きみと謳う日常を
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ここ数年の温暖化はすごい。東北は日本の中では北の方だけど、暑い。
夏休みの宿題をやらなきゃいけないけど、何もする気が起きない。暑さを言い訳にして宿題もせずソファーで寝そべっていたが、何か涼をとるものがないかと立ち上がって冷蔵庫を開けてみた。
ドアポケットにまだ開けたばかりのオレンジジュースがある。それを見て昨年の夏に部活でアイスキャンディを手作りしたのを思い出した。オレンジジュースと缶詰のみかんを混ぜて凍らせるだけ。簡単に作れるアイスキャンディだ。爽やかな風味と冷たい食感が夏にぴったりの一品。想像した途端食べたくなってきた。
凍らすのに時間が必要なのですぐには食べられないのが残念だけど、今から凍らせれば明日食べられる。
頭の中で今日明日の予定を組み、涼をとるという名目で私は久しぶりのお菓子作りに取りかかった。正しくは現実逃避なわけだけど。テスト前ほど部屋を片付けたくなる、というのはよくあることだ。
◇
そうは言っても宿題をやらないわけには行かないので、翌日は図書館で勉強することにした。家の電気代も節約できるし、テレビもないから集中できる。
手作りアイスキャンディというにんじんをぶら下げ奮闘した結果、今日終わらせると決めていた分は終わらせることができた。
るんるん気分で自転車にまたがり家へ向かって走り出すと、最初の交差点で知っている後姿を見つけた。私と同じように自転車に乗っている彼の顔を念のため確認しようと、彼に並んで信号を待つ。そっと顔を確認すると思っていた通りの人だった。
「京谷くん、久しぶり!」
こっちを向いて目を丸くした京谷くんが「おう」と返してくれた。今日はTシャツに短パンといういでたちで、制服姿しか見たことがなかった私には新鮮だった。エナメルバッグを持っているので、どこかで体を動かしてきた帰りだろうか。
「バレーの帰り?」
そう聞くと京谷くんはこくりと頷く。
「そっか、お疲れ様。暑いから移動するだけでも疲れちゃうよね」
「ほんと、あついな」
そう言ってタオルで額をぬぐう京谷くんを見て、昨日作った冷たいお菓子を思い出した。いくつか作ったから、京谷くんに分けてあげたいな。
「京谷くん、お家どっち?このあと少しだけ時間ある?」
私の矢継ぎ早の質問に戸惑いつつも京谷くんはひとつずつ答えてくれた。京谷くんち、意外とうちに近かったんだな。知らなかった。
「食べてほしいものがあるから、ちょっとうちの近くまで来てくれないかな?」
私たちは自転車を飛ばして、私の家の近くの公園に向かった。
◇
クラスメイトとはいえ男の子を家に招き入れるわけにはいかないので、京谷くんには公園のベンチで待ってもらい、私は急いで手作りのアイスキャンディを取りに家へ帰った。そして冷凍庫から出した2本のアイスキャンディを食品用のビニール袋へ入れ、小走りで公園に戻った。
ベンチに近づく私を、地面を凝視していた京谷くんが見上げた。私が戻るのをじっと待っていた京谷くんを想像して、心がほっこりと温かくなった。
「これ、アイスキャンディ作ったんだ」
そう言って袋から出したみかん味のアイスキャンディを京谷くんに渡す。
「・・・手作り」
「うん。凝ったものじゃないけどね。前に部活で作ったものあげるって話したでしょ?部活で作ったわけではないけどさ」
「あざす」
じーっとアイスキャンディを見つめる京谷くんに、溶けちゃうから早く食べて、と言うと京谷くんががぶりとアイスを噛んだ。咀嚼とともに動く喉に、不思議と目がいってしまう。
「・・・うまい」
「よかったー!っていっても、ベースがオレンジジュースだからね。味に間違いはないはず」
私もアイスに噛みつく。自分の作ったものをおいしいと言ってもらえるのはうれしい。最初は怖いと思っていた京谷くんに言ってもらえるとなおさらだ。冷たいものが喉を通ってお腹に落ちる感覚が火照った体に気持ちいい。
