ヒーロー
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「久原~!勉強教えて!」
朝練を終えてすぐ、灰羽くんが張り倒す勢いで私に駆け寄って来た。うおお怖い。
そう。5月下旬はテストシーズンだ。来週からいよいよテストなのである。そのため次の日曜日は部活がお休みになっている。
「いいよ~、日曜日でいい?」
「いい!ありがと!俺んちでいい?」
「おっけい。」
斯くして私たちはテスト勉強をすることとなった。
◇
来る日曜日。灰羽くんちの最寄り駅で待ち合わせした。9時半頃着くよ、と連絡しておいたので改札前の柱付近で待っていると、灰羽くんが手を振りながら駆け寄ってきた。
「久原~!あっ、私服見るの初めて!かわいいな!」
「ひぇっ」
男子に”かわいい”とか言われたことないので、慌てふためいてしまった。しかも灰羽くんはイケメンだし(性格はこう、いろいろあるけど)、そんなこと言われたら不覚にもときめいてしまう。いやでもこれはたぶんロシア的な感じだ、ロシアの風習とかわかんないけど、西洋的な感覚だたぶんこれ。
あわあわしながら灰羽くんを見つめると、灰羽くんはにやっと笑った。
「お、照れてるのか~?」
「いや、いいえっ」
「すっげぇ否定するじゃん。まぁいいや、ウチ行こ!」
そう言って肩をトン、と叩くものだから、またしてもビクーっと盛大に驚いてしまった。
◇
「いらっしゃ~い!あずさちゃんね!レーヴォチカから聞いてるよ~!」
灰羽くんのお家についたら、灰羽くんのお姉さんであるアリサさんがお出迎えしてくれた。美人だわぁ・・・おそロシア(古いとか言わないで)。アリサさんを見てやっぱり、さっきの灰羽くんのあれは西洋的なアレだという確信が増したのだった。
「お邪魔します・・・。」
「俺の部屋で勉強するから!」
そう言って階段を登ろうとする灰羽くんをアリサさんが引き留めた。
「飲み物何がいい?お茶とオレンジジュースがあるけど」
「オレンジ!」
「お、お茶でお願いします。」
「はーい!部屋に持っていくね!」
「ありがとうございます。」
「サンキュー、姉ちゃん!」
にこにこするアリサさんにお礼を言って、私たちは灰羽くんの部屋に向かった。
荷物適当に置いてーと言われたので、入り口付近にリュックを下ろし、部屋の中央にあるテーブルの前に座った。息を吸うと、灰羽くんの香りがする。灰羽くんの部屋にいるという自覚が突然芽生えたが、平常心でいるために忘れることにした。
私たちは各々勉強道具を出し、テスト勉強を開始した。
◇
15時になったので、おやつを食べつつ休憩することにした。午前中から今まで、私と灰羽くんはそれぞれ勉強をしていたが、灰羽くんがわからないというところを時々教えつつ、順調にテストに向けて準備していた。ありがたいことにお昼ご飯までごちそうになってしまい、普段はテスト前の日曜日なんて憂鬱なのに、今日は楽しいと思えた。
「久原ありがとな~、ほんと助かった!」
「いえいえ、お役に立てて何より。むしろお昼ご飯までありがとう、おいしかった。」
「姉ちゃん、料理練習中でさ~。最近はけっこうウマいんだよなぁ」
「お姉さんと言えば、灰羽くんってお家ではあだ名で呼ばれてるの?来たときお姉さんが呼んでたような・・・」
そう聞いたが灰羽くんの返事がない。テーブルのお菓子に落としていた目線を上げると、灰羽くんがじーっと私を見ていた。
「・・・な、なに?」
怒らせることでも言ってしまっただろうかとドキドキしていると、灰羽くんが口を開いた。
「リエーフって呼んでよ」
「ん?」
「先輩とかもリエーフって呼ぶし。灰羽くんだとなんか遠い感じがする。」
「え、あー、うん、わかった。」
男子の名前を呼ぶのなんて小学生、いや幼稚園生以来だろうか?一瞬の動揺を悟られぬよう、目を伏せた。しかしその行動は意味を持たなかった。
「でさ、俺、久原のことあずさって呼ぶから!」
驚いて見上げると、灰羽くん・・・リエーフの口は薄く弧を描いていたが、その緑色の目からは真意が読み取れなかった。なんで急に、と聞きたかったが、リエーフが時々見せる獲物を狩るような目で見つめられると、ゾクっとして言葉が出なくなる。
「ハイ・・・ドウゾ・・・」
「なんでカタコトなんだよ!」
灰羽くんがぷっと噴き出した。さっきとは打って変わって無邪気なその笑顔に、心臓が鳴った。な、なんで?ギャップ萌えというやつですか?
