ヒーロー
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夏休みに入った。この前の合宿はまだ学校がある時だったので、週末に1泊2日で行われた。
今回の合宿も同じメンバーでやるわけだけど、これは夏休み中だからたっぷり1週間できる。
ここ数日、この前白福さんたちに言われたことが気になって変にリエーフを意識していたけど、私は今日までなんとか普通に振舞うことができていたと思う。
春高予選前の貴重な長期合宿。私も気合入れてやらないとな、と改めて気持ちを引き締めた。
とりあえず、リエーフのことを今は気にしない。
それなのに、気にしないようにと思えば思うほど意識がそちらに向いてしまうのはどうしてなんだろう。
今回もひたすら試合形式の練習だった。
リエーフもだんだん上達していて、時々周囲をわっと言わせるようなスパイクを打つことがあった。そういうのを見ると、やっぱりかっこよくはあるよねぇ・・・とまるで恋煩いのようなため息をついてしまう。
仁花ちゃんに「どうしたの?もっ、もしかして具合悪い!?」と無駄に心配をかけてしまうほどだった。
合宿3日目の夜。今日もまた、リエーフを気にしないという目標を達成できないままマネージャーとしての活動を終えた。
今日何度目かわからないため息をついた時、体育館に入って来た夜久さんの声が体育館に響いた。
「リエーフは!?」
ついさっきまでリエーフはこの体育館で夜久さんと練習していたはずだ。夜久さんがトイレかなんかで体育館を出ていくのは見ていたが、ほんの一瞬目を離した隙にリエーフがいなくなっていたなんて気付かなかった。
「今日は優秀だったから早めに終わりって言われたって、体育館出ていきましたけど・・・」
「そんなこと言ってねぇ!」
犬岡くんの言葉に夜久さんが怒りをあらわにする。
「私、探してきますね・・・?」
私がそう提案すると、夜久さんは「いや、いいよ」と苦笑した。
「アイツ、ただサボってるわけではねーからなぁ。黒尾のところででもブロック練やってんだろ」
リエーフはブロックとかスパイクは好きなので、確かに練習している印象があった。サボっているとはいえ上達するために別の練習をしているから、むやみに怒れないのかもしれない。
「じゃあ明日はちゃんとやるように、見つけたら言っておきます」
「おう、頼むわ!」
とはいえ恐らくレシーブも他の練習と同様に大事。本人もわかっているとは思うけど、ちゃんと集中する日が必要だろう。にっと笑う夜久さんに軽く会釈をして、私はリエーフを探しに行くことにした。
第三体育館をのぞくとリエーフがいた。黒尾さん、烏野の日向くんに月島くん、梟谷の木兎さんに赤葦さんもいる。どうやら3対3で試合をやっているようだ。
黒尾さんというのは本当に勘のいい人で、体育館の入り口に気配を感じたのかふっとこちらを向いた。
「あれ、久原ちゃん。どうしたの」
「うーん、リエーフに小言を言いに、ですかね」
そう答えるとリエーフが「ヤバい」という顔をした。やっぱり逃げてはいけないという自覚があるんだな。それなら私がわざわざ言っても仕方ないし、黒尾さんもわかっていて放置しているんだろうから、私の出る幕はないなと思った。
「でも大丈夫そうなんで、やっぱいいです」
お疲れ様でしたー、と体育館を出ようとすると、「待って待って」と黒尾さんに止められた。
「久原ちゃん、時間あるなら得点係やってよ」
彼らのスコアを管理しろというのだ。私がいなくても問題ないのでは、と思ったがそれが顔に出ていたのか黒尾さんが念押しで言った。
「やってくれた方が助かるんだよ~。俺らの練習、手伝って」
時間はあるし、みんなの練習だと言われれば断る理由はないので、私はスコアボードの横に立った。
試合が再開された。
みんな同じように跳んだりブロックしたりするのに、私の目をひときわ引いたのはリエーフだった。
なんか悔しい。そう思って眉根を寄せて試合を見ていたら、ダンッと床が鳴って、リエーフが今日一番のかっこいいスパイクを決めた。
「見たか、あずさ!」
リエーフが自信に溢れたまぶしい笑顔でこちらを振り向いた。
その顔が、ずっと好きだった。
私、リエーフが好きだったのか。
自覚したら、リエーフのことが見れなかった。右手の甲で口元を覆って目をそらす。
視線の先にまたしてもニヤニヤする黒尾さんがいた。どうせ、私の考えていることなんてお見通しなんだろう。