私たちはベンチで並んで座り、無言でアイスキャンディをかじっていた。
2019.3.27
夏休みの宿題をやらなきゃいけないけど、何もする気が起きない。暑さを言い訳にして宿題もせずソファーで寝そべっていたが、何か涼をとるものがないかと立ち上がって冷蔵庫を開けてみた。
ドアポケットにまだ開けたばかりのオレンジジュースがある。それを見て昨年の夏に部活でアイスキャンディを手作りしたのを思い出した。オレンジジュースと缶詰のみかんを混ぜて凍らせるだけ。簡単に作れるアイスキャンディだ。爽やかな風味と冷たい食感が夏にぴったりの一品。想像した途端食べたくなってきた。
凍らすのに時間が必要なのですぐには食べられないのが残念だけど、今から凍らせれば明日食べられる。
頭の中で今日明日の予定を組み、涼をとるという名目で私は久しぶりのお菓子作りに取りかかった。正しくは現実逃避なわけだけど。テスト前ほど部屋を片付けたくなる、というのはよくあることだ。
◇
そうは言っても宿題をやらないわけには行かないので、翌日は図書館で勉強することにした。家の電気代も節約できるし、テレビもないから集中できる。
手作りアイスキャンディというにんじんをぶら下げ奮闘した結果、今日終わらせると決めていた分は終わらせることができた。
るんるん気分で自転車にまたがり家へ向かって走り出すと、最初の交差点で知っている後姿を見つけた。私と同じように自転車に乗っている彼の顔を念のため確認しようと、彼に並んで信号を待つ。そっと顔を確認すると思っていた通りの人だった。
「京谷くん、久しぶり!」
こっちを向いて目を丸くした京谷くんが「おう」と返してくれた。今日はTシャツに短パンといういでたちで、制服姿しか見たことがなかった私には新鮮だった。エナメルバッグを持っているので、どこかで体を動かしてきた帰りだろうか。
「バレーの帰り?」
そう聞くと京谷くんはこくりと頷く。
「そっか、お疲れ様。暑いから移動するだけでも疲れちゃうよね」
「ほんと、あついな」
そう言ってタオルで額をぬぐう京谷くんを見て、昨日作った冷たいお菓子を思い出した。いくつか作ったから、京谷くんに分けてあげたいな。
「京谷くん、お家どっち?このあと少しだけ時間ある?」
私の矢継ぎ早の質問に戸惑いつつも京谷くんはひとつずつ答えてくれた。京谷くんち、意外とうちに近かったんだな。知らなかった。
「食べてほしいものがあるから、ちょっとうちの近くまで来てくれないかな?」
私たちは自転車を飛ばして、私の家の近くの公園に向かった。
◇
クラスメイトとはいえ男の子を家に招き入れるわけにはいかないので、京谷くんには公園のベンチで待ってもらい、私は急いで手作りのアイスキャンディを取りに家へ帰った。そして冷凍庫から出した2本のアイスキャンディを食品用のビニール袋へ入れ、小走りで公園に戻った。
ベンチに近づく私を、地面を凝視していた京谷くんが見上げた。私が戻るのをじっと待っていた京谷くんを想像して、心がほっこりと温かくなった。
「これ、アイスキャンディ作ったんだ」
そう言って袋から出したみかん味のアイスキャンディを京谷くんに渡す。
「・・・手作り」
「うん。凝ったものじゃないけどね。前に部活で作ったものあげるって話したでしょ?部活で作ったわけではないけどさ」
「あざす」
じーっとアイスキャンディを見つめる京谷くんに、溶けちゃうから早く食べて、と言うと京谷くんががぶりとアイスを噛んだ。咀嚼とともに動く喉に、不思議と目がいってしまう。
「・・・うまい」
「よかったー!っていっても、ベースがオレンジジュースだからね。味に間違いはないはず」
私もアイスに噛みつく。自分の作ったものをおいしいと言ってもらえるのはうれしい。最初は怖いと思っていた京谷くんに言ってもらえるとなおさらだ。冷たいものが喉を通ってお腹に落ちる感覚が火照った体に気持ちいい。
私たちはベンチで並んで座り、無言でアイスキャンディをかじっていた。
2019.3.27