ヒーロー
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
合宿1日目は試合形式の練習をひたすらやって、あっという間に夜になった。
「リエーフ!レシーブ練やるぞ!」
「ひっ、はい!」
「ひってなんだ!」
リエーフの自主練は相変わらず夜久さんとのレシーブ練習だ。リエーフは顔を引きつらせつつ、いつものように夜久さんと練習を始めた。
私は今日使ったボトルなどを片付ける。それが終わったら食堂でご飯を食べてシャワーだな。
ボトルを洗い終えて、体育館に置きっぱなしだった自分のタオルを取りに行くと、リエーフが突進してきた。
「あずさー!助けて!」
「リエーフ!逃げんじゃねー!」
「・・・」
さすがは守りの音駒でリベロをやっている夜久さん。レシーブ指導は厳しいらしく、5月頃に比べたらかなり練習がハードになってきてるみたいだ。相変わらずリエーフは私を盾にしようとするが、最近は夜久さんはもちろん黒尾さんもサボるリエーフを見かければ私からぐいぐい引きはがして連れていく。今日もそうだと思い呆れながらリエーフを迎えたが、今日は誰もリエーフをはがしに来なかった。
夜久さんは私に近づくと、私の背中に隠れるリエーフを睨み(隠れられてはいないのだけど)、私に耳打ちした。
「久原、リエーフのTシャツの裾引っ張って練習しよう、みたいなこと言ってみて」
「はい?」
「夜久さん!あずさと近すぎます!離れてください!」
どういう意味ですかと聞こうとしたらリエーフが夜久さんと私の間に入ったので聞けなくなってしまった。自分のせいでこんなことになっているというのに、ずいぶん強気ですね。
Tシャツの裾を引っ張るなんてぶりっ子じゃない?やりたくないんだけどなー、と思いながらもどうしたらリエーフが自主練を再開するかわからないので、とりあえず夜久さんに従う。
「リエーフ、練習しよう?」
リエーフのTシャツを親指と人差し指でつまむ。リエーフの顔を見ようとすると自然と上目遣いになった。
これはかなり恥ずかしい。そう思ってすぐにリエーフから目線をはずし、さっと手を引っ込めた。
「・・・」
リエーフが無言なのでどうしたのかともう一度リエーフを見上げる。なんと、リエーフの頬がうっすらピンクに色づいている。もしかして照れている・・・?
「れんしゅう、する!」
私と目が合うなりリエーフはそう言って、ボールを拾い夜久さんと練習へ戻っていった。
普段は大きくて威圧感のあるリエーフがあんなふうに控えめでしおらしいのを見ると、なんだかリエーフがかわいく見えてくる。
「だらしない顔しちゃって」
いつの間に隣にいたのか、黒尾さんがニヤニヤしながら私の頬のゆるみを指摘した。やだな、そんなに変な顔してたかな。
「久原ちゃんも素直だよなー、やっくんに利用されちゃって」
「いいんです、みなさんの練習になるんなら」
今になってあんなことをしたのが恥ずかしく、つい先輩に向かってふてくされたような言い方をしてしまった。次は頼まれても断ろう。そう決意をし、黒尾さんにお疲れ様です、と挨拶して夕飯を食べに食堂へ向かった。
◇
シャワーで濡れた髪をドライヤーで乾かすと私は自分の布団に寝転がった。初めての合宿。他校のメンバー。いろいろな要素が重なって緊張していたからか、異常に眠い。歯も磨いたし、寝る準備はできた。暑いけれど風邪を引いてはいけないのでお腹にタオルケットをかけてうとうとしていると、梟谷のマネージャーの1人、雀田さんに話しかけられた。
「あずさちゃん、おつかれだね」
「はい、刺激の多い1日で・・・」
目を閉じたままでは失礼かと思ったが、もう目が開かないのでそのまま答える。
「リエーフくんの相手、大変だもんねー」
梟谷のもう1人のマネージャー、白福さんの声だ。「そうですねー」と半ば夢の中で答えると、白福さんが続けた。
「リエーフくんとキスする時どうするの~?」
眠気が突然どこかへ消え、私は飛び起きた。何の話だ。身長高いから大変じゃな~い?と呑気に言っている白福さんを見て私は口をぱくぱくさせてしまった。
「なっ、なんて!?どういう意味ですか!?」
「えー、だって付き合ってるんでしょ~?」
「付き合ってません!」
慌てて否定する。そんな風に見えるのか。黒尾さんにもよく言われたな。そんな私の発言に他のマネージャーさんたちも「えっ違うの!」と驚いた。
「え、何かすみません・・・」
みんなで揃って驚くものだから、悪くもないのに謝ってしまった。
「じゃれてるから、てっきりそうだと思ってた・・・」
「だよねぇ」
目を丸くする仁花ちゃんに、同調する雀田さん。違いますと改めて首を振っていると、生川高校のマネージャーである宮ノ下さんが言った。
「でも、リエーフくんはあずさちゃんのこと好きだよねー」
「そう見えるよね~」
白福さんが同意する。
そうだろうか。言われてみれば、今まで心当たりがないでもない。しかし恋愛経験が0なのでピンとこない。うぬぼれだったら困るし、と心の中で会議をしていると「明日も早いから寝よー」と女子部屋に入ってきた森然高校のマネージャー、大滝さんの言葉で私たちの部屋は消灯することとなり、この話は終わった。
宮ノ下さんの言葉が耳に残ってしまい目が冴えて眠れず、翌朝は寝坊するところだった。
