ヒーロー
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「ほーら久原ちゃん、アイスだぞ~」
6月も終わり。夏本番はこれからだというのに、暑いこと暑いこと。最近、先輩たちが部活帰りにコンビニでアイスを奢ってくれるようになった。最初は肉まんを奢ってもらっていたが、もはや肉まんの熱さに耐えられない。
「ありがとうございます、黒尾さん!」
今日は黒尾さん奢りのターンだ。私はゆず味のアイスバーを選ばせていただいた。袋をばりっと開け、アイスを一口かじる。んー、冷たくて気持ちいい。柑橘系の爽やかな味がより一層涼しい気分にさせてくれる。あくまで気分だけど。先輩たちは後輩にこんなに奢って、お財布事情が心配だ。
「あずさ、何のアイスにした?」
「ゆず味のアイスバー。リエーフは?」
「それの味ちがい!ソーダ味!」
「ソーダもおいしいよねぇ」
「食べる?」
リエーフはそう言って私に水色のアイスバーを差し出す。え、リエーフの食べかけなんですが。女友達とお互いの料理を味見しあったりすることはたまにある。でも、男子となんてない。しかもアイスですよ?
不思議といやではないけど、でもただの友だちだし、抵抗がある。
「や、いいよ。自分で食べなよ」
「えー、俺もゆず味食べたい」
「え?話が見えないんだけど」
「だーかーらー、俺にもゆず味一口ちょうだい!」
私のアイスバーを一口くれということか。いやいや、私が口付けたやつだからだめだって。
「だめー。黒尾さんがせっかく買ってくれたんだから一人で食べるんですぅ~」
リエーフを傷つけないよう、とっさに言い訳した。
てっきり「ケチ~!」とか言うものだと思っていたが、リエーフの反応は意外なものだった。
「俺が買ったアイスなら、くれんのかよ?」
なぜそうなる。でも、いやではないんだよなぁ。自分が節操なしだと思われるのがいやなだけで。
「う、うん」
「おいそこ、いつまでイチャイチャしてやがる!」
小さい声でうっかり滑り出た肯定の言葉は、猛虎さんの大声にかき消された。
「なんなんだお前ら!カップルか!部員と女子マネの王道カップルなのか!チクショォォォ!」
猛虎さんはそう叫びながら走って行ってしまった。犬岡くんがその背中に向かってのんきに「おつかれさまでーす」と声をかけている。
どう見てもカップルじゃない。ただの友だち・・・ただの友だち?
「まぁ実際、お前ら仲いいよな~」
しゃくしゃくとアイスをかじりながらにやーっと笑って夜久さんが言う。
「しょっちゅうじゃれてるもんなぁ。久原と一番長くいるの、リエーフなんじゃないか?」
夜久さんの言葉に頷く海さん。
確かに、クラスが一緒だし、部活中もよくリエーフが話しかけてくれる。リエーフがいてくれるから部活に入れたし、不安もなく過ごせている。それに、リエーフが話しかけてくれると、心に灯りがともったようにうれしくなる。
「今度、ふたりでアイス食べような」
なんでだろう・・・と考えていたら、リエーフが大きな体をかがめて耳打ちしてきて思考を遮られた。リエーフの吐息が耳にかかってどきっとする。
「っ、うん」
ちらっとリエーフの方を見ると、その真剣なまなざしに捕まった。頬がじんわりと熱くなる。
私たちの間に流れる独特な空気を破ったのは黒尾さんだった。
「じゃあ久原ちゃん、俺の買ったアイスだから俺に一口ちょうだい」
先ほどの私とリエーフの会話を聞いていたであろう黒尾さんがいつものようにニヤニヤとからかってくる。「だめっすよ黒尾さん!」とリエーフが私の肩に手を置いて、私をかばうようにして言った。肩が熱を持った気がした。
やっぱり、夏はどうしたって熱いのだ。
★
「黒尾さん、俺の邪魔してます?」
「うん、おもしれーから」
2019.3.8
6月も終わり。夏本番はこれからだというのに、暑いこと暑いこと。最近、先輩たちが部活帰りにコンビニでアイスを奢ってくれるようになった。最初は肉まんを奢ってもらっていたが、もはや肉まんの熱さに耐えられない。
「ありがとうございます、黒尾さん!」
今日は黒尾さん奢りのターンだ。私はゆず味のアイスバーを選ばせていただいた。袋をばりっと開け、アイスを一口かじる。んー、冷たくて気持ちいい。柑橘系の爽やかな味がより一層涼しい気分にさせてくれる。あくまで気分だけど。先輩たちは後輩にこんなに奢って、お財布事情が心配だ。
「あずさ、何のアイスにした?」
「ゆず味のアイスバー。リエーフは?」
「それの味ちがい!ソーダ味!」
「ソーダもおいしいよねぇ」
「食べる?」
リエーフはそう言って私に水色のアイスバーを差し出す。え、リエーフの食べかけなんですが。女友達とお互いの料理を味見しあったりすることはたまにある。でも、男子となんてない。しかもアイスですよ?
