ヒーロー
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昨日、帰りのホームルームで来週から夏服になると告げられた。
5月にしては強い日差しの中、汗の浮く顔をぱたぱたと扇ぎながら登校した朝。
今日は英単語のテストがあるから、と席に着いて鞄から単語帳を取り出したところだった。
「久原!マネージャーやろうぜ!」
「やろうぜ!」
1人増えた。
やろうぜ!と灰羽くんとユニゾンしたのは、やはり灰羽くん同様背の高い男の子だった。
人懐っこい笑顔を浮かべた彼は、廊下で見かけたことがある。
背が高いから目立つのだ。
しかし座ったまま背の高い男子たちに見下ろされると圧迫感あるな。
「いやどなた・・・?」
「俺、犬岡!1組!部活やってないんだろ?マネージャーやって!」
「バレー部の友だち連れてきた。こいつは厳しくないだろ?」
いや厳しいってそういう意味じゃないし。
「えー・・・」
キラキラとした笑顔で見つめてくる犬岡くん。
「ウチ、めっちゃ雰囲気いいし、絶対怖くないって!とりあえず見学にこない?」
犬岡くんに誘われるとなぜか断りにくい。
私が犬岡くんの笑顔の前で固まっていると、灰羽くんが言い放った。
「久原、今日放課後用事ないよな!大事なのは勢い!見学来いよ!約束!」
「え・・・・」
放課後、バレー部の見学に行くことになってしまった。
◇
放課後、掃除当番を終える灰羽くんを待って一緒に体育館に向かった。
「よかった。待っててくれたんだな!」
「だって約束って言った・・・」
「俺が無理やりしただけじゃん。久原って押しに弱いんだな。」
確かに押しに弱い。というか大きい男子に囲まれたら萎縮するって。
音駒は全国を目指しているのだと、昼休みに念押しの勧誘をしに来た犬岡くんに聞いていた。
それを聞いてますます萎縮してしまった。
そんな話をしていたら、体育館近くの部室棟に着いた。
すぐ着替えるから待ってて、と部室に消えていった灰羽くんを部室棟の階段横の柱にもたれて待っていると、バレー部の部室から背の高い個性的な髪型のお兄さんが出てきた。
最近背が高い人によく会うな・・・。
そんなことを考えながらぼんやりとその人の頭を見つめていると、向こうもこちらに気付いて近づいてきた。
「初めて見る顔だな~。誰か待ってんの?」
「あ、灰羽くんを待ってます」
「え、何。あいつの彼女?」
「っ、いや違います!」
「焦ってる~あやしい~」
出会って10秒でからかわれたのなんて生まれて初めてだ。
何て返そうか困っていると、灰羽くんが本当にすぐ着替えて部室から出てきて叫んだ。
「あ!黒尾さん!その子マネージャーとして勧誘してきました!」
「あーそう。今日は見学?」
「はい。灰羽くんと同じクラスの久原あずさです。よろしくお願いします」
「俺、主将の黒尾。よろしくな。お前がいろいろ説明してやれよ」
そう言われた灰羽くんは「トーゼンっす!」と言って私たちのもとへ駆けつける。
じゃあ部活の準備してくっから、と体育館に向かう黒尾さんを見送ると、灰羽くんがはっとした表情で言った。
「練習夜遅くなるけど大丈夫か!?」
「お母さんに連絡したし、大丈夫」
「そっかー、よかった。じゃ、今のうちにやってほしいこととか説明するから来て!」
私たちは体育館に向かった。
◇
部活が終わり、自主練に切り替わった。
マネージャーの仕事の説明を受けてからは、ドリンク作りを試しに手伝ったりしたが、あとはずっと見学していた。
バレーボールなんて、中学の体育で少しやった程度だった。
それに比べて、本物は迫力がすごかった。
みんな背が高いし、ボールの音もすごい。
それに何より、みんな本気だ。本気でスポーツをやるって、こんなに苦しい一歩一歩の積み重ねなんだ。
なんか、かっこいいな。
灰羽くんが駅まで送るというので、体育館の隅で彼の自主練が終わるのを待っていると、金髪のモヒカンが目をぐるぐるさせながら近づいてきた。
話しかけられるのかと身構えたが、その人はじっとしたまま動かない。
え、怖い。
「・・・・?」
困惑していると、近くで自主練をしていた人が近づいてきて困り顔で笑った。
「おい山本!怖がらせるなよ!ごめんなー、こいつこんなんで。」
「や・・・夜久さん!なんで・・・なんでそんな普通に女子と話せるんすか!」
「お前が極端なんだよ。ほら、まず自己紹介から」
夜久さんという人が促すと、モヒカンの人がこっちに向き直った。
しかしすぐに目をそらして小さな声で言った。
「に、ににににねんのやややややまもとたったけとらです」