気を紛らわそうとポテチを一枚取った。
「急にどうしたの」
「んー?あずさと仲良くなりたくて!」
「はぁ。学校の友だちではいちばん仲いいと思うけど」
「ほんと?よっしゃ!」
話が一区切りついたところで、私たちは勉強を再開した。名前のことなど議論している場合ではない。明日から私たちはテストなのだ。
「でも俺は、それじゃ満足できない」
「え、なに?」
勉強を始めた途端リエーフが発した言葉が、私はうまく聞き取れなかった。
朝練を終えてすぐ、灰羽くんが張り倒す勢いで私に駆け寄って来た。うおお怖い。
そう。5月下旬はテストシーズンだ。来週からいよいよテストなのである。そのため次の日曜日は部活がお休みになっている。
「いいよ~、日曜日でいい?」
「いい!ありがと!俺んちでいい?」
「おっけい。」
斯くして私たちはテスト勉強をすることとなった。
◇
来る日曜日。灰羽くんちの最寄り駅で待ち合わせした。9時半頃着くよ、と連絡しておいたので改札前の柱付近で待っていると、灰羽くんが手を振りながら駆け寄ってきた。
「久原~!あっ、私服見るの初めて!かわいいな!」
「ひぇっ」
男子に”かわいい”とか言われたことないので、慌てふためいてしまった。しかも灰羽くんはイケメンだし(性格はこう、いろいろあるけど)、そんなこと言われたら不覚にもときめいてしまう。いやでもこれはたぶんロシア的な感じだ、ロシアの風習とかわかんないけど、西洋的な感覚だたぶんこれ。
あわあわしながら灰羽くんを見つめると、灰羽くんはにやっと笑った。
「お、照れてるのか~?」
「いや、いいえっ」
「すっげぇ否定するじゃん。まぁいいや、ウチ行こ!」
そう言って肩をトン、と叩くものだから、またしてもビクーっと盛大に驚いてしまった。
◇
「いらっしゃ~い!あずさちゃんね!レーヴォチカから聞いてるよ~!」
灰羽くんのお家についたら、灰羽くんのお姉さんであるアリサさんがお出迎えしてくれた。美人だわぁ・・・おそロシア(古いとか言わないで)。アリサさんを見てやっぱり、さっきの灰羽くんのあれは西洋的なアレだという確信が増したのだった。
「お邪魔します・・・。」
「俺の部屋で勉強するから!」
そう言って階段を登ろうとする灰羽くんをアリサさんが引き留めた。
「飲み物何がいい?お茶とオレンジジュースがあるけど」
「オレンジ!」
「お、お茶でお願いします。」
「はーい!部屋に持っていくね!」
「ありがとうございます。」
「サンキュー、姉ちゃん!」
にこにこするアリサさんにお礼を言って、私たちは灰羽くんの部屋に向かった。
荷物適当に置いてーと言われたので、入り口付近にリュックを下ろし、部屋の中央にあるテーブルの前に座った。息を吸うと、灰羽くんの香りがする。灰羽くんの部屋にいるという自覚が突然芽生えたが、平常心でいるために忘れることにした。
私たちは各々勉強道具を出し、テスト勉強を開始した。
◇
15時になったので、おやつを食べつつ休憩することにした。午前中から今まで、私と灰羽くんはそれぞれ勉強をしていたが、灰羽くんがわからないというところを時々教えつつ、順調にテストに向けて準備していた。ありがたいことにお昼ご飯までごちそうになってしまい、普段はテスト前の日曜日なんて憂鬱なのに、今日は楽しいと思えた。
「久原ありがとな~、ほんと助かった!」
「いえいえ、お役に立てて何より。むしろお昼ご飯までありがとう、おいしかった。」
「姉ちゃん、料理練習中でさ~。最近はけっこうウマいんだよなぁ」
「お姉さんと言えば、灰羽くんってお家ではあだ名で呼ばれてるの?来たときお姉さんが呼んでたような・・・」
そう聞いたが灰羽くんの返事がない。テーブルのお菓子に落としていた目線を上げると、灰羽くんがじーっと私を見ていた。
「・・・な、なに?」
怒らせることでも言ってしまっただろうかとドキドキしていると、灰羽くんが口を開いた。
「リエーフって呼んでよ」
「ん?」
「先輩とかもリエーフって呼ぶし。灰羽くんだとなんか遠い感じがする。」
「え、あー、うん、わかった。」
男子の名前を呼ぶのなんて小学生、いや幼稚園生以来だろうか?一瞬の動揺を悟られぬよう、目を伏せた。しかしその行動は意味を持たなかった。
「でさ、俺、久原のことあずさって呼ぶから!」
驚いて見上げると、灰羽くん・・・リエーフの口は薄く弧を描いていたが、その緑色の目からは真意が読み取れなかった。なんで急に、と聞きたかったが、リエーフが時々見せる獲物を狩るような目で見つめられると、ゾクっとして言葉が出なくなる。
「ハイ・・・ドウゾ・・・」
「なんでカタコトなんだよ!」
灰羽くんがぷっと噴き出した。さっきとは打って変わって無邪気なその笑顔に、心臓が鳴った。な、なんで?ギャップ萌えというやつですか?
気を紛らわそうとポテチを一枚取った。
「急にどうしたの」
「んー?あずさと仲良くなりたくて!」
「はぁ。学校の友だちではいちばん仲いいと思うけど」
「ほんと?よっしゃ!」
話が一区切りついたところで、私たちは勉強を再開した。名前のことなど議論している場合ではない。明日から私たちはテストなのだ。
「でも俺は、それじゃ満足できない」
「え、なに?」
勉強を始めた途端リエーフが発した言葉が、私はうまく聞き取れなかった。