不思議といやではないけど、でもただの友だちだし、抵抗がある。
「や、いいよ。自分で食べなよ」
「えー、俺もゆず味食べたい」
「え?話が見えないんだけど」
「だーかーらー、俺にもゆず味一口ちょうだい!」
私のアイスバーを一口くれということか。いやいや、私が口付けたやつだからだめだって。
「だめー。黒尾さんがせっかく買ってくれたんだから一人で食べるんですぅ~」
リエーフを傷つけないよう、とっさに言い訳した。
てっきり「ケチ~!」とか言うものだと思っていたが、リエーフの反応は意外なものだった。
「俺が買ったアイスなら、くれんのかよ?」
なぜそうなる。でも、いやではないんだよなぁ。自分が節操なしだと思われるのがいやなだけで。
「う、うん」
「おいそこ、いつまでイチャイチャしてやがる!」
小さい声でうっかり滑り出た肯定の言葉は、猛虎さんの大声にかき消された。
「なんなんだお前ら!カップルか!部員と女子マネの王道カップルなのか!チクショォォォ!」
猛虎さんはそう叫びながら走って行ってしまった。犬岡くんがその背中に向かってのんきに「おつかれさまでーす」と声をかけている。
どう見てもカップルじゃない。ただの友だち・・・ただの友だち?
「まぁ実際、お前ら仲いいよな~」
しゃくしゃくとアイスをかじりながらにやーっと笑って夜久さんが言う。
「しょっちゅうじゃれてるもんなぁ。久原と一番長くいるの、リエーフなんじゃないか?」
夜久さんの言葉に頷く海さん。
確かに、クラスが一緒だし、部活中もよくリエーフが話しかけてくれる。リエーフがいてくれるから部活に入れたし、不安もなく過ごせている。それに、リエーフが話しかけてくれると、心に灯りがともったようにうれしくなる。
「今度、ふたりでアイス食べような」
なんでだろう・・・と考えていたら、リエーフが大きな体をかがめて耳打ちしてきて思考を遮られた。リエーフの吐息が耳にかかってどきっとする。
「っ、うん」
ちらっとリエーフの方を見ると、その真剣なまなざしに捕まった。頬がじんわりと熱くなる。
私たちの間に流れる独特な空気を破ったのは黒尾さんだった。
「じゃあ久原ちゃん、俺の買ったアイスだから俺に一口ちょうだい」
先ほどの私とリエーフの会話を聞いていたであろう黒尾さんがいつものようにニヤニヤとからかってくる。「だめっすよ黒尾さん!」とリエーフが私の肩に手を置いて、私をかばうようにして言った。肩が熱を持った気がした。
やっぱり、夏はどうしたって熱いのだ。
★
「黒尾さん、俺の邪魔してます?」
「うん、おもしれーから」
2019.3.8