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毎日決まった時間に電車に乗る。学校や会社に行く人は大概そうだろう。私もその1人で、今日もいつもと同じ時間の電車に乗った。
いつもと違ったのは、同じクラスの青根くんがいることだった。たまたま車両が一緒になったのかな?でもバレー部は朝練あるって聞いたから、普段はこの時間ではないと思う。
ていうか青根くんの両隣の席が空いてるのはどうしてなんだろう。立ってる人こんなにいるのにみんな座らないのかなぁ。
車内を人波に流されて進んで行くと、青根くんの近くまでたどり着いた。
青根くんが言葉を発してるのを見たことがない。それに、なんていったって背が高いから、見下ろされると怖い。近寄りがたいという印象だった。特に用事もなかったので、これまで話したことはない。
青根くんと目が合った。向こうも私に気付いたみたいだ。思い切って挨拶してみる。
「おはよー、青根くん」
「・・・おはよう」
青根くんが目を見開いた。急に話しかけたから驚いたのかな。
青根くんが小さく低い声で、座るか、と言ってくれたのでお言葉に甘えて隣に座った。
「バレー部の朝練は?」
「寝坊した」
「あー、たまにはそういうことあるよね~」
「高校では初めてだ」
「えっ、すごいね。しっかり者」
なんだ、全然話せるじゃん。
思いのほか会話が弾んで(といっても質疑応答みたいだったけど)、学校の最寄り駅までの3駅はあっという間だった。
電車が止まると、立ち上がってドアの方へ向かった。ドアに近い席に座っていた私が先に歩き出した。この駅で降りる人は多くないので、人の流れに乗るわけにもいかず人を掻き分けるのが毎日大変だ。
毎日のことなのに、人の間を縫って電車を降りるのがあいかわらず苦手な私がモタモタしていると、ふいに腕を掴まれた。
びっくりして振り返ると青根くんだった。
青根くんは私の前に出ると、私の腕を引いてずんずん人混みを掻き分け、さっさと電車を降りてしまった。こんなにスムーズに電車を降りられるなんて、背が高いの羨ましいなー。
「ありがとう、青根くん」
お礼を言うと、青根くんはふるっと首をふった。そしてスッと顔を右に向けたかと思うと、再び私の腕を引いて自分に引き寄せた。
自然と青根くんの胸に飛び込む形になった。
驚いたのもつかの間、私の後ろをだだだっと勢いよく駆けていく音が聞こえた。青根くんの胸から少し顔を離して音の消えていったほうを見ると、改札に向かって走るおじさんらしき人の後ろ姿が見えた。
青根くん、ぶつからないように守ってくれたんだ。
「ありがとう」
青根くんを見上げてまたお礼を言う。
「いや・・・すまん」
青根くんが微かに頬を赤らめた。それを見て、体が密着していることを思い出した。
駅のホームだということも思い出し、私も恥ずかしくなって青根くんから飛び退いた。
「私もごめん・・・!」
お互いしばし固まるが、学校に向かわねばからない。当然方向は一緒だ。
「・・・学校、行こうか」
青根くんをちらっと見ると目が合った。しかしお互いにすごい勢いで顔を反らす。
青根くんが歩き出したので、私もその一歩後ろを着いて歩く。
どうしよう。さっきのいろいろを改めて頭の中で反芻すると、青根くんにドキドキしてしまう。昨日までは、何とも思ってなかったのに。
お互い耳を赤くして、無言のまま学校まで歩いたのだった。
2019.3.6
title:Bacca
いつもと違ったのは、同じクラスの青根くんがいることだった。たまたま車両が一緒になったのかな?でもバレー部は朝練あるって聞いたから、普段はこの時間ではないと思う。
ていうか青根くんの両隣の席が空いてるのはどうしてなんだろう。立ってる人こんなにいるのにみんな座らないのかなぁ。
車内を人波に流されて進んで行くと、青根くんの近くまでたどり着いた。
青根くんが言葉を発してるのを見たことがない。それに、なんていったって背が高いから、見下ろされると怖い。近寄りがたいという印象だった。特に用事もなかったので、これまで話したことはない。
青根くんと目が合った。向こうも私に気付いたみたいだ。思い切って挨拶してみる。
「おはよー、青根くん」
「・・・おはよう」
青根くんが目を見開いた。急に話しかけたから驚いたのかな。
青根くんが小さく低い声で、座るか、と言ってくれたのでお言葉に甘えて隣に座った。
「バレー部の朝練は?」
「寝坊した」
「あー、たまにはそういうことあるよね~」
「高校では初めてだ」
「えっ、すごいね。しっかり者」
なんだ、全然話せるじゃん。
思いのほか会話が弾んで(といっても質疑応答みたいだったけど)、学校の最寄り駅までの3駅はあっという間だった。
電車が止まると、立ち上がってドアの方へ向かった。ドアに近い席に座っていた私が先に歩き出した。この駅で降りる人は多くないので、人の流れに乗るわけにもいかず人を掻き分けるのが毎日大変だ。
毎日のことなのに、人の間を縫って電車を降りるのがあいかわらず苦手な私がモタモタしていると、ふいに腕を掴まれた。
びっくりして振り返ると青根くんだった。
青根くんは私の前に出ると、私の腕を引いてずんずん人混みを掻き分け、さっさと電車を降りてしまった。こんなにスムーズに電車を降りられるなんて、背が高いの羨ましいなー。
「ありがとう、青根くん」
お礼を言うと、青根くんはふるっと首をふった。そしてスッと顔を右に向けたかと思うと、再び私の腕を引いて自分に引き寄せた。
自然と青根くんの胸に飛び込む形になった。
驚いたのもつかの間、私の後ろをだだだっと勢いよく駆けていく音が聞こえた。青根くんの胸から少し顔を離して音の消えていったほうを見ると、改札に向かって走るおじさんらしき人の後ろ姿が見えた。
青根くん、ぶつからないように守ってくれたんだ。
「ありがとう」
青根くんを見上げてまたお礼を言う。
「いや・・・すまん」
青根くんが微かに頬を赤らめた。それを見て、体が密着していることを思い出した。
駅のホームだということも思い出し、私も恥ずかしくなって青根くんから飛び退いた。
「私もごめん・・・!」
お互いしばし固まるが、学校に向かわねばからない。当然方向は一緒だ。
「・・・学校、行こうか」
青根くんをちらっと見ると目が合った。しかしお互いにすごい勢いで顔を反らす。
青根くんが歩き出したので、私もその一歩後ろを着いて歩く。
どうしよう。さっきのいろいろを改めて頭の中で反芻すると、青根くんにドキドキしてしまう。昨日までは、何とも思ってなかったのに。
お互い耳を赤くして、無言のまま学校まで歩いたのだった。
2019.3.6
title:Bacca
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