「はい?」
見た目怖いけど、結構繊細なのかなぁ。
運動部の印象がちょっと変わった日だった。
5月にしては強い日差しの中、汗の浮く顔をぱたぱたと扇ぎながら登校した朝。
今日は英単語のテストがあるから、と席に着いて鞄から単語帳を取り出したところだった。
「久原!マネージャーやろうぜ!」
「やろうぜ!」
1人増えた。
やろうぜ!と灰羽くんとユニゾンしたのは、やはり灰羽くん同様背の高い男の子だった。
人懐っこい笑顔を浮かべた彼は、廊下で見かけたことがある。
背が高いから目立つのだ。
しかし座ったまま背の高い男子たちに見下ろされると圧迫感あるな。
「いやどなた・・・?」
「俺、犬岡!1組!部活やってないんだろ?マネージャーやって!」
「バレー部の友だち連れてきた。こいつは厳しくないだろ?」
いや厳しいってそういう意味じゃないし。
「えー・・・」
キラキラとした笑顔で見つめてくる犬岡くん。
「ウチ、めっちゃ雰囲気いいし、絶対怖くないって!とりあえず見学にこない?」
犬岡くんに誘われるとなぜか断りにくい。
私が犬岡くんの笑顔の前で固まっていると、灰羽くんが言い放った。
「久原、今日放課後用事ないよな!大事なのは勢い!見学来いよ!約束!」
「え・・・・」
放課後、バレー部の見学に行くことになってしまった。
◇
放課後、掃除当番を終える灰羽くんを待って一緒に体育館に向かった。
「よかった。待っててくれたんだな!」
「だって約束って言った・・・」
「俺が無理やりしただけじゃん。久原って押しに弱いんだな。」
確かに押しに弱い。というか大きい男子に囲まれたら萎縮するって。
音駒は全国を目指しているのだと、昼休みに念押しの勧誘をしに来た犬岡くんに聞いていた。
それを聞いてますます萎縮してしまった。
そんな話をしていたら、体育館近くの部室棟に着いた。
すぐ着替えるから待ってて、と部室に消えていった灰羽くんを部室棟の階段横の柱にもたれて待っていると、バレー部の部室から背の高い個性的な髪型のお兄さんが出てきた。
最近背が高い人によく会うな・・・。
そんなことを考えながらぼんやりとその人の頭を見つめていると、向こうもこちらに気付いて近づいてきた。
「初めて見る顔だな~。誰か待ってんの?」
「あ、灰羽くんを待ってます」
「え、何。あいつの彼女?」
「っ、いや違います!」
「焦ってる~あやしい~」
出会って10秒でからかわれたのなんて生まれて初めてだ。
何て返そうか困っていると、灰羽くんが本当にすぐ着替えて部室から出てきて叫んだ。
「あ!黒尾さん!その子マネージャーとして勧誘してきました!」
「あーそう。今日は見学?」
「はい。灰羽くんと同じクラスの久原あずさです。よろしくお願いします」
「俺、主将の黒尾。よろしくな。お前がいろいろ説明してやれよ」
そう言われた灰羽くんは「トーゼンっす!」と言って私たちのもとへ駆けつける。
じゃあ部活の準備してくっから、と体育館に向かう黒尾さんを見送ると、灰羽くんがはっとした表情で言った。
「練習夜遅くなるけど大丈夫か!?」
「お母さんに連絡したし、大丈夫」
「そっかー、よかった。じゃ、今のうちにやってほしいこととか説明するから来て!」
私たちは体育館に向かった。
◇
部活が終わり、自主練に切り替わった。
マネージャーの仕事の説明を受けてからは、ドリンク作りを試しに手伝ったりしたが、あとはずっと見学していた。
バレーボールなんて、中学の体育で少しやった程度だった。
それに比べて、本物は迫力がすごかった。
みんな背が高いし、ボールの音もすごい。
それに何より、みんな本気だ。本気でスポーツをやるって、こんなに苦しい一歩一歩の積み重ねなんだ。
なんか、かっこいいな。
灰羽くんが駅まで送るというので、体育館の隅で彼の自主練が終わるのを待っていると、金髪のモヒカンが目をぐるぐるさせながら近づいてきた。
話しかけられるのかと身構えたが、その人はじっとしたまま動かない。
え、怖い。
「・・・・?」
困惑していると、近くで自主練をしていた人が近づいてきて困り顔で笑った。
「おい山本!怖がらせるなよ!ごめんなー、こいつこんなんで。」
「や・・・夜久さん!なんで・・・なんでそんな普通に女子と話せるんすか!」
「お前が極端なんだよ。ほら、まず自己紹介から」
夜久さんという人が促すと、モヒカンの人がこっちに向き直った。
しかしすぐに目をそらして小さな声で言った。
「に、ににににねんのやややややまもとたったけとらです」
「はい?」
見た目怖いけど、結構繊細なのかなぁ。
運動部の印象がちょっと変わった日だった。