ヒーロー
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インターハイ予選が終わった。音駒高校バレー部は東京都でベスト8という結果で夏の大会を終えた。
トーナメントの試合なんぞに出たことのない私は、「1回負けたら終わり」という恐怖にただただ震えていた。まだマネージャーになってひと月ほどだが、みんなが負けて泣くのを見るのはつらかった。
多くの3年生はインターハイで引退するらしい。でも、音駒バレー部の3年生は全国に行くまでやると言った。黒尾さんが「春高で全国に行く」と言った。高校3年生でそんな決断をするのは、ものすごく勇気の入ることだと思うけれど、試合をしているみんなはやっぱりかっこいいので、3年生が残ってくれるのはうれしい。他の1、2年生も喜んでいるようだった。
私は授業が終わるとダッシュで女子更衣室へ、そして着替えて体育館へ向かった。誰よりも早く行って、準備を始めたい。私ができることを、精一杯。
「お、はえーな久原チャン」
「息切らしてどうした!」
体育館には黒尾さんと夜久さんがいた。
「うぐっ、早く、ないですか、お2人とも・・・」
「だって次こそ全国だぞ?早く練習してーだろ。」
黒尾さんが愚問だろ、と言いたげに口角を上げる。
「で、久原ちゃんはどうしたんだよ?」
夜久さんが聞かれてなんと答えようか迷ったが、まぁ正直に言っても茶化されないだろう。
「みんながちゃんと練習できるように、早く始めようと思いまして・・・」
そう言うと黒尾さんはニヤリと、夜久さんはにこっと笑った。
「ありがとな。」
「これからもよろしくな!」
うれしくて「はい!」と答えると、ちょうど他の部員も体育館になだれ込んできた。
「遅くなりましたすいません!すぐ準備しますね!」
入って来るなりネットの準備に取り掛かる犬岡くん。それに「僕もやるよ!」と続く芝山くん。
「っしゃあ!やるぜ!」
猛ダッシュで叫ぶ猛虎さん。相変わらず無表情でとぼとぼと歩いてくる研磨さん。いつも何を考えているのかよくわからない福永さんに、みんなをにこにこと眺める海さん。みんな体育館に集まってきた。
個性豊かな面々が試合になると途端にひとつの方向を向いて戦う姿が鮮やかに甦りわくわくした。
そしてもうひとり。今回はまだ試合に出ることはできなかったけれど、きっとこの先活躍するであろう我が部きっての巨人。
「あずさー!置いてくなよ!」
「リエーフ掃除当番だったから」
「待ってろよ!」
「できるだけ早く行くもんでしょ」
でかい図体をしながら頬をぷくーっと膨らませるリエーフが子どものようでかわいく見えるというのは秘密。
今日もがんばって、という意味を込めてリエーフの背中を押した。
「んじゃ、今日も始めんぞー」
黒尾さんの声を合図にみんなが集まる。
「「お願いしアース!」」
夏が、始まる。
トーナメントの試合なんぞに出たことのない私は、「1回負けたら終わり」という恐怖にただただ震えていた。まだマネージャーになってひと月ほどだが、みんなが負けて泣くのを見るのはつらかった。
多くの3年生はインターハイで引退するらしい。でも、音駒バレー部の3年生は全国に行くまでやると言った。黒尾さんが「春高で全国に行く」と言った。高校3年生でそんな決断をするのは、ものすごく勇気の入ることだと思うけれど、試合をしているみんなはやっぱりかっこいいので、3年生が残ってくれるのはうれしい。他の1、2年生も喜んでいるようだった。
私は授業が終わるとダッシュで女子更衣室へ、そして着替えて体育館へ向かった。誰よりも早く行って、準備を始めたい。私ができることを、精一杯。
「お、はえーな久原チャン」
「息切らしてどうした!」
体育館には黒尾さんと夜久さんがいた。
「うぐっ、早く、ないですか、お2人とも・・・」
「だって次こそ全国だぞ?早く練習してーだろ。」
黒尾さんが愚問だろ、と言いたげに口角を上げる。
「で、久原ちゃんはどうしたんだよ?」
夜久さんが聞かれてなんと答えようか迷ったが、まぁ正直に言っても茶化されないだろう。
「みんながちゃんと練習できるように、早く始めようと思いまして・・・」
そう言うと黒尾さんはニヤリと、夜久さんはにこっと笑った。
「ありがとな。」
「これからもよろしくな!」
うれしくて「はい!」と答えると、ちょうど他の部員も体育館になだれ込んできた。
「遅くなりましたすいません!すぐ準備しますね!」
入って来るなりネットの準備に取り掛かる犬岡くん。それに「僕もやるよ!」と続く芝山くん。
「っしゃあ!やるぜ!」
猛ダッシュで叫ぶ猛虎さん。相変わらず無表情でとぼとぼと歩いてくる研磨さん。いつも何を考えているのかよくわからない福永さんに、みんなをにこにこと眺める海さん。みんな体育館に集まってきた。
個性豊かな面々が試合になると途端にひとつの方向を向いて戦う姿が鮮やかに甦りわくわくした。
そしてもうひとり。今回はまだ試合に出ることはできなかったけれど、きっとこの先活躍するであろう我が部きっての巨人。
「あずさー!置いてくなよ!」
「リエーフ掃除当番だったから」
「待ってろよ!」
「できるだけ早く行くもんでしょ」
でかい図体をしながら頬をぷくーっと膨らませるリエーフが子どものようでかわいく見えるというのは秘密。
今日もがんばって、という意味を込めてリエーフの背中を押した。
「んじゃ、今日も始めんぞー」
黒尾さんの声を合図にみんなが集まる。
「「お願いしアース!」」
夏が、始まる。