まあるく、やさしく
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「お隣さん、月島くんだね」
2学期最初のロングホームルームは席替えだった。くじ引きで新たな席に移ると、左隣にやってきたのは久原だった。久原は窓際の一番後ろ、月島はその右隣である。今日はきらきらとした晴天で、青空を背景にした久原が月島にはまぶしく見えた。
「どうも」
相変わらず、そっけない返事しかできない月島である。夏休みに街で遊んだ日、久原への気持ちを自覚した月島は久原にどう接したらいいのかわからないでいた。いつも通りの返事でも、そのそっけなさの中身は違うのだ。
「ラッキー!よろしくね!」
「...こちらこそ」
「数学教えてね」
「いくらで?」
「えー、お金とるのー?いじわるだね」
久原がけらけらと笑う。その時、教室がわっと沸いた。どうやらクラス内で付き合っているカップルの席が隣同士だったらしい。周りが冷やかす声が教室に充満する。
久原と月島はそのカップルからすぐに目線をそらした。ふたりにとってはどうでもいいことだった。
まだわーわーとうるさい中、久原が月島にだけ聞こえる声の大きさで言った。
「月島くんにね、内緒の話があるの。耳貸して?」
「...なに」
胸の前で両手の指を絡める久原。誰も自分たちの方を見ていないことを確認し月島が先を促すと、久原は立ち上がり月島の耳に顔を寄せた。
「私、月島くんのことかなり好き」
月島の耳がかっと熱くなる。しかし、この機を逃すわけにはいかない。月島は席に戻ろうとする久原の腕を引っ張って、今度は自分が久原の耳元でささやいた。
「僕も」
自分の耳が赤いであろうことは自覚している月島だが、顔にはそれが出ないのが唯一の救いだった。
久原は、意外なような、しかし前からそうであると知っていたかのような不思議な表情をしたあと、ひだまりのような笑顔を咲かせた。
月島は久原のこの笑顔が、一番好きなのだ。その顔を向けられると、つい月島の頬もゆるむ。
「月島くん、いろいろとよろしくね」
「...しょうがないね」
ひねくれた返事しかできない月島を見て、久原はふふっと笑った。それにつられて月島も、それより少し乾いた、しかし温かみのある声で笑った。
2019.6.14
2学期最初のロングホームルームは席替えだった。くじ引きで新たな席に移ると、左隣にやってきたのは久原だった。久原は窓際の一番後ろ、月島はその右隣である。今日はきらきらとした晴天で、青空を背景にした久原が月島にはまぶしく見えた。
「どうも」
相変わらず、そっけない返事しかできない月島である。夏休みに街で遊んだ日、久原への気持ちを自覚した月島は久原にどう接したらいいのかわからないでいた。いつも通りの返事でも、そのそっけなさの中身は違うのだ。
「ラッキー!よろしくね!」
「...こちらこそ」
「数学教えてね」
「いくらで?」
「えー、お金とるのー?いじわるだね」
久原がけらけらと笑う。その時、教室がわっと沸いた。どうやらクラス内で付き合っているカップルの席が隣同士だったらしい。周りが冷やかす声が教室に充満する。
久原と月島はそのカップルからすぐに目線をそらした。ふたりにとってはどうでもいいことだった。
まだわーわーとうるさい中、久原が月島にだけ聞こえる声の大きさで言った。
「月島くんにね、内緒の話があるの。耳貸して?」
「...なに」
胸の前で両手の指を絡める久原。誰も自分たちの方を見ていないことを確認し月島が先を促すと、久原は立ち上がり月島の耳に顔を寄せた。
「私、月島くんのことかなり好き」
月島の耳がかっと熱くなる。しかし、この機を逃すわけにはいかない。月島は席に戻ろうとする久原の腕を引っ張って、今度は自分が久原の耳元でささやいた。
「僕も」
自分の耳が赤いであろうことは自覚している月島だが、顔にはそれが出ないのが唯一の救いだった。
久原は、意外なような、しかし前からそうであると知っていたかのような不思議な表情をしたあと、ひだまりのような笑顔を咲かせた。
月島は久原のこの笑顔が、一番好きなのだ。その顔を向けられると、つい月島の頬もゆるむ。
「月島くん、いろいろとよろしくね」
「...しょうがないね」
ひねくれた返事しかできない月島を見て、久原はふふっと笑った。それにつられて月島も、それより少し乾いた、しかし温かみのある声で笑った。
2019.6.14
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