ふたりだけの落下速度
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私と飛雄は烏野高校に進学した。私は進学クラスだから、飛雄と同じクラスになることはないだろう。
飛雄は紆余曲折ありながらもバレー部でうまくやっているようだ。日向くんのことだったり、コミュニケーションの取り方だったりを時々私に相談しにくる。
そしてつい先日、春高の決勝を希望者は観戦できるというので私も応援に行き、烏野バレー部が宮城代表になるのをこの目で見て、目元がうるんでしまった。
そんな興奮冷めやらぬ10月末。昼休みに外の自販機へ飲み物を買いに出かけると、自販機の前で眉間にしわを寄せる飛雄に出くわした。
「飛雄、何してんの?」
「ヨーグルトと牛乳で迷ってる・・・」
「じゃあヨーグルトで。」
そう言ってピッとボタンを押してやった。
ガコンッと紙パックが落ちる音を聞いて、取り出し口からヨーグルトを出し、飛雄に渡す。
「勝手に押すんじゃねぇよ・・・。」
「私だって飲み物買いたいし。牛乳は明日にすればいいじゃん。っていうか牛乳は家でも飲むでしょ。」
「・・・。」
図星のようだ。ヨーグルトと牛乳であんなに悩んで、もっと大きな悩みはどうするつもりなんだろうか。いや、逆にそれしか悩みがないのか。
私も自販機にお金を入れ、甘いミルクティーのボタンを押した。普段は無糖を飲むのだが、たまに甘いのが無性に飲みたくなる。
「じゃあね~。」
欲しいものも手に入れたので、ひらひらと手を振って教室に戻ろうとすると、飛雄にぐいっと腕を引っ張られ、木陰に連れ込まれた。
「どうしたの?」
「・・・トリックオアトリート。菓子くれ。」
「子どもか。」
そうか、今日は10月31日だった。思い返せば教室でもはしゃいでいる人がいた気がする。私は特に何もしないので忘れていた。
「急にどうしたの?」
「日向がやってたから・・・やってみた。」
「あはは、さすが日向くん。でも残念、私は今何も持ってませーん。」
おどけてみせると突然、飛雄の眼光が鋭くなった。
「じゃあ、いたずらしてやる。」
飛雄はそう言って私のほっぺに手を添えると、顔を近づけてきた。
驚いてぎゅっと目を瞑ると、手が添えられているのと反対側のほっぺに、ふにっとした感触がした。
と、飛雄が、ほっぺにちゅーだと・・・!?
目を開くとほんのりと頬を染めて目をそらしている飛雄がいた。
「ほんとにどうしたの飛雄・・・!」
「うるせぇな、たまにはイチャイチャしてぇんだよ何が悪い。・・・教室に戻る。」
すっかり照れて教室に戻ろうとする飛雄の腕を今度は私が引っ張った。
「待って、飛雄。トリックオアトリート、お菓子ちょうだい?」
「持ってねぇよ。」
「ヨーグルトも可。」
「やらねぇ。」
飛雄がちらっとこっちを見る。いたずらされるのを待っているのだろう。
でも、飛雄と同じことなんてしてやらない。もっとすごいこと、してやるんだから。
「じゃあ、いたずらしちゃうね。」
飛雄の前に回り込むと、私は飛雄の胸当りの制服を掴んで、少し自分に引き寄せた。かかとをそっと上げて飛雄に顔を近づける。
そして自分の唇を、飛雄のそれに押し付けた。
2秒ほどで唇を離すと、飛雄の顔は真っ赤になっていた。
「な、な、なんだお前。急に、なんだ!」
「・・・嫌だった?」
にやにやしながらそう聞くと、飛雄は「嫌じゃねぇよ。」とそっけなくつぶやいた。飛雄は耳まで真っ赤にしている。
私のほっぺも熱い。お互い何やってるんだか。
これが、私たちのファーストキスだった。
飛雄は紆余曲折ありながらもバレー部でうまくやっているようだ。日向くんのことだったり、コミュニケーションの取り方だったりを時々私に相談しにくる。
そしてつい先日、春高の決勝を希望者は観戦できるというので私も応援に行き、烏野バレー部が宮城代表になるのをこの目で見て、目元がうるんでしまった。
そんな興奮冷めやらぬ10月末。昼休みに外の自販機へ飲み物を買いに出かけると、自販機の前で眉間にしわを寄せる飛雄に出くわした。
「飛雄、何してんの?」
「ヨーグルトと牛乳で迷ってる・・・」
「じゃあヨーグルトで。」
そう言ってピッとボタンを押してやった。
ガコンッと紙パックが落ちる音を聞いて、取り出し口からヨーグルトを出し、飛雄に渡す。
「勝手に押すんじゃねぇよ・・・。」
「私だって飲み物買いたいし。牛乳は明日にすればいいじゃん。っていうか牛乳は家でも飲むでしょ。」
「・・・。」
図星のようだ。ヨーグルトと牛乳であんなに悩んで、もっと大きな悩みはどうするつもりなんだろうか。いや、逆にそれしか悩みがないのか。
私も自販機にお金を入れ、甘いミルクティーのボタンを押した。普段は無糖を飲むのだが、たまに甘いのが無性に飲みたくなる。
「じゃあね~。」
欲しいものも手に入れたので、ひらひらと手を振って教室に戻ろうとすると、飛雄にぐいっと腕を引っ張られ、木陰に連れ込まれた。
「どうしたの?」
「・・・トリックオアトリート。菓子くれ。」
「子どもか。」
そうか、今日は10月31日だった。思い返せば教室でもはしゃいでいる人がいた気がする。私は特に何もしないので忘れていた。
「急にどうしたの?」
「日向がやってたから・・・やってみた。」
「あはは、さすが日向くん。でも残念、私は今何も持ってませーん。」
おどけてみせると突然、飛雄の眼光が鋭くなった。
「じゃあ、いたずらしてやる。」
飛雄はそう言って私のほっぺに手を添えると、顔を近づけてきた。
驚いてぎゅっと目を瞑ると、手が添えられているのと反対側のほっぺに、ふにっとした感触がした。
と、飛雄が、ほっぺにちゅーだと・・・!?
目を開くとほんのりと頬を染めて目をそらしている飛雄がいた。
「ほんとにどうしたの飛雄・・・!」
「うるせぇな、たまにはイチャイチャしてぇんだよ何が悪い。・・・教室に戻る。」
すっかり照れて教室に戻ろうとする飛雄の腕を今度は私が引っ張った。
「待って、飛雄。トリックオアトリート、お菓子ちょうだい?」
「持ってねぇよ。」
「ヨーグルトも可。」
「やらねぇ。」
飛雄がちらっとこっちを見る。いたずらされるのを待っているのだろう。
でも、飛雄と同じことなんてしてやらない。もっとすごいこと、してやるんだから。
「じゃあ、いたずらしちゃうね。」
飛雄の前に回り込むと、私は飛雄の胸当りの制服を掴んで、少し自分に引き寄せた。かかとをそっと上げて飛雄に顔を近づける。
そして自分の唇を、飛雄のそれに押し付けた。
2秒ほどで唇を離すと、飛雄の顔は真っ赤になっていた。
「な、な、なんだお前。急に、なんだ!」
「・・・嫌だった?」
にやにやしながらそう聞くと、飛雄は「嫌じゃねぇよ。」とそっけなくつぶやいた。飛雄は耳まで真っ赤にしている。
私のほっぺも熱い。お互い何やってるんだか。
これが、私たちのファーストキスだった。