なんていうことはなく疲れにより快眠で、翌朝はしっかり目覚めることができた。
2019.3.22
「リエーフ!レシーブ練やるぞ!」
「ひっ、はい!」
「ひってなんだ!」
リエーフの自主練は相変わらず夜久さんとのレシーブ練習だ。リエーフは顔を引きつらせつつ、いつものように夜久さんと練習を始めた。
私は今日使ったボトルなどを片付ける。それが終わったら食堂でご飯を食べてシャワーだな。
ボトルを洗い終えて、体育館に置きっぱなしだった自分のタオルを取りに行くと、リエーフが突進してきた。
「あずさー!助けて!」
「リエーフ!逃げんじゃねー!」
「・・・」
さすがは守りの音駒でリベロをやっている夜久さん。レシーブ指導は厳しいらしく、5月頃に比べたらかなり練習がハードになってきてるみたいだ。相変わらずリエーフは私を盾にしようとするが、最近は夜久さんはもちろん黒尾さんもサボるリエーフを見かければ私からぐいぐい引きはがして連れていく。今日もそうだと思い呆れながらリエーフを迎えたが、今日は誰もリエーフをはがしに来なかった。
夜久さんは私に近づくと、私の背中に隠れるリエーフを睨み(隠れられてはいないのだけど)、私に耳打ちした。
「久原、リエーフのTシャツの裾引っ張って練習しよう、みたいなこと言ってみて」
「はい?」
「夜久さん!あずさと近すぎます!離れてください!」
どういう意味ですかと聞こうとしたらリエーフが夜久さんと私の間に入ったので聞けなくなってしまった。自分のせいでこんなことになっているというのに、ずいぶん強気ですね。
Tシャツの裾を引っ張るなんてぶりっ子じゃない?やりたくないんだけどなー、と思いながらもどうしたらリエーフが自主練を再開するかわからないので、とりあえず夜久さんに従う。
「リエーフ、練習しよう?」
リエーフのTシャツを親指と人差し指でつまむ。リエーフの顔を見ようとすると自然と上目遣いになった。
これはかなり恥ずかしい。そう思ってすぐにリエーフから目線をはずし、さっと手を引っ込めた。
「・・・」
リエーフが無言なのでどうしたのかともう一度リエーフを見上げる。なんと、リエーフの頬がうっすらピンクに色づいている。もしかして照れている・・・?
「れんしゅう、する!」
私と目が合うなりリエーフはそう言って、ボールを拾い夜久さんと練習へ戻っていった。
普段は大きくて威圧感のあるリエーフがあんなふうに控えめでしおらしいのを見ると、なんだかリエーフがかわいく見えてくる。
「だらしない顔しちゃって」
いつの間に隣にいたのか、黒尾さんがニヤニヤしながら私の頬のゆるみを指摘した。やだな、そんなに変な顔してたかな。
「久原ちゃんも素直だよなー、やっくんに利用されちゃって」
「いいんです、みなさんの練習になるんなら」
今になってあんなことをしたのが恥ずかしく、つい先輩に向かってふてくされたような言い方をしてしまった。次は頼まれても断ろう。そう決意をし、黒尾さんにお疲れ様です、と挨拶して夕飯を食べに食堂へ向かった。
◇
シャワーで濡れた髪をドライヤーで乾かすと私は自分の布団に寝転がった。初めての合宿。他校のメンバー。いろいろな要素が重なって緊張していたからか、異常に眠い。歯も磨いたし、寝る準備はできた。暑いけれど風邪を引いてはいけないのでお腹にタオルケットをかけてうとうとしていると、梟谷のマネージャーの1人、雀田さんに話しかけられた。
「あずさちゃん、おつかれだね」
「はい、刺激の多い1日で・・・」
目を閉じたままでは失礼かと思ったが、もう目が開かないのでそのまま答える。
「リエーフくんの相手、大変だもんねー」
梟谷のもう1人のマネージャー、白福さんの声だ。「そうですねー」と半ば夢の中で答えると、白福さんが続けた。
「リエーフくんとキスする時どうするの~?」
眠気が突然どこかへ消え、私は飛び起きた。何の話だ。身長高いから大変じゃな~い?と呑気に言っている白福さんを見て私は口をぱくぱくさせてしまった。
「なっ、なんて!?どういう意味ですか!?」
「えー、だって付き合ってるんでしょ~?」
「付き合ってません!」
慌てて否定する。そんな風に見えるのか。黒尾さんにもよく言われたな。そんな私の発言に他のマネージャーさんたちも「えっ違うの!」と驚いた。
「え、何かすみません・・・」
みんなで揃って驚くものだから、悪くもないのに謝ってしまった。
「じゃれてるから、てっきりそうだと思ってた・・・」
「だよねぇ」
目を丸くする仁花ちゃんに、同調する雀田さん。違いますと改めて首を振っていると、生川高校のマネージャーである宮ノ下さんが言った。
「でも、リエーフくんはあずさちゃんのこと好きだよねー」
「そう見えるよね~」
白福さんが同意する。
そうだろうか。言われてみれば、今まで心当たりがないでもない。しかし恋愛経験が0なのでピンとこない。うぬぼれだったら困るし、と心の中で会議をしていると「明日も早いから寝よー」と女子部屋に入ってきた森然高校のマネージャー、大滝さんの言葉で私たちの部屋は消灯することとなり、この話は終わった。
宮ノ下さんの言葉が耳に残ってしまい目が冴えて眠れず、翌朝は寝坊するところだった。
なんていうことはなく疲れにより快眠で、翌朝はしっかり目覚めることができた。
2019.3.22