廊下側から2列目、後ろから2番目の席。
せっかく打ち解けてきたのに、なんだか残念だ。委員会で会うから全く話さなくなるわけではないけれど、今までみたいな他愛ない話ができなくなると思うと寂しい。いや、そんなに雑談はしてないかな。
そんな気分だからだろうか、明日は小テストがあるというのに教科書を学校に置き忘れてしまった。だからとぼとぼと暗い道を学校目指し歩いているのだった。
教室で目当てのものを回収して外に出ると、他にも校門から出ようとしている人たちがいた。部活を終えた人たちが帰り始めたらしかった。その中に街灯に照らされて光る金色があった。部活はやってないって言ってたから一瞬違うかな、と思ったけど、もうその姿を見間違えたりはしない。
「京谷くん!」
京谷くんに駆け寄る。部活帰りの集団から離れていたので話しかけやすかった。
京谷くんは何でここにいる、という顔をしている。
「何でここにいる」
ほら、やっぱりそう思ってた。
「学校に忘れ物しちゃって」
そう言ってえへへ、と笑うと「狂犬ちゃーん、なになに彼女ー?」という声が後ろから聞こえた。振り返るとあの有名なイケメン、及川さんだった。その周りも同じジャージを着ているのでバレー部の人たちみたいだ。
ふと京谷くんを見ると、京谷くんもバレー部のジャージを着ているではないか。
及川さんの発言も忘れ、京谷くんのジャージをまじまじと見てどういうことかと考えていたら、及川さんがまた話しかけてきた。
「ふたり揃って無視しないでくれる!?及川さん泣くよ!?」
「え!ごめんなさい、泣かないでください!」
及川さんが思っていたのと微妙に印象が違う。焦って及川さんをなだめたが及川さんは変わらず泣き真似をするので私は困り果ててしまった。
京谷くんは目を細めて黙っている。これはめんどくさいって顔かな。ちょっとわかる。
「おいクソ及川、後輩に絡むんじゃねぇ!京谷、帰っていいぞ、お疲れ」
及川さんに「岩ちゃん!毎回叩くのやめてよ!」と言われている男前なお兄さんが助けてくれた。
「久原、帰るぞ」
そう言って京谷くんが校門を出るのを私は追いかけた。背後から「京谷に彼女が・・・!?」という声が聞こえ、背中に視線を感じる。
戻って訂正した方がいいかな、と思ったがだいぶ遠ざかってしまったので諦めた。京谷くんも気にしていないようだし。
私は先程から気になっていたことを京谷くんに聞いた。
「京谷くん、部活入ったの?」
「・・・もともと入ってた」
「あ、じゃあお休みしてたってことか」
京谷くんはぽつぽつと休んでから復帰するまでの経緯を話してくれた。
◇
「ここまででいいよ、ありがとう」
家の近くまで京谷くんが一緒に来てくれた。私の家まで来ると京谷くんが家に帰るのが遅くなってしまうので、私は京谷くんにお礼を言って別れようとした。
「家まで送る」
そんな私の考えなどおかまいなしに京谷くんが歩き出す。
「京谷くん、帰るの遅くなっちゃうよ」
「暗くてあぶねぇだろ」
「そうだけど・・・」
渋っていると京谷くんが私の腕を引っ張って歩くように促した。ぐっと私を引っ張る京谷くんの力強さに私は何も言えなくなった。掴まれた腕が熱い。仕方ないので、私は再び京谷くんの隣を歩き始めた。
私の家の前に着いた。
「送らせちゃってごめんね、ありがとう。また明日ね」
京谷くんが歩き出すのを見送ろうと待っていたら京谷くんがスマホを取り出した。
「連絡先寄越せ」
「えっ、ハイ」
京谷くんの鋭い視線に捉えられ、息が止まるかと思った。混乱しながら私もスマホを取り出し、連絡先を教える。
「夜遅くなる時は連絡しろ」
そう言ってじゃあな、と京谷くんは闇の中へと消えていく。
夜遅くなる時は、一緒に帰ってくれるってことかな。生まれて初めて心臓がぎゅうっとなった。
ドキドキして、その日の夜はなかなか眠れなかった。
2019.3.30