心臓がどくどくいうのに耐えるため、私は唇をぎゅっと噛んでいた。
2019.3.31
今回の合宿も同じメンバーでやるわけだけど、これは夏休み中だからたっぷり1週間できる。
ここ数日、この前白福さんたちに言われたことが気になって変にリエーフを意識していたけど、私は今日までなんとか普通に振舞うことができていたと思う。
春高予選前の貴重な長期合宿。私も気合入れてやらないとな、と改めて気持ちを引き締めた。
とりあえず、リエーフのことを今は気にしない。
それなのに、気にしないようにと思えば思うほど意識がそちらに向いてしまうのはどうしてなんだろう。
今回もひたすら試合形式の練習だった。
リエーフもだんだん上達していて、時々周囲をわっと言わせるようなスパイクを打つことがあった。そういうのを見ると、やっぱりかっこよくはあるよねぇ・・・とまるで恋煩いのようなため息をついてしまう。
仁花ちゃんに「どうしたの?もっ、もしかして具合悪い!?」と無駄に心配をかけてしまうほどだった。
合宿3日目の夜。今日もまた、リエーフを気にしないという目標を達成できないままマネージャーとしての活動を終えた。
今日何度目かわからないため息をついた時、体育館に入って来た夜久さんの声が体育館に響いた。
「リエーフは!?」
ついさっきまでリエーフはこの体育館で夜久さんと練習していたはずだ。夜久さんがトイレかなんかで体育館を出ていくのは見ていたが、ほんの一瞬目を離した隙にリエーフがいなくなっていたなんて気付かなかった。
「今日は優秀だったから早めに終わりって言われたって、体育館出ていきましたけど・・・」
「そんなこと言ってねぇ!」
犬岡くんの言葉に夜久さんが怒りをあらわにする。
「私、探してきますね・・・?」
私がそう提案すると、夜久さんは「いや、いいよ」と苦笑した。
「アイツ、ただサボってるわけではねーからなぁ。黒尾のところででもブロック練やってんだろ」
リエーフはブロックとかスパイクは好きなので、確かに練習している印象があった。サボっているとはいえ上達するために別の練習をしているから、むやみに怒れないのかもしれない。
「じゃあ明日はちゃんとやるように、見つけたら言っておきます」
「おう、頼むわ!」
とはいえ恐らくレシーブも他の練習と同様に大事。本人もわかっているとは思うけど、ちゃんと集中する日が必要だろう。にっと笑う夜久さんに軽く会釈をして、私はリエーフを探しに行くことにした。
第三体育館をのぞくとリエーフがいた。黒尾さん、烏野の日向くんに月島くん、梟谷の木兎さんに赤葦さんもいる。どうやら3対3で試合をやっているようだ。
黒尾さんというのは本当に勘のいい人で、体育館の入り口に気配を感じたのかふっとこちらを向いた。
「あれ、久原ちゃん。どうしたの」
「うーん、リエーフに小言を言いに、ですかね」
そう答えるとリエーフが「ヤバい」という顔をした。やっぱり逃げてはいけないという自覚があるんだな。それなら私がわざわざ言っても仕方ないし、黒尾さんもわかっていて放置しているんだろうから、私の出る幕はないなと思った。
「でも大丈夫そうなんで、やっぱいいです」
お疲れ様でしたー、と体育館を出ようとすると、「待って待って」と黒尾さんに止められた。
「久原ちゃん、時間あるなら得点係やってよ」
彼らのスコアを管理しろというのだ。私がいなくても問題ないのでは、と思ったがそれが顔に出ていたのか黒尾さんが念押しで言った。
「やってくれた方が助かるんだよ~。俺らの練習、手伝って」
時間はあるし、みんなの練習だと言われれば断る理由はないので、私はスコアボードの横に立った。
試合が再開された。
みんな同じように跳んだりブロックしたりするのに、私の目をひときわ引いたのはリエーフだった。
なんか悔しい。そう思って眉根を寄せて試合を見ていたら、ダンッと床が鳴って、リエーフが今日一番のかっこいいスパイクを決めた。
「見たか、あずさ!」
リエーフが自信に溢れたまぶしい笑顔でこちらを振り向いた。
その顔が、ずっと好きだった。
私、リエーフが好きだったのか。
自覚したら、リエーフのことが見れなかった。右手の甲で口元を覆って目をそらす。
視線の先にまたしてもニヤニヤする黒尾さんがいた。どうせ、私の考えていることなんてお見通しなんだろう。
心臓がどくどくいうのに耐えるため、私は唇をぎゅっと噛んでいた。
2019.3.31