きみと謳う日常を
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「あずさちゃん、京谷くんと仲いいよね~」
昼休み。ご飯を食べているとき、2年生になってからこのクラスで仲よくなった友人に、感心したように言われた。
そうだっけ?確かに他の男子よりは頻繁に話す気がするけど(男子と話す用事がそもそもあまりない)、別に仲いいというほどではない気がする。
私は最近の京谷くんとのやりとりを思い出した。
◇
京谷くんは最近、授業中によく寝ている。新学期最初の頃はちゃんと起きてたはずだけど、だんだん船を漕ぐようになり、最近はもう諦めて寝てしまっている。だから当然授業中のノートは真っ白だ。
私はというと、眠いときはあるけれど基本的には起きている。授業中に集中する方が効率が良いから。とは言ってみたものの、他のことを考えていて先生の話を聞いてないことも多いんだけど。
京谷くんは私がノートだけはちゃんと取っていることを知ってか、私にノートを借りるのだった。
「ノート貸してくれ」
「どうぞ」
直前の授業のノートを手渡す。次の授業までの10分間で京谷くんはノートを写して返してくれる。
「あざす」
「いえいえ、こちらこそね」
「・・・」
私は自然と頬が弛んでしまう。だって、京谷くんはノートを返してくれるとき、何回かに1回、小さなお菓子を添えてくれるのだ。昨日は一口サイズのチョコだったな。お礼ってことなんだろう。
私もお礼を言うと、京谷くんはいつもさっさと目を反らして席に着いてしまう。最初はこれも怒っているのかと思ったが、毎回こんな感じなので、そういうわけではなさそうだ。
先週の委員会ではこんなこともあったっけ。
委員会ではクラスごとに本棚が割り当てられ、蔵書の整理をする。だから私は毎回、京谷くんと一緒に本を順番に並べ替えたりするのだ。
先週、私たちはたまたま監督する先生の定位置に近い本棚が割り当てられたため、新しい蔵書を運ぶようお声がかかってしまった。近くの生徒を呼ぶのが楽だからだろう。
まあまあ量があったので、これはふたりでやっても3往復くらいかかるかな、と私は少しうんざりしていたら、京谷くんが本を運び始めた。
「多くない!?大丈夫・・・?」
「平気」
京谷くんが一人が持てるより明らかに多い量の本を重ねて持ったので、私は慌ててしまった。筋力あるなー。
「お前は持てる分だけ持て。無理すんな」
おまけにこんな紳士なことまで言ってくれるのだ。これにはさすがにときめいてしまった。しかも京谷くんが単語ではなく文章で話してくれたのもあって、私はすっかり感激してしまった。
「ありがとう、京谷くん!」
お言葉に甘えて私は持てる分を持ち、2往復で作業は終わったのだった。
◇
「席が隣で委員会も一緒だからだよ」
最近の出来事を思い出しながら、京谷くんと仲いいよね、という冒頭の友人の言葉に私はこう返した。京谷くんのことをみんなよりは少しだけ多く知ってるのかも、とは思うけど。でもそれはやっぱり、偶然の為せる技だ。
しかし友人は食い下がる。
「いやそんなことないって!他の人と全然話さないよ、京谷くん」
大げさな、と私は苦笑した。確かに、一匹狼なのは事実なんだけど。
みんなに京谷くんの優しいところをい知ってほしい反面、自分だけが知っているという優越感をまだ手放したくなくて、京谷くんとの間にあった小さな出来事たちは友人にもまだ内緒にすることにした。
2019.3.13
昼休み。ご飯を食べているとき、2年生になってからこのクラスで仲よくなった友人に、感心したように言われた。
そうだっけ?確かに他の男子よりは頻繁に話す気がするけど(男子と話す用事がそもそもあまりない)、別に仲いいというほどではない気がする。
私は最近の京谷くんとのやりとりを思い出した。
◇
京谷くんは最近、授業中によく寝ている。新学期最初の頃はちゃんと起きてたはずだけど、だんだん船を漕ぐようになり、最近はもう諦めて寝てしまっている。だから当然授業中のノートは真っ白だ。
私はというと、眠いときはあるけれど基本的には起きている。授業中に集中する方が効率が良いから。とは言ってみたものの、他のことを考えていて先生の話を聞いてないことも多いんだけど。
京谷くんは私がノートだけはちゃんと取っていることを知ってか、私にノートを借りるのだった。
「ノート貸してくれ」
「どうぞ」
直前の授業のノートを手渡す。次の授業までの10分間で京谷くんはノートを写して返してくれる。
「あざす」
「いえいえ、こちらこそね」
「・・・」
私は自然と頬が弛んでしまう。だって、京谷くんはノートを返してくれるとき、何回かに1回、小さなお菓子を添えてくれるのだ。昨日は一口サイズのチョコだったな。お礼ってことなんだろう。
私もお礼を言うと、京谷くんはいつもさっさと目を反らして席に着いてしまう。最初はこれも怒っているのかと思ったが、毎回こんな感じなので、そういうわけではなさそうだ。
先週の委員会ではこんなこともあったっけ。
委員会ではクラスごとに本棚が割り当てられ、蔵書の整理をする。だから私は毎回、京谷くんと一緒に本を順番に並べ替えたりするのだ。
先週、私たちはたまたま監督する先生の定位置に近い本棚が割り当てられたため、新しい蔵書を運ぶようお声がかかってしまった。近くの生徒を呼ぶのが楽だからだろう。
まあまあ量があったので、これはふたりでやっても3往復くらいかかるかな、と私は少しうんざりしていたら、京谷くんが本を運び始めた。
「多くない!?大丈夫・・・?」
「平気」
京谷くんが一人が持てるより明らかに多い量の本を重ねて持ったので、私は慌ててしまった。筋力あるなー。
「お前は持てる分だけ持て。無理すんな」
おまけにこんな紳士なことまで言ってくれるのだ。これにはさすがにときめいてしまった。しかも京谷くんが単語ではなく文章で話してくれたのもあって、私はすっかり感激してしまった。
「ありがとう、京谷くん!」
お言葉に甘えて私は持てる分を持ち、2往復で作業は終わったのだった。
◇
「席が隣で委員会も一緒だからだよ」
最近の出来事を思い出しながら、京谷くんと仲いいよね、という冒頭の友人の言葉に私はこう返した。京谷くんのことをみんなよりは少しだけ多く知ってるのかも、とは思うけど。でもそれはやっぱり、偶然の為せる技だ。
しかし友人は食い下がる。
「いやそんなことないって!他の人と全然話さないよ、京谷くん」
大げさな、と私は苦笑した。確かに、一匹狼なのは事実なんだけど。
みんなに京谷くんの優しいところをい知ってほしい反面、自分だけが知っているという優越感をまだ手放したくなくて、京谷くんとの間にあった小さな出来事たちは友人にもまだ内緒にすることにした。
2019